ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット 作:あらびきバナナ
後ろから私を逃がさないように力強く抱き締めてくるアルゴ、そしてそれを振りほどくことなくただ立ち尽くす私
本当なら今すぐにだって逃げ出したい、今の私に彼女に合わせる顔なんてない、なのにそれが出来ない…いいや違う多分そんなことしたくないんだ
多分ここで逃げたら二度とアルゴと関わることが無くなるかもしれない…そんな事実が、今までアスナ以外に抱いたことのなかったそんな感情が私の中に小さいけど確かにあるから、出来ないんだ
そっか…私の中でアルゴはそれほどまでに大きな存在になってたのね。いつなったか、どうしてそうなったのか、そんなことは今の私には分からない
だけど今そう思ってるなら、今はその気持ちに従うことにしよう…それくらいしか私には出来ないから
「その…久しぶり」
「…あぁ、そうダナ」
か、会話が終わってしまった…いやだって何話せばいいか分からないし…でもなにか話さないといけないのも事実。うーんなにか、なにか思いつけ私…!
「…あー、どうしてここに?」
「ミーちゃんがいるって聞いたカラ」
「そう、なのね…」
はぁ…馬鹿なの私は?そんなこと聞いたって会話が続くわけないでしょ、ほんとなんでこうも気が利かないのよ私は
そして何よりいつもの元気さはどこにいったのか、普段じゃ絶対見れなかったアルゴの塩らしい態度のせいもあってめちゃくちゃやりずらい…
でもとにかくまずはこの気まずい雰囲気をどうにか変えないと…
「なぁ…」
「えっと、なに…?」
「…色々と話したいことがあるから、場所を変えないカ?」
「別に、いいけど…」
そう返事をしてから少し、ゆっくりと私を抱きしてめいた腕は力を緩めていき私の拘束を解いた。それを合図にアルゴの方を向こうとした瞬間
今度は私の右腕にしがみついてきた。様子を伺おうとしたけどかなり深くフードを被っているせいで私から見えるのはその表面だけだった
「ならこっちダ、行くゾ」
「え、えぇ…」
なんで腕を組むのかを聞こうとしたけどそんな間もなく私はアルゴの目指す目的地に引っ張られることになった
今彼女はどんな顔をしているのだろうか…怒っているかもしれない、悲しんでるかもしれない。もしかしたら泣いているかもしれない
少なくとも明るい表情では無いこと、そしてそれが私のせいであること。今私に分かるのはそんなことだけだ
…あのことが起きる前までは彼女との仲はビジネスライク的なものだと思ってたけど、この1ヶ月近く。色々なことを考えたことでその認識も変わってしまった
現に今彼女がどう思っているかを気にしてしまうところなんかは当時にはなかった変化だし…
思えば、未だに何を話すのかを聞いていない。いや聞くまでもなくあのことなのは明らかなんだけど…それについて怒られるのか、それともほかのことを言われるのか
少なくとも今のこの状況では私にはそんなことは分からないんだけど
アルゴに引っ張られるまま歩くこと数分、街はずれの安宿に来たけど…
なんというか…空気が重い。いやどう考えても私の責任だし、私が話を切り出すべきなんだろうけど。1ヶ月考えても見つからなかった言葉がそんな即興で思いつく訳もなく…はぁ
でも何か言わないと…なにか、なにか……
「その…ごめん、なさい…心配掛けて」
「えっ…?」
それしか言えなかった、色々話さなきゃいけないことがあるのは分かってはいる。でも今の私には、それしか言えない
その言葉を聞いてアルゴは呆気にとられていた、一体どうして…?
「ちがう…違うんだヨ!謝らなきゃいけないのはむしろオレっ…私なんだよ!」
「いいえ全部私が悪いのよ…なにかも全部、ね」
パチンッ!!
痛っ…叩かれ、た?
