ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット   作:あらびきバナナ

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月夜にいざなわれて

4月2日、今日はサチに呼ばれてるから少し早めに起きた。外はまだ日が出始めたばかりの朝焼けって感じかな

 

それにしてもまさか早起きはこっちに来てもしなきゃいけないなんて…いや、というかもはや早起きじゃないよねこれ、ただ普通に起きただけじゃん

 

あー、眠い…ここ数日ずっと外で活動してるから疲労が…まぁでも夏休みの五徹目の格ゲー大会とかに比べたらまだ大したことないか。うん

 

と言ってもまだ時間があるな…よし、何個かアクセサリーでも作ろっと

 

コンコンコン ミトチャ-ン!オキテル-!?

 

はぁ…絶対あの子よね?無視よ無視、朝からあの子の相手しなきゃいけないとか

 

ゴンゴン! ミ-ト-チャ-ン!

 

ガチャンッ!

 

「あー!もううるさいのよ!」

 

「おっ!やっと出てきた!おはようミトちゃん!」

 

「貴方ねぇ…」

 

何時だと思ってるのよ…というか朝から元気すぎるでしょレーテ。どんな身体してるの…?

 

「はぁ…とりあえず他の人に迷惑だから入りなさい」

 

「おっけー。わー、この宿広いね!」

 

まぁ生産工房付きの部屋だし普通の宿に比べたら広い方かもね…よし、じゃあ今度こそアクセサリー作りやりましょう。素材は…AGI系の金属と特殊効果付与の鉱石にしよう

 

まずは金属を炉に入れて溶かさないと…

 

「ふーん…そうやって作るんだ」

 

「そうよ、というかなんで来たのよ」

 

「ミトちゃんに会いたかったから!」

 

「…貴女に聞いた私が馬鹿だったわ」

 

「なんで!?」

 

またギャーギャー騒いでるけどとりあえず無視しよう…っとそろそろ溶けた頃ね。というかゲームなのにこの暑さまで再現してるのはなんなの?いくらなんでもリアル志向過ぎるでしょ

 

今回は指輪にしよう、ゆっくり…ゆっくり流し込んで……よし、あとは冷やして鉱石と合わせるだけね

 

即冷却のポーションは…あ、切らしてたんだった。どうしよう、このままだとあと8時間はかかるし…でも今から買いに行くのも面倒だし…

 

「?どうしたの?続きやらないの?」

 

「やりたくても出来ないのよ、冷却用のアイテム切らしちゃったのよ」

 

「そっか…そしたらどうするの?」

 

「待つしかないのよ…8時間」

 

「長いねぇ、じゃあ狩りで行く?どっちにしろその時間じゃサチちゃんにあった後になるだろうし」

 

「そうね…じゃあ行きましょうか、準備するから待ってて」

 

「おっけー!」

 

服を部屋着から戦闘用に変えて…あ、そろそろ脚の防具の耐久が限界ね。スペック的にはまだ上でも使えるだろうしそのうち治しておかないと

 

鎌はせっかくだし昨日リズから買った『ブラックドレイン』、使ってみようかな

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

「了解です!師匠!」

 

「師匠になった覚えはないんだけど…」

 

まぁこの娘の発言に一貫性を期待するのは無駄だから気にしないけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミトちゃん、スイッチ!!」

 

「はぁぁ!!…ふぅ」

 

「ナイスミトちゃん!時間も時間だし、1回休もうか」

 

「そうね、確かに疲れたし」

 

いくらここ数日戦い三昧だったとはいえやっぱり多少のブランクがあるから前より動きも鈍ってるし身体も重いし

 

…やっぱ生産職に転向したにしてもある程度戦闘もこなしておいた方がいいのかも

 

「…ミトちゃんってさ、一応生産職メインなんだよね?」

 

「そうだけど、それが?」

 

「いや、宿で物作ってる時より戦ってる方が生き生きしてるなぁって思ったから」

 

