ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット   作:あらびきバナナ

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ダメな私でごめんなさい

小学生のあの日私は求めることをやめた

 

ホルモンの森の件以降私は期待することをやめた

 

そしてあの日…私は希望を持つことをやめた…

 

そうやめたはずだ。アスナやユナやレーテ、アルゴにはもう頼らないと決めた…そのはずなのに何故私は

 

「さっ、ミトちゃん!とりあえずご飯でも食べようか!」

 

レーテと同じ部屋にいるんだろう…たしか私はあの鴉の女と話しててそれで…そうたしか気絶したはず。それなのにどうして私はこの娘と…

 

「ん?ミトちゃんもしかして食欲ない?」

 

「いや…そうじゃなくて…」

 

「あ!ここにいる理由?それならミトちゃんが外で気絶してたからここに連れてきたの」

 

「そう…一応お礼を言っておく。それじゃあ私はこれで…」

 

とりあえず自分の宿に帰ろう…

 

「ちょちょちょ!もうちょっとお話しようよー」

 

「嫌よ、それじゃあ。もう放っておいて」

 

もう失うのも、苦しむのも懲り懲りなのよ…

 

「駄目」

 

「えっ…」

 

「今回ばかりは何がなんでも引かないよ。ミトちゃんが何を考えてるかは知らないけど、絶対に駄目」

 

はぁ…相変わらずのわがままね、もう無視してでも帰るしか

 

ガシッ

 

「っ!?触らないで!」

 

「えっ…ごめん」

 

「あっ、私もごめんなさい…でももうお願いだから放っておいて。1人になりたいの」

 

「いやだよ…ミトちゃんは私を避けたいのかもしれないけどさ、それと同じくらい。いや、それ以上に私はミトちゃんと一緒に居たいし、寄り添いたいと思ってるの!」

 

「なに、いって…」

 

一緒にいたい?寄り添いたい…?なんで?どうして?なんで私なんかに、どうして私に…分からないことが多すぎる。この娘はいったい何を考えてるの…?

 

この娘はいったい、私に何を望んでるの?

 

「…ごめん、取り乱して。とりあえずさ…せめてご飯だけでも食べて欲しいなって、頑張って作ったし」

 

あーそうだった…いっつもこの娘はそうだった。何を考えてるか分からない、何がしたいんだか解らない…そんな娘だったわね

 

ステータス的にもこの娘を振りほどくのは無理、接触されてる以上結晶の範囲内…はぁ、ほんと面倒くさい

 

「…分かったから、お願いだから離して」

 

「本当?嘘ついたら町中にミトちゃんのあることないことを話すからね?」

 

「逃げないからそれだけはやめて!…はぁ、それならさっさと食べましょう」

 

「分かった、じゃあ食べようか」

 

やっと離してくれた…逃げてもいいけど、あまりにもデメリットが大きすぎる。この娘の事だ、何を話すか分かったもんじゃない

 

ご飯、ご飯ね…ちゃんと食べるのはそれこそあの日の前日以来ね。また食べることになるとは思わなかったけど

 

「いただきます…」

 

「うん、どうぞ!」

 

お米に味噌汁、焼き魚に付け合せの野菜…ザ、日本の朝ごはんね。もっともこんなの現実でも食べたことないけど、ドラマとかでしか見たことないけど

 

とりあえず焼き魚から

 

「あむ…相変わらず、美味しいわね」

 

「そうでしょ、あれから数日しか経ってないけど熟練度上がったんだよね」

 

「ふーん」

 

数値で味覚にすら変化を与えるなんて…まぁ現実の味覚もやろうと思えば科学物質でいくらでも再現出来るらしいしそんなものなのかな

 

でもそんなこと関係ないくらい。ほんとに、美味しい

 

「なんで貴女は料理スキルを?」

 

「色々理由はあるけど…やっぱりご飯が美味しいと何事もやる気が出るでしょ?そのためかな」

 

「そう…」

 

やる気…やる気か。確かに大事ね、こんな荒んだ世界なんだからせめてご飯ぐらい…って思う人はいるのかもしれないわね

 

私にはあんまり関係ないかもしれないけど

 

「…それでさ、何があったの?」

 

「っ……聞かないで欲しいんだけど」

 

「それでもいいけど…私はさ、ミトちゃんの力になりたいの。前にも言わなかったっけ?」

 

