この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました   作:柴野いずみ

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35:王太子殿下は女好き※王太子チャームside

 チャーム王太子のことを一言で表すとすれば、女たらしという言葉がよく似合うだろう。

 息を吸うように女性を口説く。それが彼の生き様であり、彼の毒牙にかかった貴族女性は今まで数知れない。

 

 本来王太子にはその地位に相応しい婚約者が選ばれるものだが、彼にそれがいないのは、十三歳の時に浮気したために婚約者だった公爵令嬢と婚約解消したからである。

 それから伯爵令嬢や侯爵令嬢、果ては男爵令嬢など、何度も新しい婚約者が選ばれたが彼は三日もすると彼女らに飽き、新しい女性を選んで行った。

 

 彼の魔の手に落ちなかったのはメルグリホ王女ただ一人。

 彼女はある日チャームに襲われ、しかしそれを乱暴な方法で撃退したのだ。それ以来二人の中は険悪である。

 

 ちなみに、この国に影――王族専用の監視員などは存在しないので王族とて護衛騎士のいない自室などでは自分の身は自分で守るしかない。

 

 

 現在チャームが狙っているのは、第二王女ギャデッテの元婚約者になった人物の妻、ノーマ・ガイダー。

 あの祝賀会の時、ギャデッテに言い返している姿はなかなか見どころがあった。たまには自分に従順でない女性を抱くのも悪くない、と彼は思ったのだ。

 おまけに彼女はギャデッテが嫌っている女だ。自分のものにして監禁でもしてしまえば彼女から喜ばれることは間違いない。チャームの本命は実妹のギャデッテなのである。今は嫌悪感を抱かれているようなので早いところ好意を植え付けるためにノーマは有用だった。

 

 ということで彼は、早速計画を開始したのである。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ちょうどメルグリホ王女がお茶会を開いてノーマを招くというので、その機会に乗じた。

 日程などはメルグリホの侍女から簡単に聞き出すことができた。結局人間、忠誠心より金と体なのである。

 

 ――そうしてやって来た茶会の会場にて。

 

(見目は良くないが、まあいいだろう。別に醜女というわけでもないしな。一夜の使い潰しだと思えば及第点だ)

 

 内心でそんな下品なことを考えているとは悟られない王子様スマイルで近づく。

 

「ああ、これはこれは可愛いお嬢さんだ。人嫌いな第一王女がお茶会を開くなんて珍しいこともあるもんだと思って来てみたが、まさかこんなお嬢さんがいるとはね。驚きだよ」

 

 無論知っているからこそ近づいたのだが、そんなのは一切悟らせはしない。

 だがメルグリホにはすぐにわかったようで、刺すような目で睨んできた。

 

「お兄様、一体何のご用事ですの? わたくし、今このかたとお茶会の最中なのですけれど」

 

 見た目だけはいいくせにこの女はどうも好かない。

 でも後で牢獄に閉じ込めた後、たっぷり虐めてやるつもりだからその分許してやるとしよう。

 

「わかっているよ。だからこそ声をかけたんじゃないか。馬鹿だな」

 

 そうしてメルグリホと悪意をぶつけ合っていると、ノーマの方から話しかけて来た。

 

「ええと……王国の若き獅子、王太子チャーム殿下にご挨拶申し上げます。ガイダー辺境伯長男ハンス・ガイダーの妻、ノーマ・ガイダーでございます」

 

「ご丁寧にどうもありがとう。君は美しいね」

 

「お褒めに預かり光栄でございます」

 

 それから勢いでノーマを遊びに誘ったが、さすが彼女は簡単には誘いに乗って来ない。

 令嬢の半数はチャームが微笑むだけで言いなりになるし、夫人でも大抵は誘えばついて来るのだが、やはりノーマは媚びる女ではないと見える。

 これは面白い。改めてそう思った。

 

「そうか。それは残念だ。まあ君が嫌がっても、無理矢理連れて行くまでだけどね?」

 

 金で雇った適当な護衛騎士を城の庭園に呼びつけ、ノーマたちが声を上げる間もなく押さえつける。

 もちろんメルグリホも一緒に捕獲させた。思い通りにならない女たちがあっさりと捕らえられるその光景はなんとも楽しいものだった。

 

「何をなさいますのお兄様! 卑怯ですわよ!」

「おやめください。そうだ虫除け! これが虫除けです。悪い虫はどこかに行ってくださいっ」

 

 メルグリホが叫び、ノーマが何やら指輪を見せびらかしてくる。

 それはガイダー辺境伯の名前が彫られている。彼女の身にもし何かあったら許さないというガイダー辺境伯令息の意思表示だろう。

 だがいくらそんなことをしても全くの無意味だ。だってもうすぐ辺境伯家はチャーム自身の手で潰してやるのだから――。

 

「ギャデを傷つけた罪、軽いと思うなよ」

 

 城の地下牢へ連れて行かれる二人の少女を見送りながら、チャームは意地悪く口角を吊り上げたのだった。

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