夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第十四節「グリシャvsワルプルギス」

「ベアトリス!」

 

走って来たのはグリシャ・ポッターだ。彼は血濡れマダムからサラたちがここに

いることを聞いて何かあったと察知し、駆け付けた。

 

「先生!サラが、サラが!!」

「一度落ち着こう。経緯を教えてくれる?」

 

メイラ=フゥを見かけないことに違和感を覚えたこと、彼女を探していたこと、

その時にサラが壁に触れた事など必要になる部分を掻い摘んで説明した。

話を聞いてグリシャは恐らく、サラが隠し通路のスイッチを押したと推察した。

何処に繋がっているのか分からない以上、下手に触るのは避けたいが、今は

緊急事態だ。サラがジギー・パルラスと言う男に接触する可能性を無下に

出来ない。

 

「僕が行こう。君は―」

「私も行きます」

「…先に忠告するよ。僕も無敵じゃない。君に危害が及ぶかもしれない。君が

傷付いて悲しむのは僕や、サラたちだ」

「でも、行かせてください。邪魔をしないようにしますから」

 

ベアトリスは強く懇願する。どうしてもサラたちのもとへ自分も駆け付けたいと

言うのだ。

 

「分かったよ。本当はここで待っていて欲しかったけど…。危ないと思ったら、

まずは自分の身を守ることを優先する。良いね?」

「はい!」

 

グリシャはベアトリスを自分の方に抱き寄せ、そしてスイッチを押した。

床が開き、スライダーのように地下の何処かへと進んでいく。ベアトリスは

グリシャに抱き着いていた。そんな彼女をグリシャも離さないようにしていた。

地面に足が着く。

 

「大丈夫?」

 

グリシャはベアトリスに手を貸した。その手を取り、ベアトリスも立ち上がる。

 

「ここは、隠し部屋…」

「みたいだね。ほとんど通らない場所だから、見つけられることも無かったの

かもしれない。消えることもあるから、猶更見つけにくいのかも」

 

物音、それもただ物が落ちたような音では無い。これは戦いで起こる音だ。

 

「不味い。走るよ、ついて来て」

 

グリシャが先頭を走る。音がした方向に足を運ぶのだ。

 

 

何が起こっていたかと言うとサラはジギーと対峙していたのだ。だが劣勢。

友人を盾に取られては動けないので避け続けていた。

 

「ハッ、マグルが。無様に逃げ回る姿が御似合いだな!」

「そう言う貴方も、人を使ってふんぞり返るアホみたいな姿が御似合いですね」

「口が回る塵だ。わざわざ俺が手を出す必要もねえだろ」

 

ジギーと言う男は純血思想の持ち主。マグルと混血を嫌う男だ。暴力が歩いている

と例えても過言ではない。

 

「―その通り。口が回る子どもだね、君は」

 

何かが飛んだ。操られていたメイラの目が丸くなった。あまりの衝撃だったようで

服従の呪文の効果すら跳ね除けてしまった。

 

「メイラ!」

「ベティ、サラ?…心配かけて、ごめんなさい」

 

二人は同時にメイラに抱き着いた。

 

「もう心配したよ。ダメかと思った!」

「えぇ。私も死んだかと思ったわ」

「言ってる割には冷静じゃん、メイラ」

 

サラがそう指摘するとメイラはふと微笑を見せた。心の底から出た、笑顔だ。

 

「何故か分からないけど、誰かが来てくれる気がしたから」

 

メイラは二人の手を握った。安心感が今は勝っているらしい。相手への恐怖より

彼女は今、仲間や信頼できる教師が来てくれたことによる安心感が勝っている。

 

「へぇ、テメェがあのハリー・ポッターの曾孫か。混血の癖に今じゃ世の中の

ヒーロー。ヴォルデモートを倒したってな。テメェ、そんなに偉いのか」

「まさか。僕はそんな人間ではないよ。君と変わらない普通の人間さ」

 

ジギーが杖を振るうが、放たれた魔法をグリシャは弾く。その動きは素人では

無い。グリシャは闇の魔術に対する防衛術、その教師だ。その科目は実戦的な

部分も多い。担当教師であるグリシャは穏やかで、一見すると決闘などに不向きに

見えるがいざとなれば彼は戦う。

 

「へぇ、やるじゃん。だけどよォ、守りながらで俺に勝てると思ってんのかァ!?」

「ッ、―プロテゴ!」

 

すぐにサラたちにバリアを張った。グリシャは守ることを優先して動いていた。

凶暴なジギーは何故かこの日は大人しく身を引いた。グリシャも深追いしない。

彼がいなくなったことで、その先を見ることが出来た。

 

「古書だね。かなり劣化している…書かれたのは、90年も前か…」

「本当に古いですね…でも、その本には何が書かれているんですか」

「昔はね、まだ魔法にこれだけのルールが定められていなかったんだ。抽象的な

内容が伝わっていたから。この古書にはもう使われていない、忘れ去られた魔法が

残されている」

 

忘れ去られた強力な魔法を見つける為に狙っていたのだろうとグリシャは

考える。その本を確認しているときに一ページだけ、破られているのを見つけた。

顔を曇らせる。やられた…。そのページに書いてある内容次第では、かなりの

痛手になるだろう。それよりもグリシャは気になることがある。

 

「さて、メイラ。これを飲んでくれるかな?」

「?これは?」

「ちょっとした薬さ。体に害は無い。とりあえず飲んでくれるかい」

 

メイラはその小瓶に入っている液体を飲み干した。

 

「これからする質問にイエスで答えてね。君は服従の呪文を掛けられていた?」

「“イエス”」

 

グリシャはメイラの目をずっと見ていた。変わらない瞳の色。

 

「うん、ありがとう」

「え、え?」

「僕が開発した薬でね。かつて服従の呪文に掛けられていたか否かを判断することは

出来なかった。それを理由に罪から逃げた罪人も多数存在する。真実薬に似た

ようなものだけど、これは服従の呪文の判別に特化させた物だ」

「凄いですね!」

 

グリシャは笑みを見せた。

 

「さぁ、ここを出よう。この古書は僕が持っておく。ヴィクトールにも見せておいた

方が良いかもしれないし…君たちの事も上手く誤魔化しておくね」

「ありがとうございます、ポッター先生」

 

侵入者の排除に成功した。後日、教師たちの巡回で結界の穴が塞がれた。結界も

張り直されている。

 

 

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