現実と並行セカイの境目ですか?   作:岸雨 三月

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10章:普通の女子高生#3

「よーし! 飛ばして行くよー!」

 

 予選と同じ方式の第二部が始まった。ココア達は謎を解き、次の謎までの道のりを手に入れ、その過程の障害物をティッピーを使って乗り越え、を繰り返していく。予選と比べると人間の頭を使った謎解きよりもティッピーを使った競技の部分の比重が大きくなっていた。たくさんのうさぎの中から特定の首輪をつけたうさぎを探し当てたり、砂浜に埋まっている謎の入ったカプセルを掘り当てたり。そんなミッションをティッピーを使って次々とこなしていった。途中からリゼのティッピーも無事合流する。ココアチームと特殊部隊チームは最初は互角に勝負していたが、機体の基礎能力が相手の方が高いのだろうか? 少しずつ特殊部隊チームの方が先行し始める展開になっていた。

 

 次に試合が大きく動いたのは、謎の答えの指し示す道に従って発電所跡前まで来た時だった。昨夜チノが白うさぎを追って迷い込んだ廃墟だ。だがそこには、昨夜には無かったと思われる(チノは昨夜はうさぎを追うのに夢中だったし、暗くて周りは良く見えなかったのであまり自信は無かったが)立て看板が設置してあった。一足先を行っている特殊部隊チームは看板を見て何事か短く相談しあったかと思うと、二手に分かれたのだった。海沿いをまっすぐ行く太い道の方に一人、発電所跡の横を抜けて山頂に行く細い道の方に二人。少し遅れてココアチームも看板の前にたどり着く。

 

「ふーむ……この看板、島内でお宝を三つ集めてもう一度ここに戻って来い、そういう風に読める……」

 

 予選のクロスワードではとんでもない珍回答を繰り出していたココアだが、この看板を見て導き出した答えにはチノも同意見だった。特殊部隊チームはこの看板を見て二手に分かれていた。バラバラの場所にある三つの宝を集めるのだったら、手分けして探したほうが早い。もちろん宝を探すにも何らかの障害が仕掛けられているだろうし、一人(一機)で対処できない事態に遭遇してしまうこともあり得る。そういったリスクを加味した上で、敢えて戦力を手薄にしてでも速度を優先し、このまま一気に優勝を確実なものにしようという判断だろう――とチノは思いかけて、いや、と思い直す。先を行っているチームが普通の参加者だったらそういう思考回路で間違いないだろう。でも、リゼと千夜の話を信じるのならば、彼女ら特殊部隊チームはこのティッピーコンテストでココアを強襲しようとしているのだ。決勝が始まる前の説明で眼鏡の女性が「本日予定されていたTV中継は中止になりました。本日は来るティッピーオリンピックに向けて外国VIPの方々も視察に訪れており、保安上の配慮から……」云々と言っていたのをふと思い出す。この理由が本当なのかは分からないが、秘密裏にココアを捕らえようとするならばメディアの監視の目も無い今は絶好のチャンスなのでは。

 

「前を行っているコスプレの人たち、二手に分かれてたよね。戦力を分散してリスクを取ってでも速さを追求するか、戦力を集中して安全策を取るか。戦略としてはどちらもあり得るけど、首位チームがリスクを取って成功した時に二位の私たちが安全策を取っていたらその時点で首位の優勝が決まってしまう。ここは私たちも分かれるしかないよね?」

 

 ココアの意見はもっともだった。だがそれは純粋に今回のティッピーコンテストの勝敗だけを考えれば、の話である。本当に特殊部隊が襲ってくるのならば、ココアを手薄な状態にするのが得策なのかどうか。チラッとリゼの表情を窺うと、リゼも全く同じことを考えているのだろう、苦渋の表情をしている。

 

「ほらほら、迷ってる暇はないよ? こうしている間にも三位チームが来て追いつかれちゃうかもだよ?」

「あ、ああ……」

 

リゼに決断を迫るココア(リゼはそのココアのことで悩んでいるのだが、それを口に出す訳には行かない)。悩むリゼの様子をどう勘違いしたのか、ココアはにっこりと笑ってこう言った。

 

「リゼちゃんもしかして私と分かれると寂しいのかな? 大丈夫だよ、私がいない間はこの子を私だと思って!」

 

 ココアは四十センチはあろうかという大きさのうさぎのぬいぐるみをリゼに手渡す。ピンク色で垂れ耳、ヘッドドレスに眼帯をつけているという不思議な格好のぬいぐるみだ。チノは昨日ココアの荷造りを手伝っているときにもこのぬいぐるみを見かけ、(こんなかさばるもの持って行く必要があるんでしょうか?)と思ったのでよく覚えている。リゼは「試合中にこんな大きなもの渡して……」と戸惑いながらも、最後はココアの勢いに押し切られる形でぬいぐるみを受け取った。

 

「というかこれ、元々私があげたものじゃないか!?」

「まあまあ、いいからいいから。あっ! 後ろから千夜ちゃん達が来ちゃった。さあさあ、早く行こう!」

 

 ココアに背中を押され、リゼは悩みながらも決断したようだった。手早くこの後の段取りを決め、細い山頂側の道にリゼ一人が、太い海岸沿いの道にココアとチノが行くというチーム分けを告げる。それはつまり先ほど特殊部隊チームが一人しか行かなかった方にココアとチノを行かせるということであり、ココアの危険を減らすためのせめてもの配慮なのかもしれなかった。チノには、ココアとチノを送り出す時のリゼの目には何か祈るようなものが宿っているように見えた。

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