夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第一章「Custom makes all things easy.」
第一節「ナイト家の養子」


「養子だァ?」

 

主人公を見る前に、ある種の前日譚を見せようと思う。

ここはイギリスのロンドンだ。ここにいる家族は全員がかつてホグワーツに

通っていた。今年、二人は闇祓いの訓練期間を終え、正式に闇祓いになる。

二人は年子の兄弟。養子と言う言葉を繰り返したのは兄であるアトスだった。

 

「突然だな。なんで養子を取るんだ」

 

気になるだろう、その理由。アトス・ナイトは問い詰める。別に両親を

責め立てるように聞いているのではない。

 

「その子の両親と友人でね。それで、自分たちにもしものことがあったときに

後見人になってと頼まれていたの」

 

母であるメリダ・ナイトはそう告げた。自分たちが後見人になっていたので

その子を引き取るのだ。小柄な母と真逆に大柄で強面な父カイニスは続けた。

そろそろ飛行機が来る。

 

「名前はサラ。アトス、アラミス。彼女を出迎え、ホグワーツに行くための

準備をしてきなさい」

「見れば分かると思うわ。長い黒髪の女の子だから」

 

家を出て行く二人。アラミスは口数が少なく、仏頂面だ。それでもこちらから

話しかければしっかり受け答えをしてくれる。アトスは明朗快活で誰にでも

自分をさらけ出す。性格が異なる二人だが兄弟仲はかなり良い。そこにこれから

もう一人、妹がやって来るのだ。

 

「妹が出来るって言われても、あまり実感湧かないな」

「20年間、俺とアトス、それと母さんと父さんの四人家族だったからな。

湧かないのは当然なんじゃないのか」

 

生まれてからずっと家族の顔は変わらない。空港に辿り着くと、一人だけ

周りを気にしている少女がいた。聞いていた通りの黒髪の少女だ。

アトスは怪しまれるなどと考えず彼女に声を掛けた。

 

「君がサラ?俺はアトス、アトス・ナイトだ。こっちは弟のアラミス。

よろしくな」

 

サラも警戒心を解いたらしい。

 

「あの、一体何処に?」

「ホグワーツに転入するから、その準備さ。杖があるなら、後は他の

ものを集めねえとな」

 

ホグワーツの制服だ。アトスは積極的にサラに話を振った。すると徐々にサラも

笑顔を見せるようになってきた。来たばかりの子が緊張するのは当たり前。

アトスのお陰もあって、サラの緊張は消えている様だ。

今は8月だ。

 

「アトスさんたちはホグワーツの卒業生だったのか…」

「3年前に卒業したんだ。サラは四年生から通うことになるんだな。ホグワーツには

四つの寮があるって知ってるか?」

 

首を横に振るサラを咎めることなく、説明した。グリフィンドール、ハッフルパフ、

スリザリン、レイブンクロー。この四つだ。ホグワーツの敷地は広く、全てを

知っている者はいないだろうとされている。アトスたちだって分からない。

準備は着々と進んでいる。ふと、サラが地面にあったビラを拾った。

 

『闇の魔法使いによる事件が多発』

『ハリー・ポッターがいない今、対抗策は』

 

「最近、また純血主義とか謳ってる奴が多くてな。俺たちがいた頃は、そんなに

いなかったけどサラが転入するときは多いだろう。気を付けろよ」

「付き合う人は選ばないと?」

「出来るなら、広く浅く…それが理想的だろうよ」

 

だが、それも難しいかもしれない。誰がどんなことを想っているのか分かる由も

無い。どんなふうに思われているのか、何を考えているのか。

 

 

 

「わぁ!大きい家!!」

 

ナイト邸に辿り着いた。必需品は全て揃えたので、後は学校に行くだけだ。

この家は随分と大きい。かつてはそれなりに格式のある家だったらしいが

アトスたちの祖父の代で全てがガラリと変わったらしい。莫大な財産は今も

続いている。

 

「部屋もあるから安心しろよ」

「母さんも父さんも暫く家を出ている。夏休みが終わる頃には戻って来ると

思うから、挨拶ならその時に」

 

正式にサラはナイト家の養子になり、その名字を名乗ることになった。

夜になって名前を呼ばれた。何事かと思ったら、お風呂だった。そのお風呂も

家に見合って広い。

 

「俺とアラミスも入ったから、ゆっくりしてて良いよ。男二人が入った後に

なっちまって御免な」

「そんな!入れるだけで有難いですから―」

 

アトスがムッとする。

 

「俺たちには普段通り話してくれれば良いよ。もう俺たちの妹だからな」

「…うん」

 

アトスが去った後、ふと振り返った。古傷が幾つかあって、驚いた。

闇祓いの訓練をしていると言っていたので、それで怪我をするのかもしれない。

そういうことは深く聞かないのが正しいだろう。

ゆっくり湯船に浸かっていると、扉越しに誰かが立った。あの容姿は多分…。

 

「アラミス、さん?」

「すまない。一応、夕飯の準備が出来ていることを伝えておこうと思って」

「そうだったんだ。えっと…ありがとう…」

 

扉から人の影が消えた。風呂場をアラミスが離れたのだろう。着替えた。

椅子に座る。既にテーブルに料理が並んでいた。凄い!

 

「これ、アトスさんとアラミスさんが!?」

「あぁ。苦手な物があるなら、避けて構わない」

「どうせ、俺たちの方が食うからな」

 

習慣というのは抜けないもので、手を合わせていただきますを告げてから食事を

開始する。アトスとアラミスは少し不思議に思ったのか、それを眺めてから

食事を始めた。ちょっと恥ずかしいな…。こっちの常識に自分は慣れないと

行けないのだろうか。

悩んでいるのが顔に出てしまったらしい。

 

「構わねえよ。それがお前にとって一番楽な状態だ。気にすんな」

 

その日は、ゆっくりと休むことが出来たと思う。どうやらサラが三兄妹の中で

一番最初に眠ったらしい。その様子を二人の兄は、そっと見ていたとか…。

 

 

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