箱を持ち帰ったその夜_________
私は戦闘の疲れで風呂に入ったあとすぐにベッドにダイブしてそのまま寝ていた
目を閉じて意識をなくし、寝ようとしたが、ふと光が差し込み、私は思わず瞳を開く
海音「あれ..........?私、確か寝てて...........えっ..........?」
ふと辺りを見回していると、そこは辺り一面鎧を着けた男達が倒れており、地面には刀や槍、旗が無惨に突き刺さっていて、まるで地獄絵図と言うものをそのまま具現化したような凄惨な光景だった
「な、何.....これっ......なんで「うわぁぁぁぁっ!!」!?」
と悲鳴が聞こえ、思わず振り向いた私は思わず
海音「ひっ.........!?」
と尻餅をついてしまう、黒い着物の上に赤色の鎧を着た男が斬りかかってきた敵を袈裟懸けに斬り伏せたからだ
敵は力尽きたように倒れ、赤い鎧を身に纏った男はその屍を見下ろす
その男の瞳は、獣のように鋭く冷たく、赤色に染まっていた
そして、その男は視線の先を私に向けた
そして私の瞳はその双眸から目を逸らせず、そのまま魅入られるように_______________
翌日 寮室(一人)_______________
海音「うわぁぁぁぁああっ!!」
私は絶叫と共に目を覚ます
海音(よ、よかった.........夢か.........)
身体から冷や汗を流し、あの惨たらしい光景が夢の中であったことに一先ず安堵する
海音(結局持って帰っちゃったんだったな...............)
私は昨日机に置いた漆塗りの箱を一瞥した
海音(ついなんか光ってたから持ち帰ったとはいえ.......やっぱり流石に神社に返すべきかな?いやでもそもそもあんなところに不自然に置かれていたし.........)
私は神社から持ち帰ったそれをどうするかについて悩んでいた
海音(開けるだけ..........開けるだけならいいよね?)
私は恐る恐る、漆塗りの箱を開く
海音「!!!?」
蓋を開けた私は思わず目を見開き、驚きで上げそうになった声を圧し殺した
そこには、颯馬くんが着けてたドライバーの形をした石があったからだ
海音「これって............」
私はそっとその石に手を伸ばし、ゆっくりとそれを観察する
真ん中には、猫のような仮面の紋章が彫られていており、彫刻にしても良くできすぎた造形をしている
海音(でもこれ石にだし........颯馬くんが持ってるのは確か黒くて真ん中にも緑色の何かが嵌められてたような..........)
そう思った刹那____________
カッ!!
海音「うわっ!!な、何!?」
その石がピカーッと光り、それに思わず手で目を覆う
私は堪らず目を瞑るが、眩しい光が収まった後、目を開くが、特に何も起きていなかった
海音「なんだったの今の...........?」
私は思わずそう呟く
??「知りたいか?.........俺が何者か」
海音「えっ..................」
私は突然何処からか聞こえた謎男の人の声に戸惑う、すると石から赤黒い煙が吹き出て吹き出て、暫くした後雲散霧消する
海音「だ、誰........!?もしかして........ゆゆゆゆ幽霊!?そ、それとも人殺しっ!?」
私は夢で見た敵を斬り殺した男かも、と思ってしまい、そう叫ぶ
??「.............そうだな。その二つともあながち間違いじゃねぇよ。確かに武士として人は殺したし、今の俺はこの世の理から炙れた亡霊だ」
海音「や、やっぱり..........!」
私の予想は確信へと変わり、あまり恐怖で縮こまる
