ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット   作:あらびきバナナ

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(投稿が遅れて)本当に、申し訳ない




日常が続く限り

 

「へぇ、そんなダンジョンがあるのね」

 

「そうなのよ!だから今度そこに素材を」

 

リズ曰く、少し上の層に武器や防具の素材ばかりを落とす敵が出てくるダンジョンがあるとか。真偽はともかく本当にそんなところがあるなら私たちの店にとって夢のようだけど…ただひとつ問題があるとすれば

 

「でもリズ、貴女レベルいくつ?」

 

「…はい、足りてません」

 

うんそんな気はしてた、私は一応アスナに声をかけられたらすぐボス戦に行けるようにレベル上げはしてるけどリズは生産職がメイン。もちろん上の層に行けるようなレベルは確保できてない

 

「とりあえず、暫くはレベル上げね…そうね1週間ぐらい店を早く切り上げてレベリングすればどうにかなる?」

 

「そうね…多分足りるわ!」

 

「なんか不安なんだけど…まぁそしたら今日からはそんな感じで。もう店開けるわよ」

 

「りょうかーい!」

 

あー平和ね…事件も起きないし、うるさいあの子もいないし

 

「……」

 

「?どうしたのミト、急に立ち止まって」

 

「…いや、ちょっとね」

 

「そ」

 

なんかとてつもないフラグをたてた気がしたんだけど…気のせいだったかな?てっきり某探偵のアニメ映画みたいに急に爆破が起きたりとかすると思ったんだけど、まぁ何も起きないに越したことはないし全然いいんだけど。むしろ心労が減って助かるし

 

そもそもSAOで爆発ってよっぽどの事だけど

 

「…ねぇリズ」

 

「ん?どうしたー?」

 

「楽しい?この仕事」

 

「うんまぁ…どうしたのミト?今日なんかおかしいわよ」

 

「なんでかしらね…急に聞きたくなったのよ」

 

「そっか、まぁそういうこともあるか。気にしないでおいてあげる」

 

「そうしてちょうだ「レーテちゃんがきたよ!!」…ごめんやっぱ不安当たったみたい」

 

「あーそういうこと」

 

バタンっと大きな音を立てて開いた扉から現れたある意味で不安の根源…いやこれは言い方が悪いわね、心労の要因当たりにしておこうかな。とにかく、レーテがやかましくやってきた

 

「え?不安?どういうこと?」

 

「別にいいのよ気にしなくて、それでなんの用?」

 

「お手伝いしに来たよ!」

 

「そう…じゃあ扉の近くにいるんだしかけ看板ひっくり返してくれる」

 

「あいあいさー!」

 

ほんとなんであんなに元気なのかしら、いつもいつも。毎日エナドリ飲んでもあんな元気にはなれないわよ私だったら

 

まぁもうこれに関しては生まれた星が違ったってことで勝手に納得しよう…あれ?これ私前にも考えたような、まぁいいか

 

「ほんと…2人が仲のいい理由が未だに分からないんだけど」

 

「色々あったのよ…それとあの子が優しすぎるってのもあるかな」

 

「なるほどねぇ」

 

感謝してもしきれないわねレーテには、まぁ本人に言ったら間違いなくウザ絡みされるから言わないけど

 

まぁでもいつかは…

 

「ミトちゃーん、次はなにすればいい?」

 

「今は特にないわ、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

そんなこんな、今日も今日とてお店を開店しますかね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何も起きることなく昼を過ぎた、相変わらずレーテは頼んでない接客までやってくれるし。お人好しもここまで来ると尊敬するわね、まぁ私も接客は苦手だしその点では助かるんだけど

 

「にゃっすー、ミーちゃんとレーちゃんリズッち」

 

「いらっしゃいアルゴさん」

 

「いらっしゃい」

 

「やほーアルゴさん」

 

「あいよー、ここ座っていいカ?ミーちゃん」

 

「ご自由に」

 

別に今はお客さんもいないしね

 

武器防具を扱う店の性質上、繁盛するタイミングはプレイヤーが活動し始める朝方と宿に帰ってくる夕方。辛うじて閉店間際に駆け込みで来る夜狩り勢もたまにいるけど、それも多いってわけじゃない。そして今は真昼間、もちろんお客さんはおろか店のある前の通りにはほとんどプレイヤーもいないし

