寮対抗、クィディッチ杯。
開催が近づいている為に生徒たちはソワソワしていた。試合を間近に
している獅寮でも選手たちは練習に励んでいた。
「お疲れ、ピオジエ」
ピオジエ・アレニウス、同じく四年生でクィディッチでチェイサーを
している少年だ。かれこれホグワーツに来て数か月。この短期間で二回、
ワルプルギスの関わった事件に巻き込まれていた。
サラをトラブルメーカーと捉えて、厄介者扱いする者もいれば事件に巻き込まれ
ながら毎回無事に戻って来る彼女を彼のハリー・ポッターのように考える人も
増えていた。サラとしてはどちらでも構わない。
「サラも参加すれば良かったのに」
「私はピオジエみたいには動けないから。それに、掛かってる物が
大きいから」
「背負いきれないって?」
「そう言う事」
ピオジエはサラの隣に座り、肩に箒を担ぐ。楽しいが、疲れも溜まっている
だろう。勝ちたいという思いがどの寮も強いのだ。この寮と何かと仲が悪いのは
蛇寮。今でも純血主義を掲げる生徒が多数存在する。サラの事を快く思わない
生徒も。だが中には彼らと異なる考えを持つ生徒もいるというのだ。
「そうだ!会いに行こうよ、その生徒に」
「でも、今は何処もピリピリしてるし…」
「良いから」
ピオジエに引っ張られて、サラは観覧席を離れた。彼の箒、彼の後ろに乗り、
サラは手を回す。
「しっかり捕まっててね」
ピオジエの運転で箒は上空へ、向かっているのは何処だろうか。聞けば
ヴィンスという少年はサラが入学するまでは純血主義を貫いていたらしい。
「僕は不思議だったんだ。染み込んだ考えを改めるのって難しいでしょ?」
環境によって人の思考が変わる場合がある。抑圧された状況下にあれば、
そこから解き放たれた瞬間、人は抑圧する側に回るかもしれない。
ヴィンスと言う人がどんな人間なのかは実際に見なければ分からない。
他者から伝えられる情報はあくまでも相手が感じたことであり、自分の感覚と
差があるのだから。
「お、ヴィンス!」
蛇寮でも練習をしてたらしく、クィディッチのユニフォームを着たままだった。
二つの箒が共に下降する。
「コイツがヴィンス・ルエルだ。こっちはサラ。あの転入生だよ、ヴィンス」
「初めまして、サラ。君の事なら知ってるよ。トラブルメーカーだってね」
その話だけが校内を歩き回っているのか。マグルや混血を嫌う生徒の間では
それだけに留まっている、悪い意味が含まれているが。しかしヴィンスのように
純血主義の考えを改めたり、或いは否定的に思っている生徒たちの間では
あのハリー・ポッターのように扱われていた。
「大袈裟だけどね。良ければ顔を合わせに来ないか。俺が集めるよ」
「い、いやいや、集めなくても良いよ。大丈夫。類は友を呼ぶって言うでしょ?
私も純血主義って考え方は時代遅れだと思ってるし」
何もしなくても、そのうち勝手に仲良くなれるとサラは考えているのだ。
蛇寮が一番ギスギスしているだろう。手腕がある生徒二人が寮をまとめているのも
あって表面上での差別は無いという。あくまでも表面だけ、彼らの目を盗んで
混血やマグルを虐めている生徒は何人も見ている。ヴィンスは度々被害を受けている
生徒を庇ってもいた。
「庇うのって怖いよね」
「怖いけど、誰かが止めないとアイツらはエスカレートするからな」
同い年とは思えないほど逞しい。ホグワーツの生徒はそんな生徒が多いのだろうか。
大きく、そして歴史がある。有名な魔法使い、魔女たちを何人も輩出している。
有名だが、それは英雄的な人物とは限らない。あの闇の帝王もこの学校の
卒業生であることは忘れてはならない。
「…元々ワルプルギスの存在はあったからな。別にサラが原因ではないよ。
たまたま、彼らが動くのとサラが来たのが重なっただけ」
クィディッチ杯は近づいて来る。学校側も闇の奇襲に備えている。
闇祓いに応援要請をして、警備を固めている。教師は中に目を向けることが
出来なかった。生徒を怪しむことが、出来なかった。
闇祓い局。
アトスとアラミスの二人は基本的にずっとくっ付いている。双子の兄弟と言うことも
あって、それが当たり前になっているのだ。
「お前ら、ホント仲良いな」
全く同じ顔だが微妙に差がある。彼らが入って来た頃は全く見分けがつかなかった。
レオナルド・オルグレン。
長く仕事を共にしているうちに見分けがつくようになった。顔はそっくりだが
二人の性格は随分と違っていた。
「そりゃ俺たち、双子だし」
「それは理由にならないと思うけど、アトス」
「良いじゃねえか別に。それで、レオナルドさんは何か御用ですか?俺たち
見ての通り昼食中なんですけど」
二人に声を掛けた理由はただの世間話。この話は次の任務にも絡んでいた。
ホグワーツ、クィディッチ杯が行われようとしている。それも一般公開を
するというのだ。可笑しいと思わないか?そう言う内容だった。
ホグワーツ、闇祓い、ワルプルギスの三者がついに一堂に会する。
今までよりも規模は大きく、そして直接的にぶつかり合う。
いよいよクィディッチ杯が開催された。