「店員さん顔真っ赤にしてたねー。後ろからだとココアちゃんの陰になって見えてなかったから、まさかパンツが見えてるとは思わなかったなー」
「いやそれより、チノが関西弁でツッコんだことの方がびっくりだよ!」
たっぷりの買い物袋を手に五人は店を出た。店を出るなりマヤとメグは、しきりに先ほどの出来事の話題で盛り上がっていた。おそらくブザーを押してから店員がレジに出てくるまで時間がかかったのはトイレに行っていたからで、慌ててトイレから出てきたのだろう、店員のスカートがめくれた状態になっていたのだった。他の四人の位置からは見えなかったが、店員がゆっくりとレジ打ちをしている間中ココアからはそれがずっと見えていたという訳だ。
「でもココアが変にモジモジしてて先にツッコまなかったのもびっくりだな、まさかココアにそんなデリカシーがあるとはなー」
「ちょっ! 普段の私そんなにデリカシーない? 私なんというか、ああいうギャル?っぽい人ちょっと苦手で、どう話しかけたらいいのか分からなくて……」
「うーんそれも意外だ、なんかココアって『誰とでも出会ったら五秒で友達』みたいなキャラのイメージあったから。ココアでも人見知りすることあるんだな。結構仲良くなったつもりでいたけど、まだまだココアは謎が多いや」
さらにシャロも話に乗っかってきた。
「私としてはチノちゃんのキレッキレのツッコミスキルを見習いたいわね。いっつも分かりにくいボケをかましてきてツッコミ待ちしてる奴が身近にいるから」
「そ、そこは見習わなくていいです……。あまりに驚いたので地元の言葉が出てしまって……、大声出してしまってちょっと恥ずかしいです」
あまり気にせず東京でも関西弁を使うタイプの人もいるが、チノは気にするタイプらしい。チノの地元は大阪・京都・神戸といった大都市からは離れた関西の中でも田舎の方だったので、都会コンプレックスがあることも多少は関係しているのかもしれない。チノの実家の喫茶店は繁盛していて遠方からの観光客も多かったこともあり、チノも標準語で話すことには何の問題もなかったが、驚いたりすると素が出てしまうこともあるようだ。
「それに店員さんがギャルみたいな方だったので、私が知らないだけで見せパン?みたいな都会の最先端ファッションだったらどうしよう、とツッコんだ後から心配になりました」
「流石にスカートめくり上げてパンツを見せるファッションは日本全国どこにもないんじゃないかなー!」
今度は珍しくメグがツッコんだ。
「そういえばチノちゃんって四月にこっちに来たばかりなのよね。たった数ヶ月前までは、私たち違う街で全然交わることのない人生を歩んでたってこと、時々忘れそうになるわ。なぜか不思議と、私たちずっと前からの友達だったんじゃないかっていう気がしていて……」
しみじみとそう言ったシャロに重ねて、マヤがさらに混ぜっ返す。
「関西だったらアレだなー、UFJ行ってみたい! UFJ!」
「いや銀行行ってどないするねん。USJでしたら、マヤさんが関西に来ることがあれば案内しますよ。私USJにはちょっと詳しいですので」
マヤのベタ過ぎるボケに対して思わず関西弁を解禁してツッコむチノに、その場の空気が和んだ。その後は、USJに行くならどのアトラクションに乗りたい、だとか、ココアも学校でうっかりパンツを見せないように気をつけたほうが良いと思う、だとか(ココア「私そこまでのドジっ娘じゃないよー!」)、他愛無い話をしながら歩いた。するといつの間にか五人は秋葉原駅近くまで戻ってきていた。シャロはココアにこう尋ねた。
「で、これからどうするの? まさかこれだけで解散っていう訳でもないでしょ?」
「うーん……、あっ! ここに入ろうか」