ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット 作:あらびきバナナ
えーっと…すみません。2ヶ月も投稿サボってしまって
今回からまたぼちぼち投稿していきたいと思います、目安は1年以内にSAO編を終わらせるってことで
過ぎ行く日々
この世界に囚われてもう1年が経とうとしている。最初の頃の絶望的な空気感はどこへやら、今では多くのプレイヤーがこの世界での生活に慣れてきてまるでここでの生活が当たり前のように過ごし始めている
確かに慣れることはいい事だしそれ自体を懸念してるわけじゃない。それによって気が緩むことを私は気にしてるんだ
今の所それで問題が起きてるわけでもないし私の杞憂ならいいんだけど…たまにとはいえ攻略にも参加してる身としては私だけでも気を引き締めないと…まぁそれよりも今は店の不景気をどうにかしないと
いや本当に、開店から1週間程度はそれなりにお客さんも来てたし儲かってもいたのよ。でも10月に入ってからというもの攻略が先に進みこの層に定住するプレイヤーが減ったせいかはたまた私の商品の質が悪いのか、理由は分からないけど客足は伸び悩み売上も低迷…閉店まではいかないけどかなり危機的な状態だった
唯一防具や武器のメンテナンスに来てくれるアスナも3日に1回程度、常に閑古鳥が鳴いている状態には変わりは無い
その証拠に今もこうしてリズとお茶を飲みながらお菓子をつまんでるのがいい証拠だ
「…なんでこんなにお客さんが来ないのかしらねぇ」
「理由がわかってたらこんなにのんびりしてないわよ…でも商売なんてこんなものでしょ」
どんな店も開店時は話題性である程度賑わう、そのあとは徐々に衰退していき世の中のほとんどの個人経営のお店はそこで潰れたりすることもよくある。それでも残った数少ないお店が地域に馴染む
このままじゃ私達は前者の例にあたはまってしまいそうだけど…せっかく建てたお店だし、少しでも頑張りたい。応援してくれたアスナやユナ、アルゴやレーテのためにも
もっともこんなことを考えたところでお客さんが増えるわけでもないんだけど…
「それにしてもこの世界の食べ物はこんなに味気ないのよ、もっと美味しいものはないの?」
「あるにはあるんじゃない?もっともNPCが売るものじゃこのレベルが限界でしょうけど…あとは料理スキルを自分でとって作るか」
「そっかぁ、でも私は今スキル枠に空きはないし。ミトはどうなの?」
「枠に余裕はあるけど今の所とる気はないわね、何かそれで限定の強力なバフが入るなら考えなくはないけど」
「そういうところほんとゲーマーよね、分からなくは無いけど」
まぁ、こんな他愛もない会話もたまにはいいかもね。この世界じゃいつ何が起きてもおかしくないわけで、ちょっと前まで悩み続けて腐ってた身としては尚更こういう日常は心地いいものだ
程よく晴れて暖かな午後、こんなに日にはむしろ何かをすることの方が馬鹿らしく思えてきてしまう…いやいやダメでしょ私。さっき頑張ろうって決めたじゃない、何早速サボろうとしてるのよ
「はい休憩終わり、仕事するわよ」
「えぇ…せっかくだしもう少しゆっくり過ごそー、お客さんも来ないしー」
「だめ、来なくてもやれることはあるでしょ。それに潰れたら私もだけど貴女も困るでしょ」
「はぁ…わかったわかった、じゃあ私素材の買い出し行くから店番よろしくー」
「はいはい、くれぐれも寄り道しないようにね」
「分かってるって!じゃ行ってくるから!」
最低限の準備だけして慌ただしく店を出ていくリズを眺めながらお茶を一口で飲み干す。散らかった机の上を片付けて作業を始めるための道具をストレージから取り出す
さぁ、仕事の時間だ
こうして防具や装飾品を作り始めてもう半年以上、今では特に目立ったミスをすることも減り安定していいものを作れるようになってきた。最もそれは熟練度の問題もあるんだろうけど、それでもやっぱり手際が良くなったと自負している
そして何よりもこうして何かを作って誰かに使ってもらえるというのはやっぱり心地いいものだ。私の防具が誰かのHPを、命を守ってるというのは嬉しいというか誇らしいというか
今までのやってきたゲームでこういった生産職を触れることはなかったし、もし現実に帰れたらそういうのもやってみようかな…なんて、いくらなんでもこんなこと考えるのは早すぎるかな?