「…色々あるのよ」

 

「話してくれないの?」

 

「まぁ知り合って数日の貴女には話す気にはなれないわね」

 

「そっか、じゃあ話して貰えるように頑張るぞー!!」

 

私からしたら、貴女のその底抜けの元気の源の方が気になるんだけどね。というか…

 

「貴女こそ、なんでこんなに私に構う訳?あなたこそその戦闘力なら私なんかいなくても前線でやっていけるでしょ」

 

「うーんそうなのかもしれないけどさ、せっかくなら可愛い子と一緒にいたいってのはあるよね」

 

「か、かわっ!?いきなり何を言い出すのよ!!」

 

「強いて言えば事実かな」

 

「馬鹿なこと言わないで!私が可愛いなんて有り得ないから…」

 

「いやいや可愛いって、少なくとも私が見てきた女の子の中では1番だよ!」

 

いやいや、そんなことあるわけないでしょ。少なくとも明日奈とかアスナとかアスナとかいるし。それこそレーテも私なんかよりよっぽど可愛いじゃない

 

なんて反論してもきっとこの娘は納得しないだろうし…テキトーに切り上げるか

 

「とにかくミトちゃんは可愛い!自信もって!」

 

「あーもうそれでいいから、そろそろ狩りに戻るわよ」

 

「あ!絶対テキトーに流したでしょ!ねぇ、ちょっと!」

 

「はいはい、行くわよ」

 

「もー!!」

 

レーテは確かに喧しいし、鬱陶しいけど…まぁ別にいいか。居心地が悪い訳じゃないし。何より私も楽しいしね

 

でも距離感が近いのはどうにかして欲しい、気が気じゃないから。バーチャルなのになんでいい匂いがするのよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間、狩りをある程度やってたらいい感じにサチとの約束の時間になったから街に戻ってきた

 

前線よりは少し下の階層だからかな、辺りには中層で戦ってるであろうプレイヤー達がちらほら

 

最前線ともなると基本、日のあるうちはみんなレベル上げに素材集めに走り回ってるから街に人はほとんどいないのよね。その点は中層や1層の方が活気があるように思う

 

私としては人が少ない方ないいんだけど…

 

「やっぱこの辺は人多いね」

 

「そう?この辺だとこんなもんでしょ」

 

「まぁ確かに、前線ほど逼迫してないだろうしね」

 

「そういうこと。さ、無駄話してないで早く集合場所に行くわよ」

 

「おっけー!」

 

確か集合場所は街の南の洋食屋だったわね、ぼちぼち行きましょ。アルゴ曰くそのお店はまぁまぁ美味しいらしいけど…どうなのかな

 

最近は私もある程度余裕が出てきたから色んなところでご飯を食べるようになってきたけど、未だにハマるご飯屋さんが見つからないのも事実

 

もし値段に合うなら行きつけにしたいなぁ

 

「っと、ここね」

 

「そーだね、先入っちゃう?」

 

「とりあえず待ちましょ、集合時間まではまだ時間もあるし」

 

「それもそっか」

 

時間もあるし少しだけアイテムの整理しとこう

 

鉱石系と生物系とレアドロ装備にとりあえず分けて、そこからいるものと要らないものを分別して…そろそろ要らないものが溜まってきたし、こんどエギルさんのところに持っていこう

 

…なんか隣から視線を感じる

 

「…何か用?」

 

「いやー、ミトちゃんのまつ毛長いなぁって思って」

 

「そうなの?人と比べたことないから分からないんだけど」

 

「私が知ってる可愛い女の子のなかじゃ随一だよ」

 

「はいはい、そういうのいいから」

 

「むー、事実なのに」

 

さっきもそうだけど、この娘はなんでこうも人を褒めるのに躊躇いがないのよ。普通そういうこと言うのって恥ずかしいものでしょ

 

…まぁこの娘にそういう共通認識は通用しないのは今に始まったことじゃないけど

 