??「だがな、決して自分の欲望を満たすために殺したことはただ一度の戦を除いて一度もない。だから今のお前も殺すつもりはない、まぁ殺すつもりがあっても霊体化してるから手は出せねぇし」
海音「たった一度の戦............?それって........」
??「おっと話が逸れたな。お前がその箱を見つけたのか」
海音「う、うん.......そうだよ、ここから少し距離がある森の中の神社で」
??「あぁー...........お前ほんと好き勝手やってたんだな。俺がこうなるであろうことを前提として。呆れ通り越して最早笑えてくるわ」
海音「えぇーっと..........何のこと?」
声の言葉に身に覚えがなく、私は困惑する
??「あぁ、悪いお前のことじゃねぇ。こっちの話だ」
海音「は、はぁ............」
??「ところでな、そいつは俺と契約することで仕える代物だ」
海音「えっ!そうなの!?じゃあ颯馬くんが使ってたのって凪ちゃんと契約したから?」
??「そいつら二人のことは知らんが、使えてるってことならそう言うことだろうよ」
海音「そっか................」
??「お前がそれを拾った以上、お前にはそれを持つ資格がある」
海音「じゃあ、私と契約し「断る」なんでぇ!?」
契約を申し込もうとした私の言葉を遮って拒絶した声に私は思わずずっこけてしまう
??「お前に拾われたとはいえ、俺はお前がどういう人間か知らない。ただ拾われただけで契約するというのも些か道理に沿わないだろ?」
海音「それは確かにそうだけど........それだったら君も一緒じゃない」
??「それも確かにそうだ。だが今さっきの話した時に結構俺の人となりは話したと思うが」
海音「人となり.............」
海音は声との会話を遡り、思い出して整理してみる
海音(この声は武士かつこの世の理から炙れた亡霊で、理由がない限りは人を殺さないし.......あとちゃんと律儀に説明してくれる........ほんとだ。確かに要所要所で自分をさらけ出してる)
海音は声が思っていた以上に自分のことを話していたことに気づく
海音「ごめんね、自分について確かにちゃんと律儀に話してたよ」
??「だろ?けど律儀ってのは俺に対するお前の見解か?」
海音「それ以外に何があるの?」
??「へぇ..............お前、思ってたよりも人のことを見ているんだな」
海音「えっ?まぁ、それは.......色んな人間を見てきたしね」
??「深くは聞かないで置く、そこから先は踏み込めないお前だけの領域みたいだしな。そこでだ、俺がお前という人の本質を見極めるために課題をやろう」
海音「課題?なんてまた唐突に.......それは何?」
??「...........普通に生活しろ」
海音「えっ?それだけ?」
私は声から放たれた課題が思いの外シンプルなことに拍子抜けする
??「その面はあれ、思ってたよりも簡単じゃない?って面だな。ただまぁ、縛りは.........強いて言うなら取り繕うな、だ。取り繕われたら」
海音「別に取り繕わないよ、取り繕ったところで八方美人とかそんな感じな人って思って切り捨てるんでしょ?」
私は声の言葉を遮って、恐らく彼が考えているであろうことを看破する
??「そうだな。という訳でお前という人間を見させてもらうぜ。じゃあな」
そう言うと声は響かなくなり、寮には私一人が取り残された
海音「.................なんか凄いパンドラの箱開けちゃった気が........」
私はこの箱を開けたことに少し後悔の念を抱きかけたが、
海音(いや、過ぎたことはしょうがない!普通に過ごせばどうにかなるはず!)