 

「それで、わざわざ来たってことは何か収穫があったってこと?」

 

「ま、そんなとこダナ。今平気か?」

 

「まぁ人もいないし…レーテ、ちょっと間店番よろしく。私たちは裏にいるから」

 

「んー、分かったよー」

 

裏なんて言い方したけど鍵もかけられない扉ひとつ挟んだ先の作業部屋のことなんだけどね。なにか秘密の扉があるわけでも隠し通路がある訳でもない

 

というかSAOにそういうのってあるのかしら、一般宅ならまだしも大規模ギルド用のホームともなればレイド戦用にそういうのがあってもおかしくない気がするけど、あるなら1回は見てみたいものね

 

「…で、あの言い方をしたってことはあれ件なんでしょ?」

 

「そういうこった、まぁ相変わらず砂粒みたいな情報だけどナ」

 

「いいのよ、塵も積もればなんとやらよ。さ、お茶を用意するから話して頂戴」

 

「んーとなぁ」

 

それからアルゴが話してくれたことは、本当に砂粒並に些細な情報だった。もっともほとんど外に情報が出てこない奴らの情報を安全策のみで仕入れるとなればおのずと手に入る情報は表面的なものにはなるわけで

 

名前はおろか、あれ以来どこで集まって話し合ってるかすら情報として落ちてくることはなくなった。今回の情報だって探してる奴らの特徴を腕利きのプレイヤーに流して得た目撃情報程度

 

もちろん相手もここまでしっぽを掴めない連中なわけで、背格好や装備だって日々変えてるはず。今回の情報だってどこまで当てになるか

 

「…ほんと、難しい仕事頼んでごめんなさい」

 

「謝らなくていいんだヨ、オイラもミーちゃんのためにやってるんだからナ」

 

「そう…じゃあ、ありがとう」

 

「おう!どういたしまして!」

 

そう言いながら微笑むアルゴ、普段は飄々とした笑顔とはまた違う実に女の子らしい笑顔。ほんと、いつもそうならいいんだけど。いいや、そうなる未来を私が守れるようにならないと…

 

「それにしても…この徹底ぶりは気味が悪いわね」

 

「…わざわざこの世界で人殺しを企むような連中だしナ、しかも最近ではMPKの被害にあったって報告も増えてる…ほんと、虫唾が走る」

 

「まったくね、ただそれを理由にあいつらに手を掛けるのはあいつらと同じレベルに堕ちたことになる。私の二の舞にならないように…」

 

「だからあれはミーちゃんの責任じゃ…」

 

「だとしてもよ、責任はなくても事実は私があいつを殺した。これは揺るぎのないこと…だからこそ私がやらなきゃいけないの」

 

私があの男を殺したのは紛れもない事実、だからこそ私はあいつらに関することにケリをつける。これが私の…本当の覚悟

 

アスナやあいつがこの世界を攻略することでほかのプレイヤーを救おうとするのであれば…私は、この世界におけるありとあらゆる脅威を減らすことで誰かを助ける…もしそう出来たら、いいなって思う

 

「…だからお願い、もう少しだけ手伝って」

 

「言われてもなぁ…」

 

「安心して誰も死なないから、あそこを利用するのよ」

 

「…監獄エリアか?」

 

「そう、少し手間ではあるけど回廊結晶の出口をあそこにすれば」

 

「こっちは手を汚さず無力化出来る…ってわけカ」

 

「まぁ試したことないからあの牢獄の中に回廊を作れるか分からないけど」

 

「安心しなそれなら既に調査済みダヨ。その辺は問題ない」

 

「そう…よかった」

 

正直この考えがハズレだったらどうしようもなかった…

 

「まぁでも、ほとんどのメンバーは顔もネームも不明、唯一分かってるあの男と女も所在を突き止められない以上は。何も出来ないんだけど」

 

「何も起きないに越したことはない…ダロ?」

 

「…そうね」

 

何も起きない…分かってる、私もアルゴも。そんなことはないって…あんな自己顕示欲丸出しの男が何もせず終わるはずがない、それにあの女のあの時のセリフもそうだ…絶対なにかが起きる

 

そんな嫌な予感がする、ものすごく嫌な予感

 

「…まぁお金は貰ってるしその情報をどう使うかはミーちゃん次第ダ。情報屋としてはナ」

 

