ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット   作:あらびきバナナ

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月夜の明ける刻

27層のダンジョンと言えば、トラップが多いことで有名…らしい。私はほとんどきたことないけどアルゴがそんなことを言ってた気がする

 

実際攻略の時もそのトラップのせいで何度かピンチになったとか、幸い犠牲者はいなかったらしいけど前線で戦ってる人がひっかかるんだから私たちがいくら警戒しても損わないはず

 

私は鍵開けスキル持ってないけど、ダッカーが多少なりとも持ってるらしいから鍵付き宝箱は空けられそうだけど…問題はトラップよね。まぁでもその辺はキリトが周知してると思うし大丈夫よね

 

「ふぅー、勝った勝った!」

 

「さっすがキリトだね!」

 

「あ、あぁありがとう」

 

というかダンジョン攻略ってこんな緩くていいんだっけ?彼らのレベル的にちょっと上めの層のはずなんだけど…

 

「なぁ…ちょっといいか?」

 

「なによ」

 

「その、アスナのことなんだけど」

 

「ふぅん、彼女が出来たのに前の女にまで気を使うんだ」

 

「彼女?……っ!?いやサチとは別にそういう関係じゃ」

 

「誰もサチとは言ってないんだけど……そうね、元気よ。1週間に1回くらいあの娘から会いに来るけど、ギルドで忙しいって言ってたわ」

 

「そうか…良かった」

 

何が良かったよ、あなたとなにかあったせいで一時期あの子落ち込んでたんだけど?…というかもう関わってないあの娘の何が知りたかったんだ?この男は…まぁ私には関係ないか

 

「ミトさん、少しだけ前線変わって貰っていいですか?ちょっと疲れちゃって…」

 

「えぇ、いいわよ。私にも何か貢献させて頂戴」

 

「いいんですか ?助かります!」

 

さてと、それじゃあ少しだけ頑張りますか。早速敵も出てきたことだし

 

「ほら、行くわよキリト」

 

「あぁ先行は任せる」

 

「それはどうも…はぁっ!!」

 

踏み切ると同時に鎖鎌を分離、1度敵の攻撃を誘発…今っ!!

 

「よっと、もういっちょっっ!!」

 

攻撃を避けたタイミングで『チェーンザヨルムンガンド』を発動して腕を叩き切る

 

「キリト!!」

 

「おう!!」

 

あとはキリトに任せれてば倒せるでしょ、気に食わないけど実力は確かだし

 

パリィィィン

 

ほらもう倒せた、楽勝ね

 

「ふぅ、お疲れ」

 

「…なによその手」

 

「なにって、ハイタッチだけど…あ、もしかして嫌?」

 

そりゃ嫌よ、誰が貴方と…まぁでも流れ的にはやっておいた方が良さそうよね

 

「…はぁ、なら私の気が変わらないうちにさっさとしなさい」

 

「っ!!あぁ、それじゃあ」

 

パァン!

 

いや強っ…片手剣の癖にどれだけSTRにポイント振ってるのよこいつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も特に問題は起きることなくダンジョンを進む私たち、私とキリト以外は何回か回復してるからポーチ内の回復の数が心配だけど。それを除けば特に滞りもなく進んでる

 

やっぱり平均レベルもあってか普段のレベリングや金策よりも効率は悪いけど、疲れたら誰かと前線を交代したり休憩出来たりするのはこのゲームにおけるパーティープレイの利点かもね

 

「なぁみんなここ怪しくないか?」

 

ダッカーがそう言ったのはダンジョンの壁だった、鍵開けスキルを持ってない私には特に何の変哲もない壁に見えるんだけど…多分持ってる人にはちょっと特殊な見え方がするのかな?

 

「えっと…多分ここをこうすれば、よっっと」

 

ダッカーが壁の一部を押した瞬間、ダークソウルの幻影壁よろしくそこにあったはずの壁が消えてなくなった

 

そして新しく現れた部屋の真ん中には宝箱が

 

「うわー!宝箱だ、ラッキー!」

 

「まさかこの層にまだ残ってるなんてな!」

 

いや、いくらなんでも怪しすぎる。この層は既に前線プレイヤーが物色し尽くしてるはずだ、それこそ大手ギルドには鍵あけ専門のプレイヤーがいるくらいだ、そんな人達がこれを見落とすかな…?

 

「ねぇみんな、もしかしたら罠かもしれないしさ。開ける開けないはともかく一旦安全地帯に戻ってポーションとか準備してからの方が」

 

「いやいやミトさん。そんなことしてたら他のプレイヤーに取られちゃいますよ」

 

「そうそう、それに今の俺らなら多少のトラップ…どうにかなるで、しょっっと!!」

 

「あ、ちょっと!」

 

「待て!!」

 

Beeeee!!Beeeee!!