と気を持ち直すことにした
海音(それじゃあ、まずは授業に行かないとね)
そう思い、CHARMが収納されているケースと、教材が入った鞄を持ち、寮室から出て、一日が始まった
その頃、和風喫茶「草凪」では_________
颯馬「?............なんだ、寮の方から気配が.........」
颯馬が机の上を机拭きで掃除している時、ふと何かの気配が漂うのを感じる
凪「颯馬、どうかしましたか?」
厨房から出てきた凪がスポンジを片手に颯馬に話し掛けてくる
颯馬「...............いや、後で話す。今は店の掃除を続けよう」
凪「分かりました。後で聞かせてください、前にも言いましたが抱え込むのはなしですよ?」
颯馬「相談くらいはちゃんとするさ、じゃないとまた凪に説教されるしな」
凪「またって、私がいつも説教してるみたいじゃないですか!」
颯馬「ごめんごめん冗談だから飛びつくの止めろ首が絞まる.........!」
凪は後ろから颯馬に飛び掛かって抱きつき、颯馬の首がギリギリと絞められるのであった
一週間後__________________
今は十分休憩中であり、私は次の授業を受けに訓練場に向かっている
教室を歩いていると、秋日が颯馬を連れて校長室に向かっていた
颯馬「........................」
リリィA「あっ、秋日様またあの人連れてる......」
リリィB「秋日様が急に神庭に連れてきて特別用務員としてここにいるっぽいけど.......」
リリィC「顔はいいけど人相悪くて嫌な感じよね-.........」
リリィA「あの人狸の仮面の戦士に変身する男らしいわよ...........」
リリィC「秋日様何のつもりであの人連れてきたのかしら」
秋日様達が通り過ぎて小声で聞こえないくらいの距離になった後にヒソヒソと颯馬くんの悪口を話している
海音(颯馬くん..........リリィの子達に白い目で見られてるんだな........)
そう思いつつも私はその横を通り過ぎて次の授業を行う場所である訓練場に向かう
そして
教師「そこ、何をしてるんです。次の授業に遅れますよ」
リリィ達「は、はい!」
颯馬の陰口を言っていたリリィ達も教師に促されて授業をしにそれぞれの教室に向かう
ちなみに_______________
??「颯馬..........あの謎の霊気、微かに海音さんから漏れ出ていました」
颯馬「やっぱりか...........流石だね凪。凪は気配察知能力が高いからこれで確証がついた」
颯馬と凪は念話でコミュニケーションを取る
凪「ふふっ、ありがとうございます。それで、どうしますか?」
颯馬「うーん..............あいつに直接聞くしかないな」
凪「それしか方法はないですね........」
颯馬「あいつに憑いてるのが悪霊の類いか式神かは知らんがほっとく訳にはいかない」
凪「ええ、その通りです。憑いてる式神が必ずしも私のような善良な式神とは限りませんから」
颯馬「自分でそれ言うか.........確かにそうだけど」
_____________________
三時間後 神庭女子藝術高校 中庭_________
授業を終えた私は、荷物を纏めて神庭女の校舎の外に出る
海音(今日の授業も終わったし、少し外の風を浴びてから帰ろう)
私は中庭に設置されているベンチに座る
??「今の民ってのは皆あんな座学や練兵のようなことをするのか」
とまた声が聞こえてくる
海音「そうだよ、今の時代ヒュージっていう化け物がいてね、ここは私達のようなCHARMっていう武器を扱える少女達が集められる育成機関なんだよ」
??「そうなのか.........てっきりあの狸親父殿が安寧の世を造り上げたと思ったんだが.......案外、四百年以上経ったあとでも突然変異って起きるもんだな」
海音「ん?なんか言った?」
??「いや別に、お前の言う人殺しのちょっとした戯れ言だ」
海音「..............気に障ったならごめん」
??「何、嫌味として言った訳じゃない。気にすんな」
海音「......そういえばさ、君はどんな時代を生きてたの?」
??「時代か...........当時で言う戦国乱世の世、とでも言っておくか」
海音「えっ.............!?そうだったんだ.........(だとしたらあの夢の男がこの声の人ってこと........?)」
??「ん、どうした?そんな辛気臭い面して」
海音「!い、いや別に「あっ、いた!おい!」..........!」
声と話をしていると、前から声を掛けられてその声の主を見ると、そこには命の恩人である颯馬くんがいた
海音「そ、颯馬くん!?珍しいねそっちから声を掛けてくるなんて」
颯馬「まぁな.......なぁ、お前に冷たく当たってる手前自分でも烏滸がましいってのは分かってるんだがお前に聞きたいことがある」
海音「う、うん。何が聞きたいの?」
颯馬「.............あぁ、聞きたいのはお前から漏れ出ている霊の気配だ」
颯馬が私にとんでもない質問を投げ掛けてきた
海音「えっ............?」
なんであの声の気配を察することが出来たのか、そしてその気配の元が私だと嗅ぎつけたのか、色々な疑問が頭に錯綜して困惑していたその時、
??「へぇー、俺の気配を察するか........とするとお前は式神の類い......ではないか。そうか、お前は式神と契約しているのか」
私の身体から赤黒い煙がブワッと流れ出て、人の姿を形成する
姿は赤黒い煙に覆われているせいで姿や顔は不鮮明になっており、大雑把にしかシルエットは分からないが、少なくとも和服の姿に左肩に鎧を着けて、刀を二本差しており、赤い雷を纏っているのは分かった
颯馬「生憎と気配察知に優れている相棒がいるんでね」
海音(これが........あの声の姿......!?っていうか.......)