「そう「ただ」」

 

「…私本人としては、ミーちゃんには何もして欲しくない…危険なことはしないで欲しい」

 

「アルゴ…」

 

多分私もアルゴの立場になったら同じことを言うと思う。私だって誰も失いたくない…私がそう思うってことはきっとアルゴもそう思ってる、はず

 

自分以外の人間のことなんて何も分からない、今も昔もそうだ。そしてこれから先もわかることは無いと思う…でも想像することは出来る、例えそれが間違ってるかもしれないけど、それがそれこそが人を理解するってことだと思うから

 

「…分かった、できる限り危ないことはナシ。それでいい?」

 

「…それならまぁ、納得してヤル」

 

「さ、そろそろ向こうに戻りましょ。あの子にかなり店任せちゃってるし」

 

「そーだな…なぁミーちゃん」

 

「ん?どうしたの?あ、お金ね。忘れてた」

 

「あーその事なんだけど…今度ご飯でも奢ってくれ。それで今日の分はまけといてやるヨ」

 

「そう、別にいいけど…って、ちょっと!」

 

私が話してる内に「そんじゃあナ!」って言って出てってるし…まぁアルゴは攻略組でも重宝されてる貴重な情報屋だし他にも約束があったんだろうけど、そんなに走って行かないといけない予定だったのかな

 

「ミトー?アルゴさんが走って帰ったけど何かあった?」

 

「なにも?ご飯の約束したら急に走って言っちゃったのよ…」

 

「ふぅん、なるほどねぇ…」

 

意味深な表情を浮かべるリズ…なに?なんなの?

 

「とにかく、そろそろ夕方だし店の方に戻るわよ」

 

「そうね…それにしてもアルゴが」

 

「だからなんなのよその笑顔は、防御力でも下げる気?」

 

「誰が不敵な笑みよ…まぁなに、ミトも罪な女だなぁってね」

 

「全くわけが分からないんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことだから、明日以降は午後から店閉めてレベリングしつつ素材を集めましょう」

 

「わかったわよ、戦闘の方面に関しては私はからっきしだし全部任せるわよ。もちろん自分の命は自分で守るけど」

 

「そうして…レーテはどうする?」

 

「もちろんついてくよ!ミトちゃんあるところに私ありだよ!」

 

「分かった…じゃあまた明日」

 

「うん!」

「また明日ね!」

 

ほんと…なんであんなに元気なのかしらねあの2人は。同じ人間とは思えないんだけど…いい意味で

 

さてと、まだ5時半よね…体力も残ってるし少しだけ私もレベリングしておこうかな。少しでもあのふたりを守れる力を付けておかないとね

 

「…ん?」

 

あの背格好に髪の色、それに片手剣…キリトよね、あれ。この前より結構やつれてるけど…大丈夫なのあれ。あんな虚ろな状態で圏外に出たらろくな目に合わない気がするんだけど

 

いやまぁ私も一時期…約2回ほどそんなことあったから人のことはあんまり言えないけど。それにあいつの実力なら放っておいてもなにも起きない…あー、あんな状態で戦ってたからあんなに防具がボロボロだったのね。納得納得

 

さてさっさと私もレベル上げを…いわでも、もしもあいつにもしもの事があったらきっとアスナは…

 

「…はぁぁぁぁ」

 

久しぶりにこんな大きなため息吐いた気がする。でも仕方ない、これからすることはアスナのためであって決してあいつのためじゃない。ツンデレとかそんなものじゃない、純然たるアスナに対するささやかな恩返しだから

 

そんな言い訳を頭の中で繰り広げながらあいつの後ろをつけておよそ30分、森林エリアに入って多少隠密もしやすくなったけど。やっぱりこういうコソコソしたのは苦手なのよね、ここはいっその事さっさと声を掛けて

 

「そこの人、いい加減出てきたらどうだ?街からずっと俺の事をつけてたんだろ」

 

そんなこと考えてたらバレたし…まぁもう隠れる必要もないし素直に出ていこうかな

 

「はぁ、久しぶりねキリト」

 

「…ミト?」

 

「そうよ、1週間ぶりね。防具の調子はどう?」

 

「あぁ、修理バフもいい感じで助かってる…ありがとな」

 

「そう…1つ聞いていい?」

 

「なんだ…?」

 

