夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第二節「学校入学前」

学校はまだ始まらない。

夏季休暇の間は時間を作ってアトスやアラミスの二人がサラをあちこち

連れ回していた。今日もサラは二人と共に外を出歩いていた。

 

「もう八月中旬だな」

「だね」

 

まだ学校は始まらないが、何だかソワソワしてきた。どの寮になっても

構わないが純血主義を主張するようになった生徒もいるかもしれないと

言う事を聞き上手く友人作りが出来るか不安なのだ。かつては有名な魔法使い

ハリー・ポッターの存在が闇の魔法使いたちへの牽制、抑止力となっていた。

寿命に逆らうことは不可能で、ハリー・ポッターが消えると再び

抑えつけられていた闇の魔法使いたちは徒党を組み始めているらしい。

これが今の状況。その為、闇祓いは忙しく、危険度も上がっている。

今まで通りにただ街を巡回すれば良いわけではない。殉職者も増えている。

 

「それでも、二人は闇祓いを目指すんだね」

「こんな仕事は消える方が世の為さ。俺たちが暇になって、無職になれば

それは平和になったって証だろ。でも今は、誰かがああやって体を張らなきゃ

ならねえ」

「全てを守るなんて綺麗事は言わない。ただの自己満足さ」

 

アラミスがサラにクレープを手渡した。ベンチに三人が並んでいると時折

人がやって来て「仲が良いのね~」とか「こんな素敵な人が兄で幸せね~」とか

色々と声を掛けられた。

 

「でも、それだけ頑張っても恨まれる事はあるんだよね…。辛くないの?」

 

アラミスとアトスはもうすぐ本格的に働き始める。被害に遭った人からすれば

もっと早く来ていれば助かったのに、と責めたくもなる場合があるだろう。

そうなったときはどうなんだろう。

 

「グッと堪えるさ。辛いのはお互い様だ。逆の立場なら俺たちだって同じように

相手を責める」

「悲しみに暮れてる暇があるなら、多くの人を救うために動くだけだ」

 

働き始めれば二人の心境は変化するかもしれない。しかし彼らは強いとサラは

思った。こんな強い兄がいるのなら、確かに自分は幸せなのだろう。

 

「ぬわっ!?ナイト兄弟が女の子を連れてやがる!!」

 

ベンチの前を通りかかった男が目を丸くしていた。白衣を着ている赤毛の男。

年齢は30代ぐらいだ。レオナルド・オルグレン、現役の闇祓いだ。つまり

アトスたちの先輩と言う事。

 

「何、二人そろって同じ子を…」

 

どうやらサラを恋人と勘違いしているらしい。

 

「それも日本人かぁ!罪深いぜ!!」

 

本当に勘違いしているらしい。

 

「日本人ですけど、サラは俺たちの義妹です」

「へ?義妹…?」

 

レオナルドがサラに目を向けた。彼女は無言で頷いた。ようやく誤解が解けた。

 

「日本人で、本当に養子に迎えるとはねえ…。それで九月にはホグワーツに

転入か」

「はい。四年生から転入します」

「良い子だな、こんな子が妹とか溺愛しちまうんじゃねえの~?」

 

ウリウリとレオナルドはアトスたちを弄った。明るい良いおじさんだな、それが

第一印象だ。アラミスはサラを連れ出して一度ベンチから離れた。

 

「相も変わらず鋭いな…アラミスは」

 

その表情は仕事の時の顔だった。

 

「これから荒れるぞ、社会は…。奴らも統率が取れて来てらァ」

「でしょうね」

「ハリー・ポッターがいなくなってから闇祓いの力は極限に低下したとか

言われてるしよォ…」

「そうじゃないって、行動で示すしか無いでしょう。それだけですか?俺たちに

言いたかった事は」

 

アトスはレオナルドを見た。彼は首を横に振っていた。もっと重要な事だった。

これはまだ噂の範囲だが彼らは何かを狙っているらしい。

 

「ホグワーツを?」

「ハリー・ポッターと戦ってヴォルデモートが倒れた場所だぜ?闇側にとっては

聖地みたいなもんだ。起こっちまうかもな…また、ホグワーツの戦いが」

 

遠くを見ながら呟いた。そんな大きな戦いが起こらないことを祈る。それよりも

前に彼らを全員逮捕すれば良いだけの話だが、中々そうも行かないのだ。

サラが転入してから、何かと事件が起こりそうだ。

アラミスと並んで歩いていたサラ。

 

「うおっ、お前はアラミス・ナイトか!ついに彼女連れて来やがった!」

 

たまたま入ったカフェにいた若い男が声を掛けて来た。荒っぽい感じ。それに

アラミスを前々から知っているような言動だ。ヴィクトール・ゾグラフ。

なんと彼はホグワーツで働く司書だという。アラミスがしっかりサラが自分の

恋人では無く義妹であると説明した。すると彼は少しだけ残念そうな顔を

しながらも納得した。

 

「つーことは近々ホグワーツに転入するのか」

「今年からですよ。四年生として」

「なるほどなァ…教師たちが言ってた転入生ってのは嬢ちゃんの事か」

 

ヴィクトールはサラに目を向ける。彼女は会釈をする。

 

「まぁ、俺様は授業は持たねえし誰が来ようと関係ねえけどな」

「とか言いつつ、貴方は覚えてるじゃないですか。瞬間記憶って奴で」

「えぇ!?凄い…!じゃあ一度見たものは完璧に覚えられるんだ…」

 

そんな凄い能力を持っているという。気付けば彼が一人で座っている席の隣に

サラとアラミスは並んで座っていた。

 

「オイ、なんでわざわざここに座るんだ」

「良いじゃないですか。減るもんじゃないでしょ」

 

ヴィクトールが長い溜息を吐いた。

 

「この人、グリフィンドールとハッフルパフの生徒が苦手なんだと」

「何その食わず嫌いみたいな奴」

「うるせえ」

 

真っ先に否定はしなかったのでアラミスの言葉は間違いでは無いようだ。

アトスはグリフィンドールに所属していた。アラミスはスリザリン。

当時のスリザリンと今のスリザリンに違いはあるのかと尋ねると彼は

あると答えた。

 

「純血主義を名乗るガキが多くなったな。やっぱりスリザリンは顕著だぜ。

他の寮にもちらほらいるけどな。アラミス、お前はペルソナって知ってるか」

 

心理学ではペルソナとは所謂表の顔を意味する。普段の自分と公で見せる

顔。後者の事を言う。だがヴィクトールが提示したペルソナは未成年の

闇の魔法使いの事を言う。

 

「まぁ、ホグワーツのスパイみたいなモンだ」

「子どもまで使うのか」

 

アラミスは目を細める。自分たちだけでなく子どもも巻き込んで悪事を働く。

名をワルプルギスと言う組織だ。死喰い人を前身とする組織で、闇の帝王の

復活と主に魔法界から混血とマグルの追放、そして魔法界の全ての実権を

握ることを目的としている様だ。

 

 

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