でもまぁ希望を持つこと自体はダメじゃないと思う…思いたい
そんなことを考えていると店のドアをノックしている音が聞こえた。お店なのにノックとはこれいかに…まぁ別にいいんだけど
「はーい、今行きますよぉ」
なんで自分から開けに行ってるんだろう…普通に扉の前向こうの人に開けてもらえばいいのに。なんて無粋な考えも頭をよぎるけどどうせ制作作業しかすることないしたまにはこうして動かないとエコノミークラス症候群になっちゃうしね
いやならないけど、ゲームだし
「なんのようです…か」
「えっと……あ」
「…あの日以来ね、キリト」
「あぁ…久しぶり」
そこにはかつて1度だけ共に戦いそれ以来姿を見なかった男。色んな意味で私のライバル…キリトがいた
もっとも今の彼にはあの時のような覇気はなく、まるで今にも壊れそうな人形の如くあやうさすら感じさせる。そんな雰囲気ばかり纏っていた
目に光もないし…ほんと今にも消えそう
「で、うちの店になんの用?」
「あー、この辺に防具のメンテナンスをしてくれるプレイヤーショップがあるって聞いたんだけど…もしかして」
「そうね、この辺に他に店はないし私ってことになるわね…まぁそういうことなら、とりあえず入って」
「あぁ…」
確かに私はこいつのことが苦手だ…現実を見て動くのが私なら理想を見て動くようなタイプ、しかもその理想を叶える力も持ってる。いやこれじゃ苦手じゃなくてどちらかと言えば自己嫌悪かも
「で、どの部位の防具?胴体なら3万から、その他の部位は1万5000から3万でやるけど」
「えっと…全部で頼む」
「そ、ならその防具ここに出しといて。私は道具を持ってくるから」
まぁメンテナンスなら掛かっても15分くらいだろうし、さっさとやれば作業に戻れるでしょ。それに全部ともなればそれなりの金額…久しぶりに美味しいご飯が食べられるかも
えっと修理用の道具は…何使うか分からないし全部もっていこう。そういえば、あいつ最近アスナには会ってるのかしら?それも上手い感じに聞き出してみよう
「さてと防具の具合は…うわっほとんど耐久力ないじゃない、どんな使い方したらこんなことになるのよ」
「…色々あったんだよ」
「そう、まぁ中身には興味無いけど。私は仕事をするだけ」
「あぁ、頼む」
もうここまでボロいものを直すのってもはや普通に新品で作った方が早そうなんだけど…まぁ本人がそれを言い出さない以上は私からそれを言う必要もないから別にいいや
それにしても…さすがというかなんというか、全部現状の1級品の性能ね。ソロはその辺に気を使うのは当たり前だけどここまで徹底してるのはゲーマーとしか言いようがないわね。そんなことを考えながら私が作業をしてる間にあいつは店を物色してるけど…残念、あんたのお眼鏡に叶いそうなものはまだないわよ。くやしいけど
っと、しばらくは楽な作業だしさっそくあの話でも振ってみましょう
「…ねぇあんた、最近アスナには会ってるの?」
「会ってない、です」
まぁ聞くまでもなくアスナの口振りからして分かってはいたけど、一応ね
「はぁ…別にあんたの行動にとやかく言うつもりはないけど、あの娘があんたのこと心配してるっていうのは知っておきなさい」
「…覚えておく」
「ならいいけど」
普通ならここでお互いの意見をぶつけあったり感情をさらけだして言い合ったりするのが王道な展開なんだろうけど、私達はそもそもそこまで関係が深いわけじゃない。いっても友達の友達ってくらい
いや仲が良くても多分私達はそういうことをするタイプじゃないけど。達っていうか私が