「あ、ミトさんレーテさん…すみません待たせちゃって」

 

「やぁやぁサチちゃん」

 

「あらサチ、こんにちわ…別にいいのよ。さ、お店に入りましょう」

 

「イエーイ、お昼ー!」

 

お店の中は…うん、普通のファミレスね。壁に飾ってある絵からしてパスタが美味しそうなお店ね、

まぁあの店行っても私ピザしか食べたことないんだけど、あとドリア

 

「いらっしゃいませ、あちらの席にどうぞ」

 

NPCが出てきて空いてる席を指してきた、それでそこにカーソルが…あー、そういえばこんなんだったわねこの世界の飲食店。最近来てなかったから忘れてた

 

「ねぇミトちゃんここのお店美味しいの?」

 

「さぁ?アルゴ曰く美味しいらしいけど…」

 

「ここの店は結構美味しいですよ、よくギルドのメンバーと一緒に来ます」

 

「そうなの?なら期待出来るかもね」

 

席に着くと目の前にメニューウィンドウが出て来た…やっぱりメインはイタリアン系よね。もしかして例のレストランと提携組んでたのこのゲーム

 

まぁ食事は二の次だし、テキトーに注文してさっさと本題に入ろうかな

 

「それで、相談ってなんなの?」

 

「あ、えっとですね…この前ギルドでとある話が上がったんですよ。うちのギルド武器の構成が槍が私含めて2人、片手剣が1人、メイサーが1人、棍使いが1人なんですよ」

 

「なんて言うか…バランス悪いね、サチちゃんのギルド」

 

「そうなんですよ、それで私がアタッカー系の武器に転向するみたいな話になってて…」

 

「なるほど…」

 

まぁゲームのギルドだとよくある話ね、バランスが悪いからひとりが持ち武器を変えることになるってやつ。普通のゲームならある程度レベリングしてレアドロの武器を装備すれば戦えるようになるけど…

 

ここはSAO、デスゲームだから。その選択も下手したら命を刈り取ることになる…

 

「…貴方のギルドってほかのメンバー男子よね?なんでわざわざ貴女が?」

 

「私の方がササマルより熟練度が低いからですかね、多分」

 

「なるほどね…」

 

まぁ普通の考え方ね、どちらかを変えるなら熟練度低い方を選ぶのは定石よね

 

「つまり相談っていうのはその武器をどれにするか…って感じ?」

 

「はい、その話の時におふたりともアタッカーだったなぁって思い出しまして。なにかおすすめの武器ありますかね?」

 

おすすめって…こういうアドバイス苦手かも。もしその結果何があっても責任を取れる気がしないし、もうこれ以上負い目を感じたくないし

 

まぁ隣のレーテはやる気満々だけど、まったく…

 

「アタッカーだと片手剣と両手剣…あとは短剣とか?ミトちゃんの鎌ってアタッカーになるのかな?」

 

「まぁポジションとしては槍と両手剣の間だからね、アタッカーでもディフェンダーでもこなせるとは思うわよ」

 

自分のプレイスタイル的には完全にアタッカーだけど…まぁソロとパーティーじゃ勝手が違うからなんとも言えないけど

 

自分に合った武器を選ぶのが1番ではある、だけどそれが出来ないから相談に来てるわけで…困ったものね

 

「ちなみにサチ、今のあなたのステータスってどんな感じなの?」

 

「えっとAGIとSTRがだいたい7対3ぐらいです」

 

「なら両手剣はなしね、片手剣も…まぁものによるかな。あとは刀と短剣と…あと鉤爪だったかな、アルゴの使ってるそんなのもあるわよ」

 

「鉤爪…そんなのもあるんですね。でもテクニカルな武器はちょっと…」

 

「なら片手剣か刀かしら、元々中衛だった人がいきなり超インファイトの短剣は難しいだろうし」

 

「なるほど…」

 

それにしても武器の悩みかぁ…ベータの最初1週間はそれはそれはすごい悩んだけど、それ以降は大鎌一筋だったし…

 