 

テツヲが宝箱を開けた瞬間、けたたましい音が…っ!!嫌な予感がするしとりあえず私も部屋の中に!!

 

「えっなになに!?どうなってるの!!」

 

「分からねぇ、俺もしかしてやっちゃった?」

 

「みんな落ち着いて!とりあえず全員背中合わせで様子見!転移結晶を使って!」

 

いくらトラップと言えど結晶を使えば脱出できるはず…!!

 

「ダメだ!使えない!」

 

「えっ嘘!?キリト!」

 

「ダメだ…こっちも使えない…っ!!」

 

なんでよ…こんなエリアがあるなんて聞いてないわよ……いや、落ち着きなさいミト。ここで焦ったらあの時の二の舞、今はどうにかして脱出することを考えないと…

 

って敵が湧き始めた!?こんな狭い部屋でどうしろってのよ…しかもレベルが高い!私とキリトはともかく他のメンバーじゃ一撃が即死圏内

 

くっ、一体どうしたら…そうよこういう時は落ち着いて各個撃破するしか…

 

「みんなとにかく落ち着いて、各自敵を各個撃破して!!少しずつでもいいから確実にね!」

 

「お、おう!」

 

「わかりました!」

 

「キリトも…真面目にやりなさいよ」

 

「当たり前だろ…絶対に助ける…っ!」

 

覚悟は決まってるようね…なら私は私の仕事をするまで…

 

敵の脚を切って動きを制限し易々と撃破、これを何度も繰り返せばおのずと勝てるけど。時間がかかればかかるほど集中力は切れる

 

すると自然と回避をわすれ被弾は増える、回復する時間も増えるから攻撃出来る時間も減り撃破速度も遅くなる、元々疲れてたこともあるからみんなも徐々にやる気が落ちてきた

 

「なぁ…俺ら帰れるのか…?」

 

「何いってんだよ…帰らなきゃ、ダメだろ」

 

「そうだよ…帰らなきゃ」

 

「大丈夫だっ!みんなは俺が守るっ!」

 

無責任な発言…まるで昔の私ね

 

「はあっ!!ふっ!やあぁっ!!……っ!?ダッカー危ない!!」

 

「えっ…」

 

ザシュッッ!

 

一瞬の隙、攻撃を外したタイミングで別の敵からの斬撃がヒット。ダッカーの身体を捉えた、その攻撃でギリギリ残ってた体力がついにゼロに

 

「ッ!?ダッカー!!?ぐぁぁぁぁ!!」

 

「テツオ!!がはっ!?!?」

 

「嘘!?みんな!!」

 

ダッカーがやられたことに動揺して立て続けにテツオもササマルも体力が無くなってしまった。サチも取り乱したがキリトが近くにいたおかげでかろうじて攻撃は受けずに済んだ

 

辛い…私だって辛い、けど今は生き残らないと…今この状況で出来る最善の選択肢は…

 

「…キリト、私が逃げ道を作るからサチを連れて逃げなさい」

 

「なっ!?そしたらミトはどうすんだよ!!」

 

「そうですよ!ミトさん残して逃げれません!!」

 

「私一人になれば範囲ソードスキルを使える、部屋の広さ的にも一気に掃討できるから…信用して」

 

「…分かった、ならそれに乗っかるよ」

 

「キリトっ!?」

 

「サチ…大丈夫だから」

 

確率は五分…やる価値はある。可能性があるならそれにかけるしかない

 

「…はっ!!今よ!行って!!」

 

「あぁ!!」

 

「ミトさん…ごめんなさい!!」

 

いいのよサチ…少しでも誰かが幸せになるなら私はなんだってするわ。アスナのためになることが出来なかったのが悔しいけど…それでも悪くわないかもね

 

それにあの二人が逃げてくれれば私にもやりようが…

 

「!?きゃっ!!」

 

「っ!!サチ!!」

 

っ!?何が起きたの!!攻撃を受けるのに精一杯で後ろが見れない…!!あぁもう!!

 

「はぁぁっ!!おらァァァ!!」

 

一旦防御を捨て一気に『サリエル・フェラー』を叩き込む!!これで一気に敵を倒せる!

 

今のうちに後ろを確認…

 

あれ?サチは…?

 

「ねぇ、キリト…サチは?」

 

返事はない、反応もない。…くそっ!!どうしていつもこうなのよ!!でもここで腐ってる場合じゃない、私たちだけでも逃げないと!!