海音「君って実体化出来ないんじゃ?」
色々聞きたいことはあったのだが、その中でも一番気になったことを彼につっこむ
??「確かにそうだ、お前とは正式に契約を交わしてないからな。ただ俺の知り合いの力を借りて時間制限付きで実体を形成したんだよ」
海音「えっ、知り合い........?」
颯馬「お前も凪みたいな式神か.............!」
??「その凪って奴は知らねぇが、お前のその見識は合ってるぞ、多分」
颯馬「そいつに取り憑いて、何が目的だ?」
??「何がって、ただ試してるだけだ。俺の契約者に相応しい人物かどうかをな」
颯馬「.........こいつは仮面ライダーには向いてないよ。世間知らずでボンボンのお嬢様だ。第一俺と立ってる場所が違う、一度幸せを失った俺以外の人間は普通に生活して、夢を持って、自分を想ってくれる人間と結婚して幸せを歩んでいればいいんだ。俺はあいつを心から受け入れて力を得たけど、俺とは正反対のこいつまで俺と同じ世界に引き込むつもりかお前は」
颯馬は淡々とその侍に向かって話し掛ける
海音(えっ..............?)
??「それはお前の在り方だろうが。それに判断基準は俺だ、お前の意見は聞いてねぇんだ。まぁもし俺の裁定の邪魔するってんなら容赦はしねぇが?」
侍は刀を抜くと、颯馬に斬りかかってくる
颯馬「っ!」
颯馬くんは変身は間に合わないと悟ったのかあの緑色の手裏剣がついたアイテムを取り出し、両刃刀を取り出して、侍の斬擊を防ぐ
颯馬「いきなり斬りかかってくるなんて........物騒だなこいつっ!」
??「物騒も何も、俺は野蛮な時代を生きてきたもんでな!」
颯馬「そうですかそうですか、さぞかしお辛い時代だったんでしょうねっ!」
お互い後ろに下がったあと、お互い武器を二、三、四、五、と数度打ち合う
海音「さ、侍さん止めてっ!颯馬くんは関係ないでしょ!?」
私は侍を止めようと呼び掛ける
??「こいつは俺の裁定を邪魔しようとしてる。だから退ける」
颯馬「邪魔.......?説得の間違いじゃない?」
音夜「さもありなん、って奴だな。けど悪いな、これは俺とこいつが乗っかってる二人乗りの秤だ。お前が乗る場所はねーんだよ!」
颯馬「ほざけ.........!」
颯馬くんは侍の刀をいなした後、そのまま侍の傍を通り過ぎ、背後に周り一閃を入れる。が、
??「お前人間の割りに速いな.......だが俺を倒すには及ばない」
侍はもう一本差してる小刀を抜いて舞うように回転し、颯馬の刀を弾く
さらに颯馬は連撃を侍に叩き込む
武器を振るう速さは颯馬くんの方が上だが、侍は涼しい様子で軽々と颯馬くんの両刃刀をいなす
そこに、侍の背後に何かが飛んでくる
その正体は矢で、その矢は一直線に侍目掛けて飛んでいき、直撃しようとした刹那
パァンッ!!
