夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三節「四年生の転入生」

九月になった。

 

「ここ!?」

 

見知らぬ顔の子が親と一緒に柱の中に吸い込まれた。柱の先にホグワーツ特急が

停車しているらしい。

 

「間に合って良かったわ~」

 

メリダとカイニスも揃い、ナイト家が全員集まった。初めての事で緊張している

サラに寄り添ったのはアトスだった。

 

「一緒に行こう、サラ」

 

アトスがそっとサラの背中を押した。柱の先にはホームがあった。そこに停車

している赤色の列車がホグワーツ特急。乗り込む前の話。

メリダがそっとサラを抱きしめた。

 

「行ってらっしゃい、サラ!」

 

無言でカイニスはその大きな手でサラの頭を撫でた。

 

「楽しんで来い」

 

ただ一言。

列車に乗ると、他にも多くの生徒が集まっていた。特に決まった席は無いらしい。

空いている席があると呼ばれてサラは座った。

 

「何だか見ない顔ね。一年生…というわけでも無さそう。あ、もしかして

先生たちが言っていた転入生?」

「うん。サラって言います」

「私はベアトリスよ、よろしくね。因みに私はレイブンクロー寮よ。一緒に

なれたら良いわね」

 

ベアトリスはホグワーツについて色々説明してくれた。それを聞きながらサラは

ホグワーツに行くことになった。四つの寮の話、授業の話。一年生から七年生が

いる。五年生になる監督生が男女でそれぞれ一人ずつ選ばれる。七年生になると

主席が選ばれるという。

 

 

学校に到着すると、教師から呼び出された。学校長エリザベス・アゼリアだった。

彼女はあることをサラを養子として引き取ったカイニス・ナイトから聞いていたが、

しかし何も言わなかった。校長直々にサラを全生徒に紹介するのだ。

始業式でサラの紹介とそして組み分けが始まった。それなりに長く悩んでいたと

思う。緊張していて一秒一秒が凄く長く感じた。

ようやく出された結果はグリフィンドールだった。

 

「さぁ、これを」

 

エリザベスの手でネクタイ、ローブ、マフラーが渡された。グリフィンドールの

赤色だ。始業式も転入生の紹介も終わった。何処でも大丈夫だった。何処の寮に

いても頼れる友人が最低でも一人はいれば充分だったから。

 

「私はエマよ。よろしく」

 

同級生エマ・ノース、サラが日本人であることもあって質問は日本に関わる

物が多かった。答えるのは苦ではない。案外楽しい。

 

「にしても、驚いたわ。ナイト家の養子だったなんて」

「どんなに驚くの?」

 

エマに加わってベアトリスも驚いていたのだ。ナイト家の養子って何か

凄いのだろうか。サラにはさっぱり分からない。

 

「元々は凄い大きくて格式のある家だったからね。それに、アトスさんも

アラミスさんも学生時代は凄い人だったのよ」

「学校でも名前を知らない人はいないわ。どちらも天才って言われるぐらいだから。

何だか羨ましいよ、そんなカッコイイ兄がいるなんて」

「血のつながりは無いけどね」

「それでも、家族であることに変わりはないでしょ」

 

サラの言葉にエマはそう返した。初めての友人は闇祓いになりたいと公言する

ベアトリス、そして同じ寮でなんと同室となるエマだった。

サラの事を快く思わない生徒は何人もいる。聞かれないように影でコソコソと

彼らは動いているのだ。

 

「ヤな感じね。何が楽しいのかしら」

「言いたい人には言わせておけばいいよ。言霊っていうのがあってさ。人に言った

言葉は自分にも返ってくるんだよ」

「まぁ、そーよね…でも、ちょっかい出して来たらどうするの?」

「そういうのも私は無視しちゃうかな。気にしてても仕方がないでしょ」

 

それらの言葉を聞いてエマは驚いた。サラは随分と大人な思考をしている。

試しに純血主義について聞いてみた。

 

「誰がどんなことを考えていても、別に良いと思うよ」

「良いって…そんなの!」

「思うだけなら、ね。それを行動に移すから悪いの。純血は凄いって思う事は

禁止されてないでしょ?押し付け合っても仕方ない。思ったことを何でもかんでも

他人に押し付けないようにすればいいのさ。口は禍の元、だよ」

 

誰がどんなことを考えていても構わない。口に出してはいけないとは

言わないが、言うときは気を付けなければならない。その言葉に過敏になる

必要は無い。過激な行動にさえ出なければ害は無いじゃないか。

 

「ホント、サラってば大人よね」

「そう?」

「そうよ。貴方みたいに考える生徒って意外と少ないんじゃないかしら」

 

自覚は無い。当たり前。だってサラにとってはこれが普通だからだ。

彼女の当たり前が周囲の当たり前で無いのも考えれば誰だって分かる事だ。

性別も顔も背丈も違うように考え方も、その人にとっての普通もそれぞれ

あるのだから。

 

「そういえば、知ってる?ペルソナって奴」

「内通者、だっけ?どうして突然」

 

エマはサラの事を心配して教えてくれるのだ。

 

「ペルソナって言ったり、灰って言ったり、どちらかで呼ばれるけどね。

気を付けなさいよ。そいつらはワルプルギスと繋がってるんだから。貴方の事も

気にしていると思う」

 

エマは深く聞かなかったが、不自然なタイミングの転入生だからだろう。

理由も不明で突然日本から来た生徒。それも報告されているとしたら…。

 

「今は深く考える必要は無いよ。必要になったら、考える。それで充分」

「そうね。もう寝ましょう。おやすみサラ」

 

消灯し、その日は眠りに就いた。だが彼女たちに予想通り、転入生の事は既に

知られていた。名前まで知られているのかどうかは不明だが、少なくとも

それによってサラがこれから安心安全の学校生活を送ることが出来ないことは

確定している。

その日は満月のはずだが、雲のせいでぼやけている。

 

 

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