そんな程度の関係なら今の会話すら必要ないとも思うんけど…もしもこいつが酷い目にあっても、多分私はなんとも思わない…でもそんなことがあればアスナが落ち込んでしまう。それを未然に防ぐための予防策、そのための会話ということにしておこうかな
行動の全てに論理性を求めるのは間違ってるかもしれないけど、できる限りは求めるべきだと私は思ってるから。もっともそんなの数ヶ月前まであんなだった私が言えることではないわね
そんなことを考えながら作業をしていたら気付けば全体の8割の手順が済んでいた、あとは必要素材を合わせて合成するだけ…と言ってもつい先日そこの自動化スキルを手に入れたからもう自分の手を加えることもないんだけど
「ふぅ…あと5分でも全部終わるから。そうだなんか飲む?」
気を使ってるとかじゃなく、一応社交辞令として
「いや遠慮しておくよ、この後すぐ出るし」
「そう。じゃあちょっと席外すから誰か来たら呼んで」
「わかった」
無駄なことを考えながら作業をしてただけあって少し疲れた
そういえば、なんで喉が渇く訳でもないのに水分を取ろうという行動を無意識にしてしまうのかしら。生物の本能なのか10数年生きてきた中で生まれた習慣なのか、なんにしろ不思議なものだとは思う
まぁなんにしろその中に"美味しさ"という幸福を求める心理が理由としてあるのは間違いないわね
「んぐっ…はぁ」
さてと、そろそろ合成も終わった頃でしょ。さっさとお金もらって帰ってもらおうかしらね
「…っと、やっぱり終わってた。はい返すわお代は5万でいいわよ」
「えっいいのか?全部ボロボロだったんだろ?」
「えぇ本来ならもっとふんだくってるところだけど、一つだけ条件があるわ」
「その条件は?」
「今年中にちゃんとアスナに会いなさい。それが条件よ」
「…あぁ、約束する」
そういうとキリトは慣れた手付きで金額ピッタリのお金を具現化し私に手渡した。それを受け取り近くの机に置いた私はそのままの流れで彼の防具を返した
すると彼はその場でおそらく臨時でつけたであろう防具と直したものを着替え始めた。 やむおえなかったんだろうけどいくらなんでもバラバラすぎてそれも分かりやすかった
「…今日はありがとな」
「えぇ、次来ることがあればちゃんと二割増で請求するから」
「なんで二割増!?」
「冗談よ、ほらそこに立ってると邪魔だからさっさと出て」
「あー冗談…じゃあ今度こそまたな」
「さようなら」
…最後の冗談でようやく表情が柔らかくなったわね。あー、緊張した…ずっと今にも泣きそうな顔してるからヒヤヒヤして仕方ないわよまったく
さて、あいつも帰った事だし作業を再会…
「たっだいまー!ねぇミト今出てった人ってもしかして私のお客さんだった」
「…おかえりリズ、残念だけどさっきの奴は私の客だったわ」
「そっか、もし私のならとっ捕まえて連れ戻すきだったけどそれならいいか」
「そう、じゃあ私裏で作業してるから店番よろしく」
「りょうかーい!と言っても人は全然来ないけどね」
「ふふっ、言えてるかも」
それじゃあ今度こそ作業を再開しましょう、幸いにも前線で戦えてるから素材には余裕もあるわけだし少しでもいいものを作ってリピーターを増やすのは大切だしね
「今日もお疲れ様、またあしたね」
「まったあしたー!朝遅れないでよー」
「それはこっちのセリフよ」
日も暮れてきた頃、今日も結局あれからお客さんも来なかったから早めに店を閉めた。早めとは言ったけど最近はずっとこの時間だしもう慣れっ子ではあるんだけど
店の鍵を閉めたら自然と鍵が消えてなくなる、なくした訳ではなくシステムがセキュリティのために消滅させたにすぎない。最初こそ驚きはしたけど今となってはなんとも思わないこのシステム…きっと現実に戻ったらここでの感覚が残って苦労するんだろうなと