その侍の背後の空間が歪み、そこから火縄銃だと思われる銃身がニュッと現れて火を噴き、矢は火縄銃から放たれた弾丸により木っ端微塵になる
颯馬(なっ.........凪の矢が砕けた........?こいつ、今何をした?)
??「おぉあっぶねぇ~........流石の腕だな義一。けど気づいていたなら言ってほしかったんだがな.........言わなかったら俺の反応が面白いと思った?ったくお前は.........」
颯馬「義一............?」
侍は虚空に向かって話し掛け、颯馬達は一度距離を置く
凪「驚きましたね.........私の矢を狙い撃ちにするとは」
颯馬「凪...........」
和風喫茶「草凪」で颯馬の異変を察知して、草凪の屋根から侍を狙撃した凪ちゃんが颯馬の隣に現れる
??「そいつがお前の式神の凪とやらで俺を狙撃した奴か........なるほど弓の腕なら秀靖を幾分か超えてるなこりゃ」
凪「矢を防がれたのに褒められてもあまり嬉しくありませんね.........颯馬、警戒を。彼は一騎であっても一人ではありません。気配は微細ですが彼とは違う霊気があの侍から漏れています。恐らく他にも複数人の式神擬きを率いています」
静かに、だがふてぶてしげな声をしながらも、颯馬くんに警告しながら前に立ち、弓を仕舞い腰に差している刀を取り出す
颯馬「じゃあ凪の矢を防いだのもそいつらの内の一人か.........確かに何となく影がうっすら見えるような見えないような.....つーか式神が俺達の真似事をしてるってか?そいつは驚いたな..........」
颯馬くんは目を細めて虚空を凝視している
??「おぉ、よく分かったな。こいつらは俺の家臣、まぁ仲間でな........俺の援護をしてくれるんだ」
颯馬「........つまり、俺と凪VSお前+αって訳だな」
??「そうだな、お前らは腕が達者なようだし、さっき二人で攻撃して俺は家臣の力を借りた。もう一騎討ちはここまでだ、ここからは戦を始めよう」
颯馬「..............はぁ?戦いはもう始まってるだろ?」
颯馬くんは怪訝な表情を浮かべる
??「違うな。一騎討ちはあくまで一対一の勝負、戦というのは複数対複数での勝負。つまりお前と俺の勝負は戦じゃねぇんだよ」
凪「つまり........颯馬との勝負はお遊びだったと?」
侍の言葉から颯馬くんとの勝負は遊戯である、と言われたと思った凪ちゃんは脇差を向けながら声を低くする
しかし、
??「それは断じて違う。さっきの一騎討ちは真剣に臨んだ。そこにお前が来て、俺がお前らを兵と認めたから今から戦が始まるんだ」
凪「............それは失礼しました。非礼を詫びます」
その言葉を聞いた凪ちゃんは自分の考えが至ってなかったことを悟り、侍に対する失言を謝罪する
??「おう、こっちも言葉足らずで悪かったな............さて、話はここまでだ」
颯馬&凪「..................!」
侍は刀を構え、颯馬くんと凪ちゃんもそれぞれの得物を握り締め、臨戦態勢に入る
??「さぁ、戦を.............!」
再び戦い始めようとしたその時、侍の身体がチリチリと少しずつ崩壊していく
??「時間切れか......正式に契約しないからそりゃそうなるって.........?そりゃあ俺だって........!はぁ.......そういうことだからまたな、緑風の独善者に凄腕の女弓兵」
そう言って侍はまた赤黒い煙になってまた私の身体の中に戻る
凪「............勝ち逃げ同然に消えてしまいましたね」
颯馬「だね..........クッソ、悔しい.......」
そう言いながら颯馬の心には侍が去り際に投げ掛けた言葉が刺さっていた
颯馬「独善者か..........なんか傷口抉られた気分だ」
そう言って両刃刀が手裏剣がついたアイテムに戻り、颯馬くんはそれをしまいつつボソリと漏らす
凪「だ、大丈夫ですか?颯馬...........確かに颯馬のやることが強引な時もありますが、颯馬の本質はブレていませんよ」
颯馬「凪.........ありがとう」
颯馬&凪「.........................」
