この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました   作:柴野いずみ

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15:農民たちとの交流

「結局バレちゃったね〜。ノーマちゃんってば人気者で羨ましいっ!」

 

「笑い事じゃありませんよ。嫁いで来たばかりの新妻が妻としての仕事をすっぽかして遊んでいるなんて……。ガイダー卿に叱られてしまいます」

 

「別に大丈夫だって、うちは。そうじゃなきゃあたしがそんなに自由にできるわけないでしょ? まあ、領民たちからは多少怪しまれるとは思うけどね」

 

「もしも信用を得られなかったらどうしましょう……」

 

「まあ、それもそこまで心配することないと思うよ? 一度交流しちゃえば、みんな気さくな人たちだから心を許してくれるってば」

 

 馬小屋での姿を発見された後、言い訳に努めたものの、さすがに隠し切れずにノーマがガイダー辺境伯領に嫁いで来た次期辺境伯夫人であることが公になってしまいちょっとした騒ぎになったりした。

 馬小屋なら気兼ねなく過ごせると油断していた上、バレないだろうとたかを括っていた自分が馬鹿だったとノーマは反省する。何せ格好は商家の娘を装っていたし騙せるだろうと思っていたのだ。しかしなんと馬車で領地に入って来るノーマの姿を見た者が複数いて、バレてしまったというわけである。

 

 そんなわけで嵐のような質問攻めでヘトヘトになったノーマだが、正体を知られてしまってはこのまますごすごと帰るわけにもいかない。

 そして結局、ネリーに勧められるままに領民たちと交流することになった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「でもさすがに交流というのがこんな重労働とは思いませんでした……!」

 

 交流というのは話をして回る程度のものだろうと思い込んでいたノーマが甘かった。甘すぎた。

 プレンディス子爵家でも領民との交流――領地の視察というのがあり、もちろんノーマも行ったことが何度もあった。しかしその時は領民の不満の声などを聞いたりする程度でここまでのことはやらなかったというのに。田舎はここまできついのかと改めて思わされた。

 

 現在ノーマは農民たちに混じって畑仕事に勤しんでいる。

 土をほじくり、水をやり……。見るのさえ初めてなのに、それを実際泥に手を汚しながら行うのである。かなりきつい。

 しかもそれを周りの農民たちやネリーは平気な顔でやっているのだから自分が情けなくなってしまう。特に自分より幼い女の子の姿もあることには驚いた。

 

「皆さん普段からこんなことを?」

 

「はい。嫁いでくる貴族のお嬢さんは皆驚かれるのですが、ここに住むモンとしてはこれが普通ですよ」

 

 作業が一段落した時、農民の一人に尋ねてみるとそんな答えが返って来た。

 ノーマもこれからこの土地で生きていく以上、こういう暮らしにも慣れる必要があるのだろう。

 

(せっかくネリーに用意してもらった服はすっかり汚れてしまいましたが、それでも畑仕事は悪くないですね。ただの貧乏子爵令嬢でいた頃よりはずっと楽しいかも)

 

 ノーマはふとそんな風にぼんやりと思う。

 その時ちょうど領民たちに呼ばれ、再び畑仕事をするべく立ち上がったのだった。

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