「あの日のこと…忘れられるとしたらどうする?」

 

「え?」

 

唐突の質問だし戸惑うのは当然よね…呆気にとられた表情に一瞬なったけどすぐにさっきまでの暗く後悔に溢れた表情に戻った。重症ね

 

「私たまに思うのよ…あの日みんなのことを守れてればって。もっと強く注意してればって…何度も思った、夢にも見た、辛いし悲しいだけの記憶。それならいっそ忘れた方が…」

 

「ダメだ!!そんなの絶対!!」

 

「…うん、そうよね。私もそう思う…私たちは彼ら彼女らの死を見届けた人として、それを防げなかった人として永遠に記憶しなければならない。どれだけ辛くてもどれだけ苦しくても何年何十年経っても…機会がある限りあの日のことを思い出し続けなきょ行けないのよ。その責任が私たちにはあるのよ」

 

「あぁ…そうだな」

 

「でも、でもねキリト…立ち止まっていい理由にはならないのよ。そのことを理由に停滞してちゃ」

 

「っ…!」

 

私も人のことを言える立場ではないかもしれない。この世界に来てからも、遡ればもっと前から私は停滞し続けきた。でも私は教えてもらった、止まるのではなく進むことこそが本当の償いであり過去に対する向き合い方だって

 

だから今度は、私が教える番だ

 

「悲しむのも後悔するのも、何も間違っちゃいない。でもそれだけじゃ決してあの子たち…サチ達は喜ばないわよ」

 

「っ…それは」

 

「何かを背負うのも捨てるのも自由、別にその取捨選択に口出しするつもりもないしはっきりいってどうでもいい。でもね、今生きている人の。アスナや他の人の想いを捨てるのは…間違ってる」

 

ははっ、本当に私が言えた立場じゃないわね。アスナをはじめレーテやアルゴを悲しませ続けた私がこんなこと言うなんて、滑稽もいいところね

 

でも言わなきゃいけない、それがアスナのためにもなるし。自分への戒めにもなるなら尚更

 

「こんなふうに言ってる私だって何度だって間違えてきた、むしろこの世界にいる間のほとんどは間違えた選択をし続けてる…それでも今はこうして全てを背負って、前を向けてる」

 

アスナを悲しませ、サチたちを守れず、人を殺めたこんな私でも前を向く資格はあるとみんなが教えてくれた。それならこいつにだって、その資格はある

 

「…決して忘れて進めとは言わない、全ての期待に応えろなんて無理難題も言わない。でもね、過去っていうのはいつまで経っても変わらない…永遠についてまわる呪いなのよ。それと向き合い戦い続けなきゃいけないのよ私達は、過去を背負うものとして」

 

「ミト…」

 

「ごめんなさい…偉そうに説教しちゃって。とにかく私が言いたいのは前と同じ、アスナを悲しませないで。それだけ…じゃあ私行くから」

 

「…あぁ、分かった」

 

ほんと、何偉そうに言ってるんだか。ちょっと先に進んだだけで長々と語れる立場じゃないでしょ私はさ…それなのになんでこんなこと言ってるんだか

 

「ミト…」

 

「?なによ」

 

「…少し気が晴れた。ありがとな」

 

「そう、ならよかった」

 

お礼を言われる筋合いなんてない…その言葉を言う暇があるならさっさとアスナに会って不安を解消してあげて欲しいんだけど。今のこいつにそんなこと言ってもより重荷になるだけだろうしさっさと街に戻りましょ、今からここでレベル上げするのもなんか気まずいし

 

どう生きればいいかなんて私も分からない。あぁは言ったけど私も自分が進むべき道を模索し続けてる、誰も悲しませず辛い思いもさせない方法があるならそれを選択するに決まってる。でも世の中はそんな簡単に上手くいかない

 

私が上手くいくってことはどこかで誰かが損をしているってこと。鏡写しのように何かが起きればその反対のこともどこかで起きる、避けようのない世界のルール。そんな人生をあと何十年も続けなきゃいけないと思うと気が滅入って仕方ない

 

それでも進むのなら私はきっと…もっとも多数が幸福になる方法を選ぶんだろうな

 

10月6日…ちょうどこの世界に来て11ヶ月になる時にようやく私は、この世界での生き方をなんとなく掴めた気がした

 

 

 

 









全人類ガールズバンドクライを見て




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