夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第十二節「内通者の存在」

誰から入手したか分からない情報で彼らは動いていた。ただ明確な上司の名前が

判明した。

 

「ジギー・パルラスか…居場所は」

 

男は淡々とした口調で聞かれたことに素直に答える。魔法薬学教師

ドロテア・トレントによる手作りの薬を使った恐ろしい尋問だ。アトスは息を

吐いた。

 

「オイ、何処に行く」

「何処って、元・闇祓いなら分かってるでしょう。一応、巡回してきます」

「そうじゃねえよ。お前、そいつに鉢合わせたらどうするんだ」

 

ジギー・パルラス、凶暴な犯罪者だ。彼と戦い病院送りにされ、そして

戦線離脱した闇祓いも多い。そんな男を相手に勝てるのかとヴィクトールは

聞いてるようだ。

 

「無謀と勇気は違う。教えたはずだぜ、アトス・ナイト。勝てる戦いだけしろって」

 

ヴィクトールは戒めるように、そして責めるように言う。

 

「どれだけ言っても変わりませんよ。俺はそこまでチキンじゃないんで。それとも

貴方は勝てる試合だけで勝って、自分は最強とか名乗るような屑なんですか?」

 

アトスは皮肉のように言い返した。ヴィクトールは眉を顰める。笑いつつ青筋を

浮かべている。

 

「おーおー、俺がいなくなって調子乗ってんじゃねえぞクソガキ」

「なら、アンタも戦えばいい」

 

アトスはそう煽ってから図書館を出た。二人がどんな関係だったか分からない。

だが何処かギスギスしている。単にヴィクトールの態度が悪いだけかもしれない。

一方、校長室。そこには代々務めて来た校長の肖像画が幾つも飾られている。

今、最も新しいのはミネルバ・マクゴナガル校長。そして偉大な校長

アルバス・ダンブルドア。二人の間に飾られているのはセブルス・スネイプ。

一度は闇の帝王に忠誠を誓いながら、一途に想いを寄せた相手の為に

二重スパイと言う苦しい境遇を過ごした男だ。彼の肖像は飾られないと思われたが

ハリー・ポッターによって飾られることになった。この男もまたポッターと

深く関わりを持っているのだ。

 

「何故私を」

 

グリシャ・ポッターは校長エリザベス・アゼリアに尋ねた。

 

「サラ・ナイトとよく話をしているのを見かけるもので。私は校長、全生徒を

平等に見る必要があります」

「それは僕も同じですよ。教師ですから」

「…それはそうでしょうけど、より身近だから」

 

エリザベスは微笑を引っ込めて何かを思案する。その内容はすぐ彼女の口から

伝えられた。

 

「やはり、校内に内通者がいます。サラは突然この学校に来た。これについて

怪しまないわけが無い。何も無いことを祈りますが、監視をしてください」

「それは良いのですが、何故…私でなくても、他にも良い教師は沢山います」

 

グリシャは謙遜していたのだ。

 

「フフッ、貴方は自己肯定が弱い故に自分の力を極限まで抑えてしまっている。

自分の力をもっと信じて」

 

エリザベスはそっと告げる。彼には素晴らしい力がある。それこそ彼の曽祖父の

ような力だ。

 

「思いは時に力を引き出す動力源になるのです。人にもよりますが、強く信じれば

自分の中に眠る力は時に巨大になって表れる。しかし一人の力には限界がある。

だから私たちは人と手を取り合うのですよ」

 

校長室を出てからグリシャは色々な事を考える。生徒、教師、学校の関係者が

外へ学校の情報を伝えている。好んで繋がっているのか、または恐怖によって

支配されているのか。内通者とどう接するべきか。これからどう対応するべきか

悩んでいた。

 

「ポッター先生?」

 

一人の男子生徒が声を掛けて来た。五年生、鷲寮の監督生である生徒だ。名前は

ディラン・グッドマン。

 

「校長先生とお話ですか」

「うん。君は今、何をしていたんだい」

「本を返しに行ったところです。ようやく図書館が開いたんで。そういえば、

ポッター先生に伝言が」

 

ヴィクトールから伝言。ただ図書館に来て欲しいという内容だった。

 

「そうか、ありがとう」

 

閉館していた図書館では何かあったのだろうか。ディランが言うには他にも

二名の生徒とドロテア・トレントがいたらしい。ドロテアは何やら清々しい

笑顔を見せていた。生徒は見てはいけないものを見てしまったという顔をしていた。

そういえば、この学校は広大だ。長く勤めている教師ですら全容を把握していない。

隠し部屋、隠し通路。一体この学校に幾つ隠されているだろうか。

 

「(内通者は、偶然か必然か…その隠し通路を発見したのかもしれないな)」

 

ホグワーツは厳重に守られた敷地だ。過去にも大戦があったが、侵入するのに

時間を有していた。結界に穴が出来ているのかもしれない。それは小さな穴。

しかし人が通るには充分な大きさの穴。図書館に到着した。この時間帯だと今は

授業中で生徒は誰もいなかった。

 

「侵入者か。その対応をしていて図書館が閉まっていたんだね。一先ず君が無事で

本当に良かった」

「えぇ、本も無事でしたし」

 

自分より本を大切にしている様だ。

 

「その侵入者からトレント先生が尋問をして、情報を引き出した…彼女が清々しい

笑顔を浮かべていたのも納得できるよ」

「…マジっすか」

「そう言う人だからね。侵入者のリーダーを聞きだして、他には?」

 

グリシャは質問を重ねた。それにヴィクトールは違和感を覚えたようだ。

 

「なんか色々聞いて来ますね」

「僕は教師であり大人だ。僕たちがしなければならないことは子どもたちを

守り、そして正しい方向へ導くことさ。それに最近、校内でも疑心暗鬼の

生徒が増えている。不安要素を取り除いてやりたいんだ」

 

グリシャは何処までも真っ直ぐで、優しい男だった。ヴィクトールは鼻を鳴らす。

手袋で覆われた左手をそっと右手で撫でる。

 

「ガキはガキらしくしてりゃ良い。そう思いませんか、ポッターさん」

「…どうかな。君は何か、予感しているようだね。特殊な経緯を持つ彼女に

魅入っているのかい?」

「ハッ、まさか!無いですよ無い無い」

 

ヴィクトールはすぐに否定した。だが心底では違うのだろうとグリシャは考える。

 

 

 

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