事が済み、学校内は穏やかになった。
授業の時間は相変わらず図書館には誰も人がいない。この日はグリシャも
授業をしているので来ることは無いだろう。ヴィクトール・ゾグラフ、彼は
グリシャから聞いた話を思い出していた。
「彼女がもしも勝手に離れていたら僕はサラちゃんたちを助けられなかったよ」
先を考え、彼女はその場の最善を選択した。しかし彼女は獅寮譲りの勇敢さも
備えていた。何が何でも、友を助ける為について行くと聞かなかったという。
ヴィクトールは気恥ずかしく思いながらもある物を書いていた。
書類?手紙?
レイブンクロー寮、監督生ディラン・グッドマンが話していたのはサラたちと
同じ学年、四年生のユリウス・ベタンクールだ。ベタンクールは有名な
魔法族の一族だ。かつて聖28族なんてものがあったらしい。純血主義の者たちが
非公式に作ったらしい。そんなものが消えた今でも、純血の一族の名前は
広まっている。
「どうしたんだ?」
「ベアトリス・ゾグラフと、メイラ=フゥと共に行動しているグリフィンドールの
生徒を知りたいんですけど」
ユリウスの口から出たことにディランは驚いた。女子生徒に興味があるのか。
だが異性に対する恋心では無いらしい。
「サラ・ナイトの事か?それなら俺より、ベアトリスたちに直接聞いた方が
良いと思うが…何か、あるのか」
「聞きにくいじゃないですか、女子生徒に女子の事聞くなんて」
ユリウスはさも当然のように言った。ディランは苦笑する。
「俺が教えられることは少ないぜ?転校生だって事と、ナイト家の養子って事だ」
特に後者の情報にユリウスは食いついた。ナイト家の出身者であるアトスと
アラミスの双子は学校でも有名人だ。彼らの後輩だった生徒も多い。
「養子…」
「不思議だよな。でも、突然だったって聞いたよ。人には人の事情があるだろ?
この辺りの話を詮索するのは止そう」
ディランには隠しながらユリウスは心が揺らぐのを自覚する。
休暇の時に、偶然にも彼はアトスと鉢合わせた。
「俺の事、知ってるんですか」
「あぁ、ベタンクールの子だろ。ユリウスだったか」
「聞きたいことがあります」
その日、アトスは仕事帰りだった。彼を引き留めたのはユリウスだった。彼は
アトスにサラの事を聞いた。サラと顔見知りでは無いが、気になると。突然
転校してきた彼女が不思議で仕方がない。
「俺も深く知らないんだ」
アトスの父が決め、そして引き取るに至ったのだ。アトスたちにとっては突然
妹が出来ることを伝えられたのだ。驚きもそうだったが、喜びの方が大きかった。
アトスとアラミスは双子、同い年で、前々から二人とも下の子が欲しいと
思っていたのだ。
「知らないって…聞かないんですか?」
「妹が出来るだけだろ?なんで聞かないといけないんだ?」
「だって、可笑しいと思わないんですか。突然来た妹で、素性もあやふやなのに」
ユリウスの言葉にアトスは笑った。世間知らずな自分を嘲笑われた気がして
彼はムッとする。
「そう怒るなよ。お前にだって、聞かれたくない事、指摘されたくない事、
ほじくり返されたくないことがあるだろ?サラにも事情がある。そこはデリケートな
部分だから、聞かないんだ。過去に何があっても、今は俺とアラミスの妹だ。
じゃあ、俺はこれで」
アトスは何処までも真っ直ぐだ。
「ったく、お前は何を怖がってる?」
「ッ」
「父親か?それとも自分か?または過去に対する報復か。何でもいいけど、さっさと
振り切っちまえよ。何時までもウロウロしていると、本当にタイミングを逃すぞ」
ユリウスの父は、ローウェンと言う男は、純血思想を持ち、ワルプルギスにも
所属していた。その息子として、ユリウスは一度人殺しに手を掛けた。アトスに
言われて、彼の中に沸々と怒りが湧いた。
振り切れ?簡単に言うな。そんな簡単な事なら自分はこんなにも父を恐れやしない。
過去を気にしているはずもない。振り切れないから困っている。口で言うのは
簡単だ。何も知らないくせに…。
だが不思議と怒りの炎が大きく揺らめいた。
自分は本当は断ち切りたいのではないのか?今回自分が関わったことは結果的には
失敗に終わった。
レイブンクローの羽飾りが偽物にすり替えられていることに気付けなかった。
指示を出したローウェン本人は
「あー気にしなくてもいいさ。羽飾りか、魔導書、最悪片方が手に入れば
良かったから。だけど、成功とも言えないな…」
魔導書をまるまる一冊奪うはずが、必要な一ページしか取れなかった。理由は
ホグワーツ教職員の素早い対応だ。想定より彼らが早く闇祓いを頼るという行動に
出たため、予定が崩れてしまった。
駆け付けた闇祓いはアトス・ナイト、若く、まだ日も浅いにもかかわらず
その功績は広く知れ渡っている。
時は進む。レイブンクロー寮の次は、グリフィンドールと相容れない
スリザリン寮。しかし今は、少数派だがグリフィンドール寮の生徒と関わりがあり、
そして純血思想を持たぬ者、その思想を改めた者がいる。
ヴィクトールは何を書いているんでしょうね?(・∀・)ニヤニヤ