「ミートーちゃーん!!」
「ちょわ!?……レーテ、それやめてって言ったよね?」
「ごめんごめんっ、ミトちゃんの反応が可愛くてつい」
「まったく」
ここ数日、何故かレーテは私に会う度にこうして後ろからものすごい勢いで抱きついてくる。しかも反応が可愛いとまでのたまう始末…やっぱりこの娘やることは私には理解出来ない
「それで今日はどこに行ってたの?」
「迷宮区、アスナちゃんのお手伝いも兼ねて」
「そう。あの娘無理してなかった?」
「うん、むしろ助けて貰ってばっかりだったよ。エヘヘ…というかそんなに心配ならミトちゃんも来ればよかったのに」
「あー…まぁそのうちね」
「またそればっか」
ほんと、あいつのこと言えないわね私も。お店や他のことを言い訳にしてまだどこかアスナに会うことを避けてる節がある…むしろ私の方が重症かも
やっぱり同族嫌悪なのかしらね
「レーテ、この後暇?」
「うん!むしろミトちゃんといるために開けてるまであるよ!」
「はいはい。今日は久しぶりに収入があったからちょっといいもの食べに行きましょ、奢るわ」
「やった!お肉行こ、お肉!」
「そうね、たまにはガッツリしたものを」
「ミートーさーん」
お肉の美味しい店を思い出そうと私の頭の中にある数少ないお店の記憶を掘り起こそうとしていた時、ふと遠くから耳心地の良い声が聞こえてきた、その上私のことを"さん付け"で呼ぶのは間違いなく
「あらユナじゃない、どうしたの?残念だけど店はもう閉めちゃったわよ」
「あっそうなんだ、それはそれはお疲れ様。レーテもね」
「私は今日手伝ってないけどね〜」
「ありゃ?私が来る時はいつもいたから勘違いしちゃった、そんな日もあるんだね」
そりゃそうでしょ、なんで私とレーテがずっと一緒にいると思ったのよ。いやまぁ別に嫌では無いんだけど
「それでユナ、何か用があったんじゃないの?」
「あっ!そうだった!あの件ようやくノーくんから許して貰えたの!」
「本当?よかったじゃない」
「うんっ!」
前にユナが来た時はたしかノーチラスが断って揉めてるみたいな話だったけど、どうやら上手く説得出来たみたいね
「でもユナ、前線に行くのはいいけど危なくなったら必ず逃げるのよ。誰かの助けになりたいのは分かるけど貴女の命が第1、わかった?」
「うん、わかったわ!」
ほんとかしら…私がいる時なら多少なりとも力にはなれるけどそうじゃない時が心配ね。ノーチラスの強さも分からないし…まぁそこはアスナに少し伝えてるなりして融通を効かせてもらうことも出来るけど…うーん
「…って、あれ?ユナは?」
「もう帰ったよ〜、なんかこの後別の層でライブするみたいだよ」
「そう、まぁ元気そうでよかったわ」
「そそっかしいけどね」
「ユナも貴女にだけは言われたくないと思うわよ」
「えー!なんで!?」
「ふふっ、ほらご飯行くわよ」
後ろを着いてきながらあれこれ主張してくるレーテの声をBGMに一つ心当たりのある店に向かって歩き出した。そうだ忘れないうちにアスナにメッセでも送っておこう
そう思った矢先、まるで見計らったかのように私宛のメッセが飛んできた。しかもその相手はアスナ
『ドロップ武器で強力な鎌が落ちるダンジョンがあるんだけど良かったら明日一緒にどう?』
もう完全にゲーマーのそれになってきたアスナ…嬉しいような悲しいような。そんなことを考えながら明日の空き時間をアスナに返信とユナのことも伝える
うん、明日は楽しい日になりそうだ
「ミトちゃーん!さっきのことちゃんと説明してよー!」
明日嘘予告をあげます、嘘とは言っても大筋のストーリーは本当なので参考までに読んだくれたら