現実と並行セカイの境目ですか?   作:岸雨 三月

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8章:この出会いと経験に100万点!(うさぎビーチver.)#3

水着勝負は四人が順番にタオルを取って水着姿を披露していき、最後にチノとシャロが講評するという流れで行うことに決まった。まずはトップバッター、千夜がタオルを取る。

 

「ふわぁ……流石千夜さん、大人な魅力に溢れてます」

「く、悔しいけれど、似合っていると言わざるを得ないわね……」

 

 千夜の着けている水着はシックな黒のビキニだった。腰には大きなリボンつきのパレオを巻いているがそれまでも黒一色で統一されている。シンプルなデザインと色だけに着けている側の内面的な魅力が試される。普通だったら女子高生が着けていたら「背伸びしすぎ」となるところだが、若くしてベンチャー企業の女社長という地位にある千夜の貫禄がそうさせているのだろうか、全く違和感なく着こなしていた。チノもシャロもこれは早くも勝負あったかもしれない、と思い始めていたが、続く青山の水着姿も中々にレベルが高かった。

 

「麗しい乙女の皆さんに混ざって私のような者が水着になるのは、とても気恥ずかしさがあるのですが……」

「いえ、これはこれで千夜さんとは違った大人の余裕のようなものを感じます」

 

 顔を赤らめながらタオルを取った青山の着けているのはこちらもシンプルなデザインの三角ビキニだが、色は千夜とは対照的な純白だ。薄い茶髪に青い目と色白の肌を持つ青山が着ると、色素の薄い色彩で全身が統一されて儚げな雰囲気を醸し出すが、プロポーションは抜群なのがギャップとして一種のアクセントになっていた。同じ恵まれたプロポーションでも黒髪に黒尽くしで存在感をアピールしている千夜とはそういった意味でも対照的だ。ある意味で黒よりも素材の良さが試されるが、こちらの着こなしも全く違和感がない。

 

「次は私だけど……言ったけれど私は水着のデザインとかどれが良いとか分からないからな!?」

「リゼ先輩……これは大人なイメージではないですけれど、とっても可愛らしいです!」

 

 リゼの水着は、布面積低めで肉体美をアピールしていた前の二人とはまた違った路線で、体のラインを隠すようなワンピースタイプのものだった。フリフリのフリルがたっぷりとついていてふわふわ、白を基調に青の花柄模様で女の子らしい可愛らしさを全面に出したデザインになっている。内面は凛々しい印象を与えるリゼが着るとギャップでより可愛らしさが際立って見える。だが、チノは思わずツッコミを口にしてしまった。

 

「リゼさん、競技中に誰か海に落ちたときに助けるのに使うと言っていましたが、このフリフリはむしろ動きにくいのでは……」

「やめろ! それ以上は突っ込むな!」

 

 リゼは赤面してまたタオルで体を隠してしまった。千夜は「あら、本当に可愛い水着なのにもったいないじゃない、もっとよく見せて♪」とタオルを剥ぎ取りにかかるが、待ちきれないといった様子でうずうずしているココアが割って入って来たので結果的にリゼは追及を免れることになった。

 

「じゃーん! ではいよいよトリを務めますこのココアお姉ちゃんの水着、公開します!」

 

 いったいココアはどんな水着を持ってきたのか。荷造りのときに一度見ているチノ以外の四人は興味津々で見守る。タオルの下から現れたのは――

 

「ス、スクール水着!?」

「スクール水着じゃあないよ。まあデザインは参考にしてはいるけど。水に浮きやすい素材を使っているからまるで浮き輪をつけたまま海に入っているような感覚が味わえる、ココアオリジナル水着だよ! 既製品でも近い機能を持ったものはあるんだけど、小さい子供の泳ぎの練習用とかのサイズしかないから、いっそ自分で作って浮力をマシマシしてみました」

「……そんなものをわざわざ作るってことは、もしかしてココアさんって泳げないんですか?」

「泳げません!」

 

 えっへん、となぜか偉そうに胸を張って言うココア。だが、その瞬間。

 

「ひゃっ!」

 

 スク水の肩紐がずれて水着がめくれ落ち、ココアの豊かな胸が一瞬だが露わになってしまった。ココアは慌てて水着を付け直す。

 

「あらあら、お色気系の漫画では定番のポロリイベントですね。周りに私達以外誰もいなかったので良かったです」

「ココアちゃん、それ胸きついんじゃない? サイズが合ってないように見えるけど……」

「えー、サイズぴったりで作ったはずなんだけどなぁ。洗濯しているうちに水着が縮んだ可能性があるね。素材の選定をもう一度考え直すべきかなぁ」

 

 確かにココアが水着をつけると、胸の部分が妙にムチムチしているように見える。布地が小さくて胸の半分以上がはみ出して見えるので、エロティックという意味だったらココアが一番かもしれない。しかし本当に水着が縮んだのか? チノは一つの可能性に思い至った。

 

「ココアさん、その水着を作ったのって、いつのことですか?」

「? 一年前だけれど……?」

(や、やはり……成長しているッ……!)

 

 チノはココアの胸と見比べながら、自分の胸をぺたぺたと触ってみる。ここ一年で触ったときの感触に変化は無い。成長が止まっているような気がする。そういえば今回水着になっている四人はみんな恵まれたプロポーションを持っている。それに比べて自分はどうだろう。これが格差社会、持つ者と持たざる者の差だというのか。そんなことを思うチノだった。

 

「シャロさん、シャロさんだけは私を裏切らないですよね。ともに一年後までには成長して、私たち『持たざる者同盟』の秘めたポテンシャルをココアさんに見せつけてやりましょう」

「よく分からないけど、言いたいことは何となく分かったわ……チノちゃん、私達の不確定な未来に期待しましょう」

 

 同じく自分の胸をぺたぺたと触りながら何事かを考えている様子のシャロの隣に行き、チノはぐっと手を握った。チノとシャロの間に奇妙な友情が成立した瞬間だった。

 

「ねぇねぇ、ところで水着勝負の結果はどうなったのかな? 私の『あだるてぃーなみりょく』はどうだった?」

「アダルトというのがえっちという意味でしたらココアさんの勝利ですが……レギュレーション違反です。順当に千夜さんが優勝で良いのではないでしょうか」

「同感ね」

「えー、何で!? なぜにレギュレーション違反!?」

「それは自分の『胸』に聞いてみてください……」

「なんでー!? 再審議を要求するよー!」

 

 ココアの叫び声が西日差すビーチにこだました。

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