夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三十一節「ハッフルパフ、閉幕」

「あー…」

 

エマの気力の無い声が部屋に反響する。ダミアン・バルツァーの黒い駒が

エマの白い駒を一つ、奪う。ルーク。チェスの盤面には駒が置かれている。

 

「油断したな、エマ」

「したのは認めるけどー…」

 

森の方では厄介な敵とアトスは対峙していた。彼の額がぱっくりと割れ、

血が滴る。

 

「まだ生きてるんだ?すごぉい♪まだまだ遊べるって!ガス」

 

ニコルとガス、二人とも似たような敵だった。殺しを遊びのように考えている。

そういえばヴィクトル・ゾグラフはニコルと言う女と戦ったことがあった。

運よく他のメンバーが助けに入ることが出来て逃げられたが、重傷を負っていた。

そんな相手を自分がすることになるとは…。無事では済まない事は百も承知。

 

「―アクシオ!」

「あぁ?」

 

ガスの体が引っ張られていく。更にアトスは即座に二つ目の呪文を唱えた。

 

「―ステューピファイ!」

「やられるかよ!―プロテゴ!」

 

一度距離を取る。相手は二人、少し分が悪いか。アトスが目を丸くした。

 

「何をするつもりだ!?」

「優しい闇祓いは、野放しにしたりしないよね~?」

 

瞬間、激しい爆発が起こった。同時にプロテゴの呪文を唱えたが、間に合わない。

生きているだけでも奇跡だ。爆発によって起こった煙で視界が塞がった。

 

「うわぁ!?」

 

生徒の声を聞き逃さなかった。

 

「生徒と自分、どっちを選ぶのかな?」

「そんなの簡単だ―」

 

二度目の爆炎。それを見届けた二人。

 

 

 

校舎内は黄色の光に包まれていた。決したらしい。終わったらしい。

どうやら一番多くピースを集めたのはハッフルパフ寮。それで校舎の中は

黄色で彩られることになったのだ。

 

「はぁ、残念」

「良いじゃん、ベアトリス。生死が関わっているわけでも無いしさ」

「そうだけど…勝ちたいって思わないの?サラ」

 

ベアトリスにそう聞かれて、思った事を口にする。

 

「あんまり思わないかも。自分はこれでは絶対負けないってカンジの特技が

無いからさ」

「えー…無頓着ね」

「あら、そう?私も同じよ。勝っても負けても、頑張ったことには変わりがないの

だから構わないじゃない」

「メイラも~?」

 

全生徒が大広間に集められて、ハッフルパフの代表生徒が副校長より、言葉を

受け、そして表彰状を貰う。代表生徒はエディだった。ハッフルパフ寮の監督生の

一人だからだろう。周りを見渡して、少し教師の数が少なく感じられた。

珍しいことにグリシャ・ポッターの姿も無い。

 

「では、今日はここまで。皆さん、寮の部屋に戻ってください。お疲れさまでした」

 

校長のエリザベス・アグリアから労いの言葉と共に寮へ戻るように指示が出された。

帰る前にサラはエディに声を掛けられた。

 

「お疲れ、サラ」

「お疲れ様、エディ。ハッフルパフの優勝だったね、おめでとう」

「ありがとう。アンタ、思ったか。教師が少ない事」

 

エディも違和感があったらしい。

 

「…何も無ければ、良いよな」

「そうだね。私たちが向かっても仕方ないよ。大人しく帰ろう。これぐらいの事で

叱られたくないし」

 

何も無いと良い。それが叶えば良かった。サラの耳に後から入って来るのは

衝撃だった。生徒たちは全員寮に戻った。

 

 

森の方ではグリシャやドロテアが駆け付けていた。タイミングは最悪だった。

何かが折れる音。呻き声。問答無用だ。

 

「―ステューピファイ!」

 

赤い閃光が杖から放たれる。不意打ちをひらりと躱した二人組は油断ならない相手。

 

「随分と容易に中に入ってくれたわね。お仕置き、してあげるわ」

「お姉さんたちも遊んでくれるんだ?でも残念。俺たち、捕まえる訳にはいかない」

「本当に残念。ニコル、お兄さんともっと遊びたかったな~…ねぇ?

グリシャ・ポッターさん?」

「…無駄な戦闘はやめておきましょう。先に彼を医務室に」

 

二人が逃げた後、グリシャは一息つく。動くのもやっとな人間が立ち上がり、

ゆっくり歩き出した。ふら付いている。彼に肩を貸す。

 

「無茶はいけませんよ、アトス」

「…すみません」

 

彼の顔を見て血の気が引いた。アトスが慌てて片目を隠した。目の周りだけでなく

全身に火傷を負っていた。骨も折れ、眼も潰れ…。何があったのか、彼は

称賛すべき行動をした。どうやら森に入り込んだ生徒を人質に取られたらしい。

生徒を逃がす代わりに自分が、そう言う事だ。まだ寮に戻っていない生徒が

森の前にいた。彼女が投げたのは小石だった。

 

「なんでもっと早く来ないの!?私の友だち、返してよ!!」

「良いんですよ、先生。事実なんで」

 

抑えようとしたドロテアをアトスは制止する。恨まれるのも仕方なしとしている。

彼は恨まれることを受け入れた。だが別の人間が彼女を叱った。

 

「何をしている!彼の容態が見えないのか!」

 

鋭い口調でそう言ったのはクラリーチェ・ロングボトムだ。小石を投げた生徒は

グリフィンドール所属の生徒である。

 

「勇敢なるグリフィンドールの名を汚すような事はやめなさい。君の恨みは

当然だ。彼らがもっと早くに駆け付けていれば、良かったかもしれない。だが君は

あれだけの怪我を負って戦えるのか?」

「そ、それは…」

「出来ない者が八つ当たりをしてはならない。哀しい思いをしているのは誰でも

同じさ。私の友人も、君の友人同様に今も悪夢に魘されているから…さぁ、

寮に帰ろう」

 

クラリーチェは彼女に手を差し伸べた。生徒は涙ぐみながら、手を繋いだ。

 

「アトスさん、サラには…」

「言わなくて良い。君が言わなくても、勝手に伝わるだろうから。その子の言葉は

事実だ。俺も、急いで駆け付けていれば」

「立場があるのでしょう。たらればの話よりも先の話の方が大事でしょう」

「…そうだね」

 

二人の生徒が寮に戻っていく。彼らが気付いた事は既に校長室で起こっていた。

校長室には瓜二つの人間が揃っていた。エリザベスが二人。

 

「よくもまぁ騙してくれましたね」

「フッ、お陰様でな。やはり、ホグワーツは甘いな」

 

正体はワルプルギスの構成員だった。ポリジュース薬を飲んで変身していたのだ。

彼はすぐに拘束され、アズカバンに収容されたという。

 

 

 

 

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