「なんで、なんでそうやって全部自分で背負い込むんだよ!!なんで私を、周りの仲間を頼らないんだよ!」
「!!そんなこと言ったら貴女だってそうでしょ!いっつもいっつもひとりで行動して!危ない目にもあってるじゃない!」
「話をすり替えるな!今はミーちゃんの話をしてんだよ!」
「はぁ!?元はと言えばあなたが言い出したことでしょ!!」
はぁ、…頭に血が上って怒鳴りあってしまった。だけど頭の中で思ってたことを一気に言えたおかげで、少しだけまた気持ちが楽になった気もする
それこそ変に難しく考えるのも馬鹿らしくなるくらいには。なんなのよ、本当に…最近の私どうにかしちゃってるみたい
「…私はさ、ミーちゃん。もっと頼って欲しいんだよ…確かにあの日もっと私が早く現場に着いてればあんなことにはならなかったのかもしれないし、頼りないかもしれないけど、さ」
「そんなことないわよ、私が勝手にひとりで背負い込んでただけなんだから。それに、私が本当に独りだった去年とかはアスナは貴女のことも頼ってたみたいだし…その点においては分かってるつもりよ」
「なら、どうして今まで…」
その理由が分かったらこんなちぐはぐな行動は取ってない、でもそんな言葉でこの話が終わるとも思えない
なら、今言える精一杯を言わなくちゃ…
「…みんなに迷惑を、かけたくなかったのよ。私がレッドになったせいで、みんなが後ろ指を指されるのが嫌で…そんな目に合わせてしまうかもしれないっていう未来が怖くて…なによりそんな自分が不甲斐なくて…だから、逃げてたの」
貴女やアスナ…ほかのみんなからも。そして何より自分から
「そうだったのか…ごめんナ。そんなことも知らずにぶったりしちゃテ」
「いいわよ、別にHPが減るわけでもないし」
「ありがとうナ、本当に」
「私の方こそ…ごめんなさい。それとありがとう」
私がそういうとアルゴは、もちろんと返事をしながらこれまで見たこともないような屈託のない笑顔を返してきた
そのあまりの綺麗さに今度は私が呆気にとられてしまった
それから暫くは他愛もない話をしながら普段はできないくらいにゆっくりとした時間を過ごしていた…正直今はそんなことしてる余裕もない気がするけど、今くらいはいいかなって
「…そういえば、アーちゃんとはあれ以降会ったノカ?」
「まだ、会ってない。けどいつかは必ず…」
「ミーちゃん、先延ばしにしてるといつまでもその時は来ないゾ」
「わ、分かってるわよ。そんなこと…だけど怖いのよ」
「大丈夫ダヨ、ミーちゃんがそんな人じゃないって付き合いの短いオイラやレーちゃんだって知ってるんだから。ミーちゃんとリアルでも付き合いのあるアーちゃんなら尚更知ってるダロ。だから大丈夫サ」
「そうかしら…」
ん?今の会話なにか違和感が…あれ?私アスナとリアルからの付き合いってアルゴに言ったことあるっけ?いや、この娘の場合カマかけてきてるって可能性も
「あ、ちなみにミーちゃんとアーちゃんがリア友ってのはアーちゃんから聞いてるから、そこのところよろしくナ」
「はぁ、あの娘は…」
ほんと、ネットリテラシーどうなってるのよ…最初の頃にもっと色々教えておくんだった。どうなってんのよ結城家の教育は
「マ、言いふらしたりはしないから安心しなヨ」
「当たり前でしょ…でもそうよね、いい加減あの娘にも会いに行かないと」
でも連絡手段がないのよね。しかも今のアスナはそんな簡単に会える立場でもないし…この世界に来るまでRPGゲームもやったこともなかったのに今では最前線ギルドの副団長
まぁあの娘の実力なら当然よね
「なんならオイラが連絡とってやろうか?多分ミーちゃんに会えるって言えば何がなんでもすっ飛んで来ると思うケド」
「さすがに無理やり呼び出すのは忍びないし…あの娘が休みの日とかあったらその時に伝えてもらえる。私がスケジュール合わせるから」
「そうか、まぁこれは2人の問題だからオレっちは無理強いしないけどサ。ミーちゃんがそういうならその通りにするヨ」
「ありがとう、迷惑かけるわね」
「いいってことヨ〜、仲間ダロ?私たち」
「…えぇ、そうね。仲間だものね」
「へっへへ〜」
なんだろう、さっきからアルゴの距離が近いような…いや間違いなく近い。猫なのこの娘は、むしろ髭的にはネズミなのに
って、もうこんな時間じゃない。そろそろ自分の宿に帰らないと
「アルゴ私そろそろ宿に帰るから」
「え…?」
「え?ってなによ」
というかなんでそんな寂しそうな顔するのよ、ただ宿に帰るだけでしょ
「いっいや〜せっかく久しぶりに会えたんだし夕飯一緒に食べたりとか、なんならお泊まり的な…って何言ってんだオイラ…すまん忘れてくれ、じゃあナ…ミーちゃん」
「あーもう、分かったわよ…夕飯とお泊まりね。そのくらいなら別にいいわよ」
「え、いいのカ?」
「えぇ、現にこの1ヶ月心配かけたのは事実だしそのくらいで貴女の気が休まるならね。ただこの辺のご飯屋さんは知らないから案内はよろしくね」
「あぁ!もちろんダ!それじゃあこの前見つけた魚の店に行くカ」
「どこでもいいわよ、あなたが行きたいなら」
そうね、なんだかんだあったけど。アルゴともよりを戻せて良かった…なんか距離感がまえより近くなった気もするけど。まぁいいか
あとは…アスナと話す、それだけ。でもそれだけが私にとってはとてつもなく重い
でも、今の私なら出来る気がする。どこからその自信が来るのかは正直分からないけど…
「なぁミーちゃん、せっかくだしレーちゃんも呼ぶカー?」
「アルゴがそうしたいならいいわよ」
「うーん…ま、せっかくだし今回は2人で行くカ!ならさっさと行こーゼ!」
「ふふっ、分かったわよ」
今の私には仲間がいるからね
もうそろそろ夏休みに入るのでぼちぼち投稿ペースあげます
今回も短くてすまん