現実と並行セカイの境目ですか?   作:岸雨 三月

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2章:水玉模様を身に着けた年上の方に誘惑されるでしょう#3

「えー、そんな訳でここが今日の目的地であるティッピーショップです! と言っても普通のショップではなくちょっと特殊な機器やジャンクパーツばかり扱っている専門店だけれども」

「はあ、何だかたどり着くだけで疲れたわ……」

 

ココアに案内されてたどり着いたのは、裏路地の雑居ビルの中にある、いかにもという感じの怪しげなパーツ屋だった。薄暗い店内に所狭しとパーツ類が並んでいるのはホット・ベーカリーと同じだが、この店の出す怪しい雰囲気はホット・ベーカリーを上回る。ドアをくぐると「カランコロン」と音が鳴りはしたが、店員が奥から出てくる気配が全くない当たり、商売する気があるのかないのか分からない店だ。

 

「す、すごい……、見たところティッピー本体や内蔵パーツよりも外付けパーツの品揃えが多いみたいですが、いったい何に使うのか分からないようなものばかりです」

 

チノはキョロキョロと店内を見回す。物珍しいのはマヤ・メグ・シャロも同じのようで、用途を想像できないような品々のラインナップに圧倒されているようだった。ただ一人ココアだけが、はっきりした目的を持っている風に棚を物色し、次々と品を買い物かごに放り込んでいく。

 

「うーん、ロケットブースターはこの型で良いかな。もうちょっと後の年代の型があれば完璧だったんだけど」

「ココアさーん、私たち訳の分からないままに連れて来られましたけど、いったい何が目的なんですか? ティッピー改造してあげるって」

「ん? 大丈夫大丈夫! お姉ちゃんに任せなさーい! ってね!」

「駄目です、これは全然人の話を聞いてない時のココアさんです……」

 

ココアという少女が、何事かに夢中になっている時、特にティッピー関連のことに夢中になっている時は全く人の話を聞かないタイプなのは、ここ数ヶ月の付き合いで分かってきていた。こうなったココアさんはしばらく放っておくしかない、そう思ったチノはあきらめて店内を眺めて回ることにした。

 

<人気サイトティッピー日報で取り上げられました! 悪用厳禁! ティッピー内蔵型スパイカメラ、各種取り揃えてます>

<護身、防犯、痴漢防止にいかが? ティッピー外付けタイプ自律式スタンガン、在庫一新セール中!!>

<プロの手で貴方のティッピーを生まれ変わらせてみませんか? 卓越した技術力で今秘密のベールを脱ぐティッピーの深遠。ティッピー改造サービスご希望の方、詳しくは店内カウンターまで>

 

店内にべたべたと貼られている売り文句はどれも、何だか怪しげな内容のものばかりだ。

横目でマヤ・メグを見ると、ティッピーの腕(!)に装着するドリル状のパーツのコーナーを見て無邪気にはしゃいでいる。(「すげー! 男のロマンじゃん!」「マヤちゃん女の子なのに男のロマンが分かるのー?」)しかしチノは同じようにはしゃぐ気には到底、なれなかった。

 

ティッピーの改造は、ハードウェア的な部分については盗撮・傷害などの目的でない限り比較的自由に行ってよいことになっていたが、ソフトウェア的な部分の改造はティッピー法で制限がかけられている。これもティッピーの根幹技術を秘匿するための措置だそうだ。だが一方で頼まれれば違法な改造を請け負ったり違法な改造を可能にするツールを売ったりするお店があるというのは聞いたことがある。ココアさんはこの店の常連のようでしたが、ここは本当に合法なお店なんでしょうか――、そんな考えが頭をよぎるチノだった。

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