現実と並行セカイの境目ですか?   作:岸雨 三月

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7章:民法って何?量子論なら説明できるよ#2

駅前広場はティッピーコンテスト参加者で埋め尽くされていた。ざっと見て数千人はいるだろうか。周囲には交通規制が敷かれ、チケットを持たない参加者以外の人が広場に入れないようになっていた。チノは参加者は若い人が多いのかと思っていたが、周りを見回すと老若男女色んな人たちがいるので驚いた。自分たちよりも小さい中学生くらいの子も見かけるし、親子連れで参加している人や、定年後の趣味の集まりといった風のグループもいる。参加者たちの表情や服装も様々だ。高級パーツでカスタマイズされた最新モデルのティッピーを手に、ホログラム画面に作戦書と思しきものを映し出して真剣な顔で作戦の最終確認をしている「ガチ勢」らしき一団がいたと思えば、まるでハロウィンパーティーかと思うようなアニメキャラのコスプレ姿ではしゃいでいる一団もいる。たぶん初めから決勝進出は目指しておらずテレビ中継で目立つのが目的なのだろう。この日のために作ったのであろう「I♥ティッピー」などの文字入りTシャツやはっぴを着てユニフォームを統一しているチームもちらほらと見かけた。一度などは、全身黒の戦闘服にタクティカルベストとブーツを着けて、フリッツヘルメットにガスマスクまでも完備している特殊部隊風の装備の三人組とすれ違った。まさか本物の特殊部隊員ではないでしょうしこれもコスプレなのでしょうか――、チノはそう思った。その時、再び会場にアナウンスが流れ始める。

 

「会場の皆様、ティッピーコンテストにお集まりいただきありがとうございます。ただいま午前八時五十五分です。予選開始時刻五分前となりました。改めて参加者の方への注意喚起と簡単なルール説明をさせていただきます……」

 

秋葉原UDXのモニターに説明を行う大会運営委員の眼鏡の女性の顔が映し出されると、それまで騒がしかった会場はうって変わって静かになった。女性自身の姿は、UDX二階のモニター前のスペースにあって高台から参加者を見下ろす形となっていた。本日の東京の気温は三十度以上にまで上がります、水分塩分補給を小まめに行い熱中症対策をしましょう、医務室の場所はこちらです、本日は警察の要請により警備員および私服警官が会場一帯を警備しています、不審な物や人を見かけたら運営スタッフまでご一報ください――そんなお決まりの注意が終わるといよいよ競技についての説明が始まった。

 

「基本ルールについてはルールブックを読んでいただいていると思うので敢えてこの場で詳細に説明はいたしません。他人や他人のティッピーに対して直接的な危害を加える行為は禁止、この大原則は遵守してください。みなさん、この競技で頼ることが出来るのは自分のティッピーと自分の知恵だけです。今回のティッピーコンテストではみなさんにいくつかの『謎』が提示されます。一つの謎を解くと次の謎のある場所までの道のりが示されます。謎を解いていく途中ではみなさんに障害や困難が降りかかることもあるでしょう。そうした課題は、ティッピーを使って解決していってください。みなさんには最後の謎を解いてゴールまでたどり着くまでの速さを競っていただきます。ゴールに着いた順位が四位までのチームが決勝進出です!」

 

そこまで言うと運営委員の女性はチラッと時計を見た。

 

「予選開始時刻一分前です。時刻になると、この広場には大量のティッピーが放されます。まずみなさんはそのティッピーを捕まえてください。もちろん自分達のティッピーを使って、です。そのティッピーが第一の謎を持っています。当然ながら早く捕まえた参加者の方が謎に早く取り掛かれる分有利になります……」

 

「ティッピーってゆっくりふわふわ動いていますし、捕まえるのはそんなに難しくないように思いますが……」

 

そうつぶやくチノだったが隣にいるリゼは、甘い、と言った。そしてリゼが自分のティッピーに何事か小声で命令すると、ティッピーの目の光が明るくともり臨戦態勢になった。

 

「予選開始十五秒前です。……十秒。……五、四、三、二、一、スタート!!!」

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