「言ったないと思うけど…」

 

「そう?じゃあ今言った!」

 

ほんとテキトーね…なんなのよ

 

「そもそもそれを言ったところで貴女にどうこうできる問題じゃないと思うんだけど」

 

「そんなの言ってみないと分からないじゃん」

 

「…え?」

 

「だから、まだ何も聞いてないのにそんなこと分かるわけないじゃん?話してみないと」

 

確かにそうかもしれない…けど私はもうそういうのにすら期待するのには疲れた、考えたくもない

 

でも…もしかしたら…なんて考えてしまっている私がいるのもまた事実。ほんと自分が嫌になる…諦めてしまえば楽なのに、逃げてしまえば終わるのに…そう決めたのにまた手を伸ばそうとしている

 

そんな自分が、本当に嫌いだ…

 

「はぁぁ……分かった、話す。長くなるけどいい?」

 

「うん、いくらでも聞くよ。ミトちゃんの話」

 

あー…もう本当にこの娘は……なんで嫌いになれないのかしら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それでフレンドを全部切ってどこかに逃げようとした矢先、貴女に捕まった。そんな感じ」

 

数分間、話し続けた。あの日何があったのか

 

その間レーテは何も言うことなく、ひたすら私の話を聞いてくれた。彼女が何を思ったか…私に失望しただろうか、恐れただろうか…私を嫌いになっただろうか

 

そうだったら嫌だな…

 

「そっか…お疲れ様」

 

「っ!?ちょっ!何頭触ってるのよ!」

 

「んー、頑張ったご褒美とか。ほらなでなで〜」

 

「ちょっやめ…やめて…」

 

というか頭撫でられるのなんて…いつぶり、だろ

 

「あはは、ごめんごめん。でもさ…それってミトちゃん悪くないよね?」

 

「いや私が手を下してる時点で…」

 

「でもそれってさ、ミトちゃんがやろうと思ってやったことなの?」

 

「そんなわけないでしょ!!…あ、ごめん」

 

「大丈夫、気にしてないから。でもそれならミトちゃん悪くないじゃん、事故じゃん?」

 

「だとしても…」

 

「それにさそんなに何でもかんでも責任感じてたら、潰れちゃうよ。いつか」

 

っ、図星だ。まさかこの娘に図星をつかれるなんて…思ってもみなかった。たしかにその通りだ、でもだからって、人殺しの責任から逃れることなんて許されることじゃない

 

どんな理由があっても…

 

「それでも私は…」

 

「それなら私も一緒に背負うよ、その重り」

 

「は…?何を言ってるの?このことは貴女にな全く関係な」

 

「関係ある!ミトちゃんのことだもん!」

 

「ほんと、なんなのよ…貴女」

 

言ってることもやってる事も意味不明…理にかなってない…それなのになんでこんなに頼もしく聞こえるよの。なんなの本当に…!

 

「っ!わわっ、ごめんね!何か気に触ること言っちゃった!?」

 

「違うわよ…っ、なんでまた泣いてるのよ私は…!」

 

また泣いちゃった、しかもこの娘の前で…なんでなのよっ

 

ギュッ

 

「わっ…なんなのよ、本当に」

 

「大丈夫、私がついてるから…」

 

「べつに、泣いて…ないからっ」

 

「うんそうだね、ミトちゃんは泣いてないね」

 

「〜っ!」

 

屈辱だわ…まさかこの短期間にレーテに2度も慰められるなんて…でもなんでか嫌な気はしないのよね。もしかしてこれが…母性?いやよく知らないけど

 

でも多分涙が止まらないのは、この娘といることで安心している自分がいるからなんでしょうけど…その事実がまた悔しい

 

「ねぇミトちゃん」

 

「…なによ」

 

「またフレンド組まない?もちろん嫌な別にいいんだけど…」

 

「この状況で断れるわけないでしょ…バカ」

 

はぁ…あそこまで覚悟して決断したのに、この娘の安直な言葉でそれを崩すなんて…意思が弱いとしか言いようがないわね

 

本当に、私って何なのかしら…

 

「それにさ、どんな問題もすぐ解けるわけじゃないでしょ?」

 

「…どういうことよ」

 

「ほら、学校の勉強でもその時は解けなかったけど後でやったら分かるみたいなことあるじゃん」

 

「まぁ、それなりには…」

 

授業だとどうしても時間が限られてたりしてどうやっても理解出来なかったけど、家でやってみたらすぐ理解出来たみたいなことあるけど

 

それと今回のことになんの関係が…?

