夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第三十三節「ウィーズリー」

「どうして、副部長を断ったの」

 

今、ここにはベアトリス・ゾグラフが存在しない。いるのはサラと

メイラ=フゥだけだった。メイラはサラなら請け負うと思っていた。滅多に

他者からの頼み事を断らないので、珍しいと思ったのだ。

 

「私には荷が重いよ。エディは慣れてそうだったから、押し付けちゃった」

「そう。決めるのは貴方だから、私は何も言わないわ」

 

おっとりしているメイラもベアトリスに引っ張られる形ではあるが自主的に

参加を決めていた。彼女もサラの心の支えとなっている友人だ。創設はしたものの

本格的に活動するためには場所が必要だ。

休日に入り、サラ、ベアトリス、エディ、そしてヴィンスが集まった。

全員私服姿だ。

 

「あぁ、ごめんね。遅くなってしまったかな?」

「そんなことないですよ。時間ピッタリです」

 

グリシャ・ポッターも私服姿だ。変わらない穏やかな微笑を浮かべ続ける彼が

直接四人を集めたのだ。防衛術研究部と言う名前で設立された騎士団。その中で

四つの寮の代表者となっている生徒たちだ。代表になり得る生徒は幾らでも

いるが、彼らが選ばれたのだ。

これから彼らはハリー・ポッターのもとを…ではなく、ホグワーツの全ての

隠し部屋、隠し通路が記された忍びの地図を持っているであろう人々に会いに

行くのだ。彼らは既に集まっている。

 

「ここは…」

「別荘みたいな場所だよ。曽祖父が彼の後見人から貰った財産の一つ。

使わないならって、今は僕の財だ」

 

ハリー・ポッターの後見人の名前をシリウス・ブラック。ブラック家は純血一家で、

全員蛇寮に所属される。だがシリウスは獅寮に組み分けされ、自分の家の考えに

反対していた為、ブラック家の家系図から名前が消えている。一度は冤罪で

アズカバンに投獄されるも脱獄し、その後ハリーたちを助ける。ダンブルドア軍団の

魔法省神秘部の戦いで彼は命を落としたとされている。

 

「来たわね、グリシャ」

「久しぶりだね、フランカ」

 

フランカ・ウィーズリー、そしてその弟であるフィリップ・ウィーズリーが

揃っていた。フランカは魔法省で働くエリートだ。フィリップは曽祖父から続く

悪戯品専門店ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ。その店の経営をしている。

今は父がメインの経営者で、彼も姉と共に魔法省で働いている。

 

「フィリップも、久しぶり」

「はい」

「その子たちね?忍びの地図を探しているのは。はい、これでいいかしら」

「え?そんな簡単に…」

 

サラは無地の地図を受け取った。使用時、終了時に呪文を唱えて杖で叩くと

地図には画が浮かび、そして消える。

 

「どれほど役に立つか分からないけれど、使って。私たちが持っていても

仕方ないから。必要としている人に渡す、自然な事でしょう?」

「そうですけど…」

「満足しろよ。俺たち、もうホグワーツに入って何かすることなんて無いだろうし。

顔が広い奴が良い先生で良かったな」

 

フィリップはぶっきらぼうに言う。

 

「素直じゃないだけよ。私たちに出来ることがあれば、頼って頂戴。グリシャを

通してでも良いし、直接でも構わないわ」

「それを言うって事は、騎士団設立も知っていたんですね」

 

エディが指摘するとフランカは頷いた。グリシャを通して、騎士団設立の話を

聞いていた。フランカは騎士団設立には反対をしていたが、彼女たちを見て

考えを改めた。

 

「これが成長って事なんじゃないかしら」

 

地図は何も無い時にはグリシャが保管することになった。四人の生徒が帰った後、

フランカは呟いた。

 

「勿論、学校が生徒を守るべきなのは確かよ。学校は生徒を守り、そして生徒に

自分の身を護る術を学ばせる場所。だけど、その環境に甘えるような生徒では

そのまま卒業しても意味がないわ」

「少しぐらい危険な目に遭わせるぐらいが丁度いいって意味」

 

フィリップが付け加えた。心苦しい。だって彼らはまだ子どもだ。守る対象であり

戦わせるなんて事は出来ない。だが彼らも何時かは自分で判断し、身を守る必要が

ある。経験値を稼いだ方が良い。

 

「生徒が死んだなんて話、絶対出さないでよ?グリシャ」

「分かってるよ。しっかり彼らは責任をもって僕が護り、育てるさ」

 

 

 

魔法省闇祓い局。双子の席は空いている。

そしてナイト邸宅には双子が揃っていた。

 

「それにしても、良かったわ~。無事…では無いけど、生きているんだから」

 

メリダはカイニスに目を向けた。彼も無言で頷いていた。強面な顔がこの日は

少し頬が緩んでいた。実の息子が生きて帰って来たことに安心しているのだ。

嬉しいのだ。

 

「私も焦っちゃった」

「俺だって焦ったよ。運が良かったのかもな」

 

アトスは笑っていた。笑い事では無いだろうが…。少しホッとする。平和な

空間だ。休日に久し振りに家族全員が揃ったのだから。メリダたちもサラが

騎士団設立に関わり、そして所属することになったことを知っている。珍しく

カイニスが口を開いていた。それはメリダが危険だと厳しい口調で言った時だ。

 

「良いじゃないか、メリダ。好きにさせなさい」

「でも―!」

「自分でやりたいと言って行ったのだから、それを止めるのは野暮だろう。

俺たちは支えてやるのが仕事だ」

 

反対しなかった。生徒たちの行いを肯定していた。危険なのは百も承知だろうと。

自分たちで興したことを大人が口うるさくする必要は無いと。

やりたいことをさせればいいじゃないかと言う考えだ。

騎士団に入団することも決めた生徒の中には保身の為に所属している生徒もいる。

スリザリン寮では特に純血主義の生徒がいるらしい。そこから少しでも

身を護る為に所属する。色んな考えを持って決断した生徒が大勢いるのだ。

 

 

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