颯馬くんと凪ちゃんはジーッと私の顔を見つめる
海音「.........................えっと......」
颯馬「..........取り敢えず面貸してもらうよ」
海音「えっ......颯馬くん?」
凪「はい確保」
凪ちゃんの声と同時に私は凪ちゃんにお姫様抱っこのような持ち上げられ、そして颯馬くんと凪ちゃんは走り出す
海音「ち、ちょっと!何処に連れていくのーっ!!?」
_______________________
和風喫茶「草凪」______
私は今、休業日で貸し切り状態である草凪の客席で紅茶とお菓子を出されて、座っていた
そして颯馬くん達は私と向かい合いで座る
因みに空気は結構重い、それはもう地獄の閻魔様にでも睨まれているかのような圧である
海音「あ、そう言えばさっき私聞きたいことがあるって言ってたよね?」
私はその緊張を断ち切るつもりで話に切り込む
颯馬「あぁ.........けど聞く必要がなくなった。謎の霊気の正体がお前に憑いてるって分かったからな」
海音「..........どういうこと?」
凪「先日から身に覚えのない霊気が舞っているのを感じていて、いつも海音さんの近くにいる時に異常な程にその気配が濃くなっているので、颯馬はそれで何か知ってるかも、と伺いに行きました」
海音「そ、そうだったんだ..............」
颯馬「なぁ、お前はあいつと契約はしてないんだよな?」
海音「う、うん.......あの侍さん私のことを見極めるって」
颯馬「だったら悪いことは言わない、そいつと契約するのを止めろ」
海音「えっ............」
颯馬「式神との契約ってのは生半可な思いで契約するもんじゃない。式神と契約をすると、力を得ると同時にそいつと一生向き合って過ごすことになる。俺は誰かを救うための力が欲しかったし、凪と一生を生きることになっても受け入れた上で契約を交わしたから別だが、お前にその意思はあるのか?」
海音「わ、私は...............」
ある、と言ったら正直違う。寧ろ先に暗闇があるようで怖い、というのが本音ではある
颯馬「とはいえお前はあいつの言う秤?に乗っかってる最中だから覚悟の有無は今は聞かない...............それで、あいつをいつ認識できるようになった」
海音「え、えーっと、それは.............一週間前くらい」
颯馬「一週間前.............何か拾ったりしなかったか?正直に言ってくれ」
海音「..............漆塗りの箱に入った石を拾ったよ。あの侍さんと契約したら力が解放されるっていう」
颯馬「..........凪とは違うパターンか.......」
海音「違うパターン?」
凪「それはですね、私は日の出町の惨劇という事件で颯馬がヒュージに襲われているのを見つけて、彼の本質を見て契約しました」
海音「日の出町の..........ってことは颯馬がリリィを恨んでる理由ってまさか........!」
颯馬「あぁ.........あの日俺の父さんと母さんを目の前で見殺しにされた...........普通恨むだろ、助けるべき弱い人間がいるのに手を差しのべねぇなんて。助かりはしなかったとしても.........せめて手を差し出して欲しかった.........!」
颯馬は悔しげに、そして静かに憤りを顕す
海音「.................そうだったんだ、私だって恨むと思う」
颯馬くんの過去を初めて聞き、颯馬くんがリリィを恨んでる理由が分かったのと同時に私は何とも言えない感情になる
颯馬「そうだろ?お前はどうだ?何処の出身かは知らないけど、温床でぬくぬく育って何も失ってないんだろ?だったらそういう力を持たずに平穏に過ごせばいいだろ?」
颯馬くんは突き放すように言っているが、今までキツく当たられた言葉を投げ掛けられていた私は違和感を覚えた
颯馬くんはリリィは恨んではいるが、リリィも人間であるので、割り切れずに結局人間の平穏だけでなくリリィの平穏も心の底では望んでいるのだ
海音(あんなに私にキツく当たってはいたけど颯馬くんってこんなに他人思いだったんだな..........)