 

「それと同じでさ、確かに今回のことはとっても難しい問題だと私は思うんだ…まぁ無関係の私が言っても無責任かもしれないけどさ」

 

「難しい…問題、か」

 

「うん…だから今はゆっくり休んでさ、そのことはまた考えようよ」

 

休むか…いいのかな、そんなことしても。現実なら故意じゃないにしても即刻逮捕されるレベルのことなのに…それなのに私がそんな

 

分からない、分からない…なるほど、こういうことか。レーテの言ってる意味が何となくわかった気がする

 

多分このことは今考えても答えは出ない…しかも元々答えがあるかすら分からない自問自答みたいなものだし、もしかしたら一生答えが出ないかもしれない

 

悩みつつも前に進む、か

 

「…ん、ありがと。ちょっとは気が楽になった気がする」

 

「そう、それなら嬉しいなぁ。えへへ」

 

答えは出ないかもしれない、それでも前に進まなきゃいけない…それが多分、この世界で必要な考え…この世界の、生き方。なのかもしれない

 

多分そのことも、分かる時は来ないのかもしれないけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その…今日はありがとう、色々と」

 

「いいのいいの、困った時はお互い様ってね」

 

「そう…ならそういうことにしておくわ。それじゃあ…またね」

 

「うん!困った時はいつでも呼んでよ!40秒で駆けつけるからー!」

 

「ふふっ、そう。ありがと」

 

ひと通り話を済ませたところで今日はお開きになった

 

色々話し合った結果、私はしばらくひとりで行動することにした。多分その方が私はやりやすいと思ったから。最初はレーテも納得してなさそうだったけど…まぁ自分なりに頑張って説得した

 

あとアルゴとかには出来れば言わないで欲しいと言っておいた…近いうちに自分の気持ちに整理がついたら話すってことにした

 

でも本当は…会うのが気まずいだけ。あんな別れ方をした手前どうやって会ったらいいか分からないから…どうしたらいいか、知らないから

 

「はぁ…」

 

まさか今まで親しい人を作らなかった弊害がこんなところで出るなんて思わなかった…みんなどこかに行っちゃったから、アスナ以外

 

アスナ…あの娘にも謝らなきゃなぁ。許してくれるかな…また前みたいに仲良くしてくれるかな、こんなダメな私でも、他の人と同じように接してくれるかな

 

…あー、怖いな。5層の時は許してくれたけど、2度目はないかもしれない、許してくれないかもしれない…嫌われたかもしれない、そう思うとやっぱり怖い

 

そろそろ帰ろうかな…とりあえず今日はテキトーな宿を探そうかな

 

〜♪〜〜♪

 

この歌は…おそらくユナの歌ね、相変わらずいい声してる。あー、ユナにも謝らないといけないわね…私の数少ないフレンドだった訳だし

 

でもその…今日はちょっとまだ覚悟というか調子というか…とにかく都合が悪いからまた今度に

 

「〜♪あ!ミトさんだ!おーい!」

 

「ちょっ、気付かれるの早くない!?」

 

50mくらい離れてるのにこんなすぐ気付かれることある?しかも私それなりに隠密も上げてるはずなんだけど

 

「よかったー!急にフレンドが切れちゃったから心配だったんだ!何かあったの?」

 

「…まぁ色々あったのよ」

 

ごめんなさい…まだ心の整理がついてないから、うまく説明出来ないの。許して

 

「そっか、分かったよ。それならまたフレンド交換しよう!」

 

「あー…えっと」

 

断らなきゃ、じゃないとまたユナに悲しい思いをさせちゃう。そんなことダメ、ダメなのに…どうして私は断れないのよ!

