歴戦シャケ狩りバイトリーダーさんの日常   作:書鳳庵カルディ

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第2話 たつじんアルバイターのキホンのキ

「という事で紹介します。俺の後輩のメジロです」

「うっス、メジロと申します。今日からお世話になるっス!」

 

 バンカラ街のとある喫茶店にて、三人でテーブルを囲む中。

 一人のタコガールが、そう言って向かいのホウズキに挨拶をした。

 チヒロの後輩、メジロである。

 

「元気がいい子だね。もう話は聞いてると思うけど、一応私からも自己紹介をしようか。クマサン商会で長らくバイトをしているイカのホウズキだ。皆からは、リーダーだとかホウズキさんだとかで呼ばれている。ずっと商会で働いている内に、いつの間にやらバイトリーダー扱いされるようになった変人だ。自分で言うのも何だけどね」

 

 ホウズキはそのように、抑揚のない声で淡々と自己紹介を行う。

 その一方で、メジロは何故か異様に興奮していた。

 

「リーダーのお話は聞いてるっス! なんでも、危険度MAXのバイトでもリーダーが指揮をとれば、驚くほど簡単にクリアできてしまうとか!」

「まさか、その時のメンバーが元より優秀だっただけだろう。まったく、君は彼女にどんな話を吹き込んだんだい?」

「大体は事実でしょう。リーダーはバイトの評価は高いのに、自己評価は低くなりがちですから、こういう機会に改善しないといけません」

 

 チヒロがそう言うと、ホウズキはむぅと唸って押し黙った。

 彼女にとっても、それは少なからず心当たりのある指摘だったのだろう。

 もっとも、その改善にはまだ時間がかかりそうだが。

 

「……まぁいい。雑談はここらへんにしておこう。これからメジロ君には、軽く座学をしてもらった後に、プライベートバイトで座学の成果を見せてもらう。一応確認するが、全オオモノシャケの種類と倒し方は把握しているね?」

「もちろんっス!」

 

 ホウズキの質問に、メジロはそう答えて元気よく頷く。

 

「では、早速座学を始めよう。これから私が教えるのは、寄せるべきオオモノシャケ、倒すべきオオモノシャケについてだ。たつじん以上のアルバイターにとっては、キホンのキと言ってもいい程に重要な知識になる」

「はいリーダー! 寄せるっていうのはどういう意味っスか?」

「詳しく説明すると、オオモノシャケをイクラコンテナの近くまで誘導する動きのことを"寄せる"と言う。海岸でオオモノシャケを倒してしまうと、コンテナまで金イクラを運ぶのが大変だから、オオモノシャケの方から寄ってもらうという動きが必要なんだ。クマサン商会からシャケ図鑑を借りてきているから、これを見ながら説明しよう」

 

 そう言うと、ホウズキはシャケ図鑑を懐から取り出し、テーブルの上で広げる。

 

「まず最初に話すのは、放置しても害が少ないためコンテナの近くまで寄せたいオオモノシャケたちだ。これには、モグラ、テッパン、ダイバーが分類される」

「こいつらは、海岸近くではあんまり倒したくないって事っスよね」

「その通りだ。もちろん、余裕がなかったり、金イクラの数が足りていたりする場合はさっさと倒してもいい」

 

 シャケ図鑑に描いてあるオオモノシャケのイラストを指しつつ、ホウズキはそう説明をする。

 クマサンの研修では習わないかもしれないが、寄せるというのは非常に重要な動きだ。

 金イクラのノルマが増えれば増えるほど、この動きが必要になってくる。

 

「次に話すのは、寄せたいが放置すると被害が発生しがちなオオモノシャケたちだ。ここには、バクダン、ヘビ、コウモリ、ナベブタが分類される。余裕があれば寄せたいが、さっさと倒しても構わない。特に、コウモリのアメフラシは撃たれると大変な事になるからね」

「判断の難しいところっスね……」

「経験が必要になる。決まった対応のないオオモノシャケたちだよ」

 

 ホウズキはそう締めくくり、続いて最後の分類の説明を始める。

 

「最後に話すのは、寄せられない上に放置すると被害が大きくなるオオモノシャケたちだ。カタパッド、タワー、テッキュウ、ハシラが分類される。ハシラは場所によっては放置してもいいが、コンテナ周りや高台に出現した場合は、やはり優先して倒すべきだろう。全アルバイターから憎まれている連中だ」

「特にテッキュウが憎まれてるっスよね」

「身長が低くて見つけずらい、放置できない上にとにかく硬いときてるからね。コイツを処理しようと海岸に近づいて、ザコシャケに囲まれてデスしたアルバイターの数は数えきれないよ。こいつらは確かに優先して倒すべき相手だけど、自分がデスしては本末転倒だという事は覚えておきたまえ」

「了解っス!」

 

 メジロがそう返事を確認したホウズキは、シャケ図鑑を懐にしまい、立ち上がって口を開いた。

 

「それでは、実戦で座学での学びが生かせるか試すとしようか。バイトの時間だ」

 

 かくして、ホウズキとメジロはクマサン商会へプライベートバイトのために向かうこととなる。

 これまで付き合ってくれたチヒロとは、ここで一旦お別れだ。

 

 メジロがこの座学でどれだけ成長できたのか、実戦で確認してみよう




・メジロ
最近地方からバンカラ街に出てきたチヒロの後輩タコガール。ヘアスタイルはポニーテール。元気ハツラツで明るい性格をしている。最近、マンホールからこちらを見てくるアヤシイ老人の事が気になっているようだ。
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