海音「............そうかもね、確かに颯馬くんみたいに両親を失ってはないし、家も壊されてもない、贅沢なものに囲まれて平和に過ごしてたよ。でも...........」
颯馬「?」
海音「そこに自由はなかった.........!」
颯馬「えっ..............」
海音「親は女はこうであれー、って昭和か!って思うくらいに厳しいし、母親もそれを肯定して、彼処にいる時は毎日が退屈に満ちていた!それでリリィになってやっと親から離れられた!颯馬くんには自由がない人の気持ち分かる??」
私の言葉に颯馬くんは息を呑む
颯馬(................自由がない、か。こいつは何かを失わなかったとしても、欠けてるものがあったんだな.......)
凪(颯馬は自由があって平和を奪われた.........海音さんは平和を持っていましたが自由がなかった.........対極的な存在ですね)
颯馬くんと凪ちゃんは私の目を見て何かを思案しているが、捲し立てて息を荒くしている私には息を整えるのに夢中で気づかなかった
颯馬「.................お前は自由を手に入れにここに来たんだな」
海音「そういう颯馬くんは自分二度目の平和、そしてリリィを含む町の皆の平和を守りにここにいるんでしょ?」
颯馬「.................あぁ。あのさ、色々あったとはいえお前に当たり強かったのは悪かった」
海音「う、ううん!気にしなくて良いよ!私も生け簀かない人って思っちゃってたからごめん!」
颯馬「心の中で言ってるから俺よりかは何倍かマシだよ」
海音「.............ねぇ、颯馬くん」
颯馬「..........何?」
海音「リリィが心底嫌いって颯馬くんの気持ちは否定はしないよ。でもまず試しに私と友達になってみない?」
颯馬「..............急にまたなんだよ」
海音「ガーデン内での颯馬見たけど颯馬友達いないでしょ?外には知り合いいると思うけど」
颯馬「合ってるけど俺以外に言ったら普通にキレられるぞその物言い」
颯馬は肯定しつつも私の火の玉ストレートに苦笑を溢す
海音「そうは言っても私も友達らしい友達いないしさ、だから........私のことはリリィとしてじゃなく一人の人、友達として見てくれない?」
颯馬「.......................」
颯馬くんは黙り込んでしまう
颯馬「...................すぐには難しいと思う」
海音「!」
颯馬「けど、善処はする。俺がお前を友達だと思えるように」
海音「!じゃあこれからよろしく!颯馬!」
私はバッ、と手を前に差し出す
颯馬「おぉっと友達になった途端いきなり呼び捨てか」
海音「いいじゃん、そっちの方が距離感縮まるし」
颯馬「.......分かったよ、だったら俺も呼び捨てで呼ばせてもらう。よろしくな、海音」
颯馬は笑みを浮かべながらその手をガシッと掴み、それを見た私も笑って固く握手をする
凪(ふふっ、仲が好転したようで何よりです!..............あれ?)
凪ちゃんは微笑んでその状況を見ていたが、ふとあることに気がつく
凪(現時点では海音さんは颯馬の一番の友、そして私は颯馬の一番の式神............これ即ち微妙に私の妻としての立場が危うくなっているのでは.....!?)
と和気藹々としている二人を他所に一人凍りついていた凪ちゃんであった
神楽の上級生に対する呼び方を何にするか
-
○○様
-
〇〇先輩