夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三章「スリザリン編」
第十七節「冬休み明け」


スリザリン寮は特に純血主義の生徒が多いとされている。

かつてハリー・ポッターとライバル的な存在だったドラコ・マルフォイも

この寮に属していた。アラミスの時代は、ワルプルギスの存在はまだ

知る人ぞ知る噂の存在程度であった。だが今は、混血・マグルに対して

差別的な意思を持つ者が多い。

 

 

冬休みの最中だ。ナイト家の家宅にはレオナルド・オルグレンがやって来ていた。

 

「何時もアトスとアラミスが御世話になっています」

「いいえ、とんでもないレディ。貴方の息子たちはとても優秀だ」

「まぁ!レディだなんて~」

「イチャイチャすな」

 

サラが一喝した。レオナルドはやれやれと言う風の動作をする。

冬休みが明ければまた学校が始まる。始まって早々控えているのはクィディッチの

試合。大勢の観客が集まって来るらしい。

 

「サラちゃんは出ないのか」

「誘われたら、やるつもりだけど自分から参加するつもりは無い」

 

箒に乗るだけならまだしも、そこから速度を求められる。やってみなければ

分からないが、それ故に自信をもって参加する気になれなかった。

 

「にしても、ホントにワルプルギスが活発になって来たなー」

「レオナルド、その話は」

「隠す必要も無いだろう、メリダ。もう巻き込まれている」

 

ワルプルギスは今回、実際にホグワーツに侵入してきた。彼らの目的がホグワーツの

奪還であることは間違いない。彼らが盗んだ、魔導書の一ページに何が記載されて

いるのか、校長であるエリザベス・アゼリアも分からないらしい。そんなものが

あることも把握できていなかった。

敢えて口にしないが、懸念していることがある。

襲撃された後だというのに、クィディッチの試合を一般公開するものだろうか?

 

 

 

「その子、混血よ?」

 

赤いマーメイドドレスを着た女性が座っていた。他にも四人いる。そのうち、

中央に座る長い髭を生やした男こそがワルプルギスの指導者だ。

 

「構わん。特殊な縁を持つ魔法使いを用意しろ。そして、なんとしてでも

ホグワーツを奪い取る」

 

指導者は笑みを浮かべ、両手を広げた。

 

「闇の帝王の名のもとに、魔法族だけの楽園を作ろう。その楽園に混血もマグルも

必要ない!」

 

闇の帝王が叶えようとした純血の魔法族だけの世界。馬鹿げた話だが、彼らは

本気でその夢を叶えようとしている。今までよりも綿密に、計画を練っている。

次の目的は一般に公開されるクィディッチの試合。そこを強襲し、ある物を

奪おうとしているのだ。

 

「流石の手腕ね。だけど、やはり闇祓いは集まって来ちゃったか」

 

女性幹部ラシェル・バロウズは腕を組む。彼らは今回、大きな動きを見せる。

 

 

アンジェラ・パルラス、彼女は蛇寮四年生だ。彼女は自身の従兄であるジギーと

繋がっていた。彼女こそ灰、スパイだったのだ。彼女自身は混血だが、家は

純血思想に振り切っており彼女はずっと虐められて育ってきた。

そんな状況下で彼女は自分も純血主義に染まることで支配される側からする側へ

回った。

 

「ヴィンス?」

「あぁ、珍しいな。誰かに声を掛けるとは」

 

ヴィンス・ルエル、四年生になって思想を改めた生徒だ。何故変わったのか

分からず最初は困惑した。冬休みが明けて、生徒たちは今、クィディッチの試合に

向けて準備を進めている。無論、勉学を疎かにするつもりも毛頭ない。

 

「変わった理由か…それは秘密さ」

「はぁ?」

 

ヴィンスは微笑んだ。そして去る。入れ違うように一人の生徒がやって来る。

グリフィンドールの生徒だ。今ではすっかり有名人になったサラ・ナイト、

マグル生まれでありながら、あのナイト家の養子だ。軽く虐めてやろうと

足を引っかけてやった。

 

「あらぁ、ごめんなさい?大丈夫かしら」

「勿論。私も悪かった。しっかり足を上げて歩かないとね?」

 

アンジェラの嫌がらせを躱して、ジョークを返して来た。気に入らない。

アンジェラは自分に背中を向けるサラに杖を向ける。

 

「こんなところで魔法を使って、減点されたいのかしら?」

 

後ろから杖を掴まれた。赤いマフラーが目に付く。

 

「それとも、私の可愛い後輩を虐める悪い子かしら?」

「クラリーチェ・ロングボトムさん…」

 

獅寮、五年生。監督生のクラリーチェ・ロングボトム。グリシャの曽祖父

ハリー・ポッターと共に戦ったネビル・ロングボトムの曾孫だ。彼女は

アンジェラの憧れの先輩でもある。

 

「偉いわ。誰からも認められたいのなら、誰に対しても平等でありなさい。

人にしたことは自分に返って来るわよ」

「はい…」

 

クラリーチェと別れたアンジェラの脳裏に浮かび、そして彼女を支配する男が

想起される。ジギー・パルラス。暴力の塊だった。彼は一生アンジェラを支配する

だろう。その恐怖故に彼女は逆らえない。

いがみ合うことが多い、二つの寮。寮内には幾つもの考えが取り巻いている。

純血以外を許せない者、純血こそが最高だという者。そしてそんな考えはもう

古い、馬鹿げていると考えている者。その者たちと特にサラは強く繋がることに

なる。

 

 




恐怖こそ支配。
なら、その逆となるのはなんだ?
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