夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三十節「エリザベス・アグリア」

「さぁ、振れ!」

「エクスペクト・パトローナム!」

 

振った杖の切っ先から白い光が放たれた。ベアトリスも、メイラも、そして

コレット・エーメリーも目を見開いた。ベアトリスがポツリと呟いた。

 

「出た」

 

白馬は宙を駆け、颯爽とコレットの前に立ちオーグを追い払う。彼らのもとに

走り出した。出た、サラの守護霊。この土壇場、この時にサラの中で何かが

弾けた。体が覚えたのかもしれない。

 

「言っただろ?あと一歩まで来てるって。一度掴むと、これは忘れない」

「アトスさん!?」

 

サラの義兄アトス。闇祓い。だが彼がどうしてここにいるのだろか。それは仕事。

オーグの雌の捕縛と他のオーグの対処の為に派遣されたのだ。それで校内を

巡回している最中、ライアン・ロザリーに引き留められたという。サラたちがいる

場所ではオーグが何度も目撃されていると。

 

「それで心配になったから急いだんだ。丁度良いタイミングだったな」

 

本当にアトスは良いタイミングで駆け付ける。それが有難いのは言わずもがなの事。

コレットギュッとサラに抱き着いた。小刻みに震える体。既に生徒にも被害が

出ている。コレットは運が良かった。彼女をサラは抱きしめ返した。

二人の様子を見て、これ以上自分は必要ないと判断したらしく、もうこの場には

いなかった。

 

「…なんだ?」

 

アトスは、騒がしい音を聞いた。何かが爆発するような音。

 

「アトス・ナイト」

「校長?」

 

エリザベス・アゼリアはアトスを呼び、ある場所へ駆け付けるように言う。

それは先ほど爆発音が聞こえた場所だ。無論彼は向かった。

 

 

 

アトスが離れた後でやって来たのは背が高い生徒だ。コレットが彼の隣に並ぶと

さらに身長差が明白になる。彼がコレットに誘われて研究部に名前を書いた生徒

バロック・フラハティだ。コレットの甘い香りは彼と同じものだ。聞けば二人は

恋人同士らしい。それに、バロックはサラたちと同学年。

 

「そっか。名前、書いてくれてありがとうねバロック」

「いや…構わない」

 

口下手なのだろう。それに感情を他者に見せるのが苦手なのだと分かる。

バロックはコレットと共に別の場所に移動する。

 

「意外と色んな人が賛同してくれているのね」

 

メイラも嬉しそうだ。サラたちと全く交流が無い生徒たちも自分の意志や

友人の誘いを受けながら参加を決意した。それぞれが本心を隠して生活している。

ここから抗う必要があるのは分かっていても、動けない者が多い。それは、校内では

変わり者だから。それを考えれば、最初に提案したベアトリスはとてもすごい。

 

「ちょっと悔しいわ。先を越されたってカンジ!」

 

ベアトリスはサラを横目に言う。

 

「私が出来るんだから、ベアトリスたちだって出来ちゃうよ」

「そりゃ、勿論やってやるわよ」

 

三人でハイタッチを交わした。課題授業はまだまだ続いている。授業は続きながら

ピースを探す。広い校舎内だ。他にもオーグと遭遇した生徒がいる。遭遇したが

守護霊の呪文を使って追い払うことに成功した生徒も。

 

「―立ち入り禁止!?」

 

グリシャが声を上げた。疲れた顔をした男は森を管理している。彼の名前は

マウロ・メイウッドは校長に言われてしまったらしい。

 

「…森にもピースは隠されているはずです。生徒の授業ですよ?校長が

本当にそんなことを言うのでしょうか…」

「それはおじさんも思ったよ。でもねぇ、本人に言われたからねぇ…」

 

グリシャは違和感を覚えた。エリザベスは生徒の為を思って行動をする。授業で

森に入らざるを得ないのに、何故このタイミングで禁止したのだろうか。

何か危険な事が起こったのか。だとしたら、他の職員にも共有されているはず。

 

「確か、校長先生は体調不良から復帰したタイミングがありましたね」

「そうだけど、どうかしたのかい」

「…その時なら、全てから離れている。少し、手を貸してください」

 

グリシャは半ば強制的にマウロを協力させた。彼らが向かった先は校長室だ。

この時間帯は何時も校長は外に出ていることを知っている。やってはならない

事だが、やらなければという使命感に駆られている。グリシャは部屋の扉を開き、

見回す。

 

「オイ、ちょっと危なくないかい」

「外を頼みます。すぐに見つけられそうですけどね」

「と、言うと?」

 

グリシャはトランクが置かれている事を不自然だと考えた。それに手を掛けるも

開かない。呪文を唱える。

 

「―アベルト(開錠せよ)」

 

カチャッと音を立てて鍵が開いた。そのトランクは魔法のトランク。広い空間が

広がっているのだ。そこに閉じ込められていたのは、もう一人のエリザベス。

彼女を外へ連れ出した。

 

「気付いてくれて助かりました。これは私の不注意です…」

「いいえ。無事で何よりです。それより、気になるのは貴方ほどの人を

トランクに閉じ込めた犯人です」

「それは…」

 

校長室の扉を乱暴に叩く生徒がいた。何か慌てている様子だ。それはスリザリンの

生徒、二年生のナディア・アウレリウスだった。

 

「森の方で、闇祓いの方が!私を庇って―!!」

 

エリザベスとグリシャは顔を見合わせた。迷う事は無い。

 

「君は確かナディアさんだね?森には僕が行こう。先生、あまり人は近寄らせないで

ください。来ている闇祓いはアトス・ナイトです。彼は若いですが、腕が立つ」

「分かりました。ポッター先生、貴方も気を付けるのですよ。深追いはしては

いけません」

 

彼女は言いつける。グリシャはその言葉を受けて、森へ急いだ。

 

「あー、校長先生?森の方なんだけど、貴方の偽物が俺に森には誰も近づけるなと

言われてましてね」

「そうですか。では、これでハッキリします。腹立たしい事この上ない」

 

繋がった。エリザベスに化けた者がワルプルギスの構成員を敷地内に仲間を

手引きしたのだろう。校長の権限を使って…。

 

 

 

 

 

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