夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三十二節「花咲く時間」

ハッフルパフの寮監も務める教師、エレイン・ウェールズは医務室の職員も

兼任している。運び込まれたアトスの容態は、医務室ではどうすることも出来ない。

病院に彼は運び込まれ、そこで彼は気を失った。エリザベス・アグリアに扮した

ワルプルギスは監獄に、そしてオーグを追い払うことに成功した。更に生徒や

教師等の奮闘によって魔法省によりオーグのメスは確保されたらしい。

構成員が校長の権限を使って、ワルプルギスを校内に招いていた。

 

「クソ!」

 

テーブルを叩く。ケイシーの企みは失敗した。メスを捕まえる為に作戦を

練っていたというのに出し抜かれてしまった。今回の事件はホグワーツ側の

完全勝利で終わった。だが彼らとの戦いはまだ終わらない。

校長室。エリザベスは提出された騎士団、否、防衛術研究部を承認した。

無事に結成された軍団の存在はまだ周囲には知られていない。そう、彼らが

信じるのは騎士団が既に結成されていたという話。それを正そう。騎士団は

今、ようやく結成された。

 

 

翌日は休日である。サラは何時もでは考えられない速度で歩き続けている。

 

「オイ、サラ。落ち着けよ」

「もう、アラミスさんは心配じゃないの!?」

 

サラの速さに度肝を抜かれているアラミスにそう言った。行先は病院だ。

 

「心配だが、死んでないんだ。急がなくても死なねえよ」

「そうだけどさー」

 

病院の中に入ると彼らはすぐにアトスの病室に通された。彼はまだベッドの上で

眠っていた。全身包帯で巻かれている。酷いのは顔か。右目の周りには分厚く

包帯が巻かれている。痛々しい傷痕が残っている。

 

「貴方が彼の義妹?サラちゃんよね。私は医者のベル・ホワイト、よろしくね」

「初めまして。アトスさん、大丈夫ですか」

「大丈夫。…そうは言っても辛いわよね」

「結婚式が控えてるからか」

「えぇ!?」

 

アラミスの突然の暴露にサラは驚き、そしてベルは赤面した。りんごみたいに

真っ赤な顔になった。ベルとアトスは付き合っているらしい。アトスからベルに

プロポーズをして、結婚に至った。

 

「―本人より先にカミングアウトするなよ、アラミス」

 

騒がしかったのかアトスは目を覚ました。傷の痛みはまだ残っているようだ。

だが彼は少し無理をして体を起こした。彼から改めてベルと付き合っていること、

そして結婚式を控えていることが告げられた。嬉しいこと、祝いたいのだが、

それならば早く彼には怪我を治して貰わなければならない。

 

「怪我…」

「?大丈夫さ。ちゃんと治る」

 

アトスはケラケラと笑っている。だがすぐに笑顔が消えた。アラミスやベルも

息を呑むことになる。彼らの視線は一点に集まった。止めようのない涙は

サラの両目から零れていた。彼女の目から滴る涙を見て、笑っている場合では

無かった。つまらない冗談を言っている場合でも無い。

 

「だって、さ…少し、少しでも…だったら…」

「―」

 

アトスは手を伸ばした。折れていない右腕を伸ばす。サラの頭を自分の方に

抱き寄せた。何も言わなかった。彼はそっと彼女を抱いてやり、そして背中を

摩ってやる。

 

「心配かけたのは悪かったよ。ちゃんと完治させるから、もう泣くな」

 

アラミスもそっとサラの頭を撫でた。涙をようやく止めたサラは落ち着いた様子で

深呼吸してからあることを報告した。

 

「防衛術研究部、承認されたよ。これだけ人数が揃っているなら、止めることは

出来ませんねって。ポッター先生もいるから心配はいりませんねって」

「そうか。良かったな、設立出来て」

「うん」

 

部活動は仮の姿、本当はかつてのダンブルドア軍団のような騎士団の結成を

サラや彼女の友人であるベアトリスたちは目指していた。彼女たちの思いは

校長に伝わったのだ。サラとアラミスが帰った後、ベルは椅子に腰かけた。

その騎士団の存在は大丈夫なのだろうかと。

 

「確かに生徒が出張るよりも大人が出張った方が良いだろう。これを悪用することも

出来るが、別の噂が学校には流れているらしい」

「別の?」

「あぁ。つい先日、設立されたのにもっと前から既に存在しているという内容だ」

「…敵の策略かしら?」

「さぁな。分からないよ」

 

誰もやらないなど有り得なかった。誰かがきっと何か言い始める。悪い事ではない。

良い事だ。

 

「悪いな、ベル。こんな風になっちまってさ」

「良いわよ。顔、容姿で決めたわけじゃないわ」

 

恐らくアトスの火傷は元通りにならないだろう。目なんて、絶対に戻らない。

彼の右目を撫でて、ベルはある物を取り出した。

 

「良い物、あげる」

「うん?」

 

何かが取り付けられた。アトスは自分の手で右目に何かがあることを知る。ベルが

見せた手鏡には花が咲いた自分の目が映っていた。

 

「はぁ!?」

「折角のプレゼントなんだから、少しは喜びなさい」

 

ベルはいたずらっ子のような笑みを見せて、部屋を出た。医者としての仕事に

戻るのだ。病院では恋人関係というよりも患者と医者の関係。夜になり、空には

三日月が昇っていた。怪我が治り、普通の生活に戻るには少なくとも三週間程度

掛かるだろう。

その間にも、事は進んでいく。ホグワーツ側も、ワルプルギス側も。生徒たちの

義勇軍、騎士団…それは校内では防衛術研究部という名前で設立された。

新たな戦いへ針が時を刻む。

 

 

 




衝撃は受けましたが、まだまだサラとしてはすぐに立ち直れる範囲の
出来事です。
ベルとアトスがお付き合いし始めたのは互いにホグワーツを卒業してから。
仕事上、何度もベルの世話になっているときにアトスから告白しました。
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