 

断る…ことわ……無理よ、そんなことしたらそれこそ悲しませちゃうじゃない。ほんと…自分で決めたこともすぐ破るんだもん、そんなの誰かを守るなんて到底出来るわけないじゃない

 

あー…バカバカしい

 

「…そうね。それじゃあ送ってもらえる?」

 

「おっけー!えっと…はい送ったよ!」

 

『Yunaからフレンド申請されました』了承ボタンを押してっと

 

「そうだ!この後もう一曲歌うんだけど、聴いて行ってよ!」

 

そうね…今日はもうなにか予定がある訳でもないしユナの歌を聴けばきっと気分転換になるし…たまにはいいかな

 

「それじゃあ…そうしようかしら」

 

「やったね!ささ、こっちこっち!」

 

「ちょっ、そんな引っ張らないでよ!」

 

どうしてこうも私の周りには強引な子が多いのよ…まったく。とりあえずここに居てって言われたからそこに立ってるけど…

 

あ、ユナが台みたいなのに登った

 

「よいしょっと…よし、それじゃあ今日ラストの曲行ってみよー!」

 

とりあえず拍手しておこう…周りにも何人かいる人もやってるし。少ししてユナは手に持ってるギターみたいな楽器を鳴らし始めた…聴いたことない曲ね

 

『何処へ行けるのか 僕らはまだ知らない 〜♪』

 

あぁ…いい曲。どこか重い曲調ではあるけどその中になにか強いものを感じる…世の中には知らないだけでやっぱりいい曲が多いのね

 

何言ってんだろ私、まだ10数年しか生きてないのに

 

『彼方に輝く 星が導く場所へ 〜♪』

 

歌詞も綺麗なフレーズだし…まるでこの世界のために作られたような曲ね。本当に…いい曲。なんとなく…前を向いてやっていけそうな気持ちになれた気がする。分からないけど、なんとなく

 

「〜♪……ふぅ、みんな今日はありがとー!またどこかであったら声掛けてね〜」

 

周りの人達に声を掛けたユナがこっちに来た

 

「で、どうだったミトさん?」

 

「そうね…相変わらず上手いわね。今歌ってた曲もよかったし、なんて曲なの?」

 

「あー、それがまだないんだ」

 

…ん?まだって…まさか

 

「もしかして、貴女が作った曲なの?」

 

「うん!」

 

「凄い…いや、本当に凄いと思うわ」

 

「そう?えへへっ、ありがとうミトさん!」

 

世の中には自分で曲を書いて作詞をする人がいるって言うのは何となく聞いたことはあったけど、まさかこんな身近な娘がそうだったなんて

 

すごいなぁ、ユナ

 

「うーん…そうだ!せっかくだし、ミトさんあの曲に名前付けてよ!」

 

「えっ!?私でいいの?」

 

「もちろん!ささっ、アイデアちょうだい!」

 

いきなりそんなこと言われても…うーん。あの歌のタイトル…そうね

 

どこか暗い雰囲気がありつつも希望も見える…そんな歌、誰か…いや私達のの心の支えになるような。私にとっての心の支え…アスナとかユナとかアルゴとか…あとレーテとか。私にとっての彼女たちはどんなものなのかな

 

多分それはきっと…憧れなんだろうな

 

でもあの歌に日本語のタイトルはなんとなく合わない気がするし…英語に変えて

 

「そうね…『longing』とかどうかしら」

 

「『longing』かぁ…憧れとか熱望とかの意味だよね。うん!いいタイトルかも!それにしよう!」

 

「いいの?自分で言うのもなんだけど、安直じゃないかしら?」

 

「そうかな?ミトさんが考えてくれたから私からしたらとっても大切なものだよ」

 

よくもまぁそんなことを臆面もなく言えるわね…もはや尊敬すらするわね。って…もう結構な時間じゃない

 

「じゃあそろそろ行くわね」

 

「うん、またね〜」

 

…あれ?そういえばノーチラスが今日はいなかったわね…まぁいつも一緒にいる訳じゃないだろうしそんな日もあるわよね

 

それにしてもいい曲だったなぁ…次に会った時にまた歌って貰えないかお願いしてみよう

 

…それはそうと、明日からどうしようかな。別にもう目立っちゃいけない理由がある訳でもないし、まぁ一応アルゴにはまだ会いづらいって点はあるけど

 

しばらくは防具屋に専念しよう。ひとりで作業してればきっとアルゴやアスナに言うべき言葉も見つかるかもしれないし。多分今は何をしても上手くいかない気がするし

 

ごめんなさいアルゴ、ごめんなさいアスナ…こんな不甲斐ない私で。謝る言葉もすぐに出てこない、そんなダメな人間な私を許して

 

あと、出来れば

 

「いつまでも、私の近くにいて欲しいな」

 

…なんて、あの娘達が私といつまでもなんて。ある訳ないか





ミトの行先も、この物語の行先も完全に迷子です
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