「……さて。とんだハプニングで開始が遅くなってしまったが、いよいよ今日の本題の話をさせてもらう」
「大事な話をするから少し外してくれないか」と言ってメイドが中座させられ、リゼ・千夜・シャロの三人だけになった個室でリゼがそう言った。メイドの去り際にリゼは「さっきの勝負で白熱しすぎて部屋が暑いな……、あー、この店予約した時ってそもそも一番奥の個室にして欲しいって言ってたよな? 今からでも部屋を変えてもらう訳には……」と切り出していたが、「あいにくそのお部屋は設備故障中でしてー」と断られてしまったので、部屋はそのままだ。一つ咳払いをした後にリゼがこう続ける。
「……まずは千夜の話から先にしてもらった方が話がしやすいかな」
「あら、それでいいの? じゃあ遠慮なくさせてもらうわ。……シャロちゃん、私と、青山さんと一緒にチームを組んでティッピーコンテストに参加して欲しいの」
「ティッピーコンテストに?」
一週間前、ティッピーコンテストのチケットをココアが貰ったため、ココアはいつもの七人に声をかけて「チームラビットハウス」を結成しようとした。だが、ティッピーコンテストは三人一組でチームを組んで戦うルールだったのである。必然的に四人は参加できないことになる。シャロも、抽選が行われるほど人気のあるティッピーコンテストというのがどのようなものなのかは興味があり、参加してみたい気持ちはあった。メグやマヤもそれは同じ様子ではあったのだが、最終的に話し合いの結果、ティッピーに関しての知識の深さや所有するティッピーの特性、ティッピーを扱うスキルのバランスなどを加味して、ココア・チノ・リゼの三人チームで応募することになった。なのでチケットさえ都合がつくならばあぶれた者同士でチームを組むというのは悪くないと思えたが、なぜ青山さん――?
「ほら私、最近はお仕事の関係で青山さんとよく会っていたでしょう。色々お話しているうちに話の流れで、青山さんのチームで参加しませんかって誘われていて……。青山さん、担当編集の凛さんを誘おうとしていたみたいなんだけど、凛さんはどうしても外せない仕事があったみたいで。それで私と、もう一枠は私の友達を誘って良いってことになって。真っ先に思い浮かんだのがシャロちゃんの顔だったんだけど、どうかしら?」
シャロはしばし考えた後、こう答えた。
「オーケーよ。私もチノちゃんの話とかを聞いて、結構面白そうな競技だなって思い始めてたところだったし。それにココアだけちゃっかり参加して、私は参加できないってのも悔しいじゃない。その話、乗ったわ」
「やったわ! ありがとう、シャロちゃん。さっそくココアちゃん達にもメッセージ送って教えてあげないとだわね。『シャロちゃんは今日から和菓子派よ。菓子パン派に宣戦布告するわ』……と」
「ちょ、不穏な内容のメッセージ送りつけるのやめなさいよ!」
「はは、良かったな、千夜。それじゃあ、今度は私からの話をする番だな。しかし、長くて込み入った話になるし、いったいどこから話し始めるのが良いか……」
リゼは頬を掻きながらしばらく迷っていたが、やがて決心したように話し始めた。
「シャロ、落ち着いて聞いて欲しいんだが……、実は私は警視庁の特別嘱託職員なんだ。そこにいる千夜は私の協力者だ……」
証拠のつもりで、服の目立たないところにつけている警官バッジをめくって見せる。リゼは、そもそも特別嘱託職員とは何なのかの説明から始まり、女子高生と言う表の顔を持ちながらも日々発生するティッピー犯罪の捜査をしていること、千夜にだけは自分の立場を明かし協力者になってもらっていること、今は渋谷を起点として発生している連続不正アクセス未遂事件を捜査していること等々を一気に説明した。そして、ココアがその事件の有力容疑者となっていることも――
シャロは最初のうちは目を白黒させて聞いていたが、やがてリゼの話の全体像を理解してくると、驚きよりもむしろ納得、という表情になった。