「お待たせしました、ご注文の品です」

 

「わぁい、やっと来たー!いただきまーす!」

 

「ふふっ、レーテさんは元気ですね。いただきます」

 

「そう喧しいだけよ?…いただきます」

 

隣でやいやいレーテが反論してくるけどとりあえず無視ね。さてと、パスタのお味は…

 

うん、悪くないわね。トマトのグルタミン酸とベーコンの旨みが凝縮されて…麺のアルデンテも申し分無し…これは止まらないわね。これならお金払って食べる価値あるかも

 

「モグ…それで武器の話だけど」

 

「はい」

 

「とりあえず転向の話はもう少し話し合ってからにした方がいいわね、この世界だとその選択は命をわかつわけだし」

 

「ですよね」

 

「まぁそれでも転向することになったらまた声をかけて、知り合いに腕のいい武器鍛冶屋がいるから。紹介してあげる」

 

「ありがとうございます…何から何まで」

 

「乗りかかった船だもの、最後まで面倒見るわよ」

 

「は、はいぃ…」

 

なんかサチが赤くなったんだけど…え?なに?風邪?

 

「…ミトちゃんってそういうことあるよね」

 

「え?何の話?」

 

「その無自覚なところ含めて」

 

「えっ、ほんとに何?どういうこと?ねぇサチもなんとか言ってよ」

 

「ちょっと今は無理です…かっこよすぎて」

 

「どういうこと?ねぇ?本当に訳がわかんないんだけど」

 

レーテはむくれてるし、サチは顔を赤くしてるし…なんなのよこのカオスな状況は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました、とりあえずもう1回みんなと話してみようと思います」

 

「えぇ、また」

 

「まったねー!サチちゃーん!」

 

「はいっ、また」

 

お昼ご飯も終わってこれからお互いやることがあるということで今日のところは解散…ってことになったんだけど

 

「なんで着いてくるのよ貴女は」

 

「えぇー、だってミトちゃんがアクセサリー作るところ見たいし」

 

「覚えてたのね…まったく」

 

「当たり前だよ!ミトちゃんのことならなんでも覚えてるよ!」

 

「よくもまぁそんなことを恥ずかしげもなく言えるわね、貴女」

 

「ミトちゃんにそれは言われたくないなぁー」

 

「何の話よ」

 

「なんでもないよーだ」

 

「なんなのよ…ほんと。邪魔しないでよ」

 

「分かってるって〜、ふんふーん♪」

 

いや、考えるのはやめよう。無駄な労力になるだけだもの…宿戻ったら朝やってた作業の続きして…あ、その前に冷却剤も買っていかなきゃ

 

今月のバザーも終わったことだし、誰かから呼び出されない限り今月はゆっくり出来そうね。しばらくは熟練度上げに専念しようかな

 

あと少しで防具作成スキルもカンストだし、頑張ろう

 

ピコン ピコン

 

あら、アルゴから連絡?何かしら

 

『昨日のバザーおつかれー、ミーちゃん!来月もよろしく頼むゾー

 

 

話は変わるが、例のやつらに関する話をひとつだけ仕入れたけど買うカイ?』

 

さすがアルゴ、少しとはいえ確実に情報を仕入れられるのは関心ね。『もちろん買うわ』っと

 

これでそっちの方も少しは進むかな、まぁこっちのことはいつ終わるかなんて分からないけど。もしかしたら終わらないかもしれない、でもやらないと

 

あの娘を守るためなら私は…

 

「ねぇ、誰からの連絡ー?」

 

「っ!?…別に、誰だっていいでしょ。少なくとも貴女には関係ないわ」

 

「むー!なんでそんな事言うのさ、もしかして彼氏とか?」

 

「…はぁ」

 

「なんでため息!?」

 

隣でやかましい彼女を放っておいて、私はゆっくりと宿への帰路を歩む。ちょうど日が落ちかけている頃だった

 

 

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