 

「キリト!!」

 

バチンッ

 

「…あ、ミト?」

 

「今は逃げることが最優先!集中して!」

 

「あっあぁ…分かった」

 

ビンタが効いたのか多少活力を取り戻したキリト、良かった。戦意喪失した人を連れて逃げれる自信は今はないからね

 

「はあっ!!おらァ!!くらえぇぇ!!!」

 

「オラァァ!!ああぁぁぁあぁーー!!??」

 

それから数分、全力の戦闘の末。私たちは命かながらダンジョンから脱出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…私達がもっと注意してたら…」

 

「……」

 

「……」

 

ダンジョンから戻ってすぐ、私達とは別行動を取ってたケイタに全てを話した。ダンジョンでトラップにかかりみんなが死んだこと…キリトはそれに加え自らがレベルを偽っていたことを正直にありのまま伝えた…

 

「そっか…でもミトさんは全力で助けようとしてくれたんだろ……それより俺はそいつに怒ってる…っ!!」

 

そういうとケイタはキリトにゆっくり近付いて胸ぐらを掴んだ

 

「お前がっ!!最初っから、ちゃんとレベルを教えてればアイツらも調子に乗ってそんな危険なことしなかったはずだ!!」

 

「け、ケイタ…落ち着いて、それにそのことなら私にも責任が…」

 

「ミトさんは黙っててください!!おい、どうなんだよキリト!!」

 

「っ…すまん」

 

「おまえっ…!!」

 

ケイタのキリトを見る目はどんどん険しくなる、それと同時に胸ぐらを掴んでる拳にも力が入ってるのが分かる

 

「…でももういい。もう何を考えても意味なんてないんだからさ…」

 

「ちょ、ケイタ…何する気?」

 

「大丈夫ですよミトさん、誰にも迷惑はかけないんで…」

 

そう言いながらキリトを離してゆっくりと後ろに後ずさる…っ!!まさか!?

 

「ケイタそれだけはやめて!!考え直して!!」

 

「そうだケイタ!!何度だって謝る!!だからそこから離れるんだ!!」

 

「うるさい!!ビーター!!お前のせいで俺の仲間が死んだんだよ!!」

 

「っケイタ…」

 

「そもそもお前が俺らに関わったのが間違いだったんだ…それを、忘れるなよ…っ」

 

「ケイタッ!!!?」

 

「ケイタダメ!!」

 

そう言い残してケイタはアインクラッドから飛び降りた…つまり、自殺

 

また…私は誰も救えなかったのね…どうして私は…誰にも手を伸ばせないの

 

その後、私とキリトは茫然自失。1時間近くその近くから動くことはなかった…最後になにか会話を交わした気もするがほぼほぼ覚えてない

 

気付けば私は宿に戻ってた

 

ガタンッ

 

「…ごめん、なさい……ごめんなさい」

 

溢れ出る罪悪感、何も出来なかった虚無感…そこから訪れる自己嫌悪。部屋に入った瞬間それらが一気に押し寄せて膝から崩れ落ちた

 

アスナと離別してから誰かを助けるためにあの手この手を行使して来たのにいざ目の前のピンチに陥ってる場面になったら誰一人救えず…挙句の果てには目の前で起きた自殺も防げず…

 

ほんとにバカみたい…私ってなんのために生きてるの…私ってなんなんだろう…

 

コンコン ミトチャンイルー?

 

レーテ…?ごめんなさい…今は貴方を相手する元気もないの…1ヶ月ぐらい放っておいて…

 

ガチャッ

 

「そういえば鍵もらってたんだったー…って、ミトちゃん?」

 

「っレーテ…!?だめ、見ないで…っ」

 

「…そっか」

 

「っ!!ちょ、何を…」

 

「何があったかは聞かない、でもミトちゃんがそんな顔してるってことはきっと辛いことがあったんだよね。だから今は好きなだけなきなよ…」

 

「くっ、泣いてなんか…うぅ」

 

抱きしめられた、こんな感覚いつぶりだろう…人の温度に優しさに包まれるのは…あーもうだからなんでこんなにいい匂いがするのよこの娘は…!?

 

「よしよし…好きなだけ泣いちゃお?そしたらまたゆっくり休んで…そしたらきっと少しは楽になれるかもよ」

 

「うっ、だからぁ…泣いてないってばぁ…ひぐっ」

 

「ふふっそうだね…ミトちゃんは泣いてない」

 

「もうっ、なんなのよ貴女は…っ」

 

「ミトちゃんの友だちだよ…何があってもね」

 

「ぅ…あ……ああぁぁぁああぁ!!レーテ!!」

 

「はいはい、私はここにいるからね」

 

今は少しだけ…彼女の優しさに甘えよう…その方がきっと、幸せになれるから





個人的に書きたかった話をようやく1つ消化出来た

連続投稿もあと1日、明日はどうしようか
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