夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第六節「ハロウィン当日」

ハロウィン前日になって、突然帰りに知らされたのは学校の関係者以外にも

先の爆破騒ぎを受けて闇祓い局の職員も敷地内にいることになったという事だ。

これを聞いて騒めくのは、ほとんど生徒だがサラはふと視線を横に流した。

ポーカーフェイスを貫いているが、その目は焦燥。フォルクス・リー。

 

「(闇祓いが来ると嫌な事でもあるのかな?)」

「―ですが、皆さん。ハロウィンを楽しみましょう」

 

エリザベスの声色は至って穏やかだ。折角のイベントだからこそ、生徒には

普段の勉学を忘れて楽しんでもらいたいのだ。

夜になり、部屋にはエマとサラの二人だけがいる。

 

「闇祓いの人かー。その人たちも仮装するのかしら?」

「かもね。でも、わざわざ知らせてくれるんだね。そう言う事って」

「混乱したり、無用な騒ぎを起こさない為だと思うわよ。そういえば前に

ライアン先輩と話してたじゃない」

 

珍しいのだろうか。でもエマは気にしていた。エマも彼の事を不思議な人だと

思っていたらしい。人の心を読んでいるかのような言動。

 

「まぁ、ちょっとフワフワした雲みたいな人かも…。つかみどころが無いって

言うか、別の次元にいるみたいな」

「雲みたい、ね…何だかそれが一番しっくりくるわ」

 

エマはベッドに倒れ込んだ。だがすぐに起き上がりサラを見つめる。何か?と思い

サラは首を傾げた。

 

「サラって、不思議ね」

「私が?何処が…」

「それは分からないけど、あまり学校では見慣れないタイプっていうか…」

「似たようなこと、ライアンにも言われたよ。大胆だって」

「そう!それよ、それ!なんか、こう…冷静なのに、一度決めると大胆なのよねぇ」

「褒めてるってことで良いんだよね」

 

同室だと仲が深まるのはあっという間だ。親密になれば互いの良いところ、悪い

ところが見えてくる。両方を合わせて好きなのだ。

翌日はついにハロウィン。

 

「わぁ、可愛いじゃない!」

 

エマは黒猫、ベアトリスは小悪魔、サラは花嫁姿だった。ゾンビ花嫁だろう。

義母メリダは随分と気合が入っていたらしい。

 

「本物の花嫁みたいね」

「ありがとう。でも、恥ずかしいや…花嫁姿」

 

しっかりベールまでも用意されている。これは別に気合が入り過ぎているわけでは

無いようだ。他の生徒たちも色々な仮装をしている。エマたちと一緒にサラは

行動をしていた。エマに手を引かれて、サラとベアトリスも言うことになった。

誰なのか分からないが、ただボーっと眺めている二人組に彼女たちは声を掛けた。

 

「トリックオアトリート、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!この花嫁が」

「私かよ!」

「花嫁も大変ねぇ~」

「クッソ、他人事だからってー!!」

 

サラは気まずさを感じながら彼らを見た。二人とも似たような背丈だ。どことなく

既視感を感じる。彼らは揃って目元を仮面で覆っている。吸血鬼の仮装だろう。

 

「悪戯は困ったな」

「お菓子は?」

「忘れた」

「ンな馬鹿な」

「冗談さ」

 

二人組が交互に話した。そのうち緋色の髪の男が彼女たちにお菓子を手渡した。

 

「この程度の物で良ければ。これで勘弁しておくれ」

「お菓子が貰えれば充分よ。ね?サラ姫」

「なんか変わってるんですけど!?」

「普通の嫁から姫になってるわね。王族じゃない」

「そこじゃない!」

 

エマの言葉とベアトリスの言葉の両方に振り回されたサラ。三人組が去った後、

彼らは顔を見合わせる。

 

「案外バレないモンだな、アラミス」

「いいや感づいているかもしれないぞ、アトス」

 

ハロウィンに浮かれているから異変に気付くには時間がかかる。こうも華やかで

仮装をしていると誰が誰なのか分からなくなるのだ。夕暮れ時、夜に近づけば

近付くほどハロウィンパーティーと言う名のお菓子争奪戦はヒートアップする。

 

「そんなの聞いてないんだけど…」

「ちょっと聞いてなさいよ!これ、寮対抗なの。それぞれで一番多くお菓子を

手に入れるっていうものだけど、渡されたこのバッグにお菓子を入れて行けば

カウントされていくわ」

 

グリフィンドールの寮のシンボルが刻まれたバッグの中にお菓子が溜まっていた。

飛んできたカボチャにエマは動じず杖を振るった。するとカボチャが弾けてお菓子が

散らばる。

 

「こういうのもあるから」

「なるほどね~」

 

楽しいイベントの最中は人の緊張感が緩む。

 

「ねぇ、サラ。ちょっと付き合ってくれる?」

 

 

 

暗闇の中、ロクに超えも出せない状態になっていた彼女。藻掻いても抜け出すことが

出来ない。

 

「ここか?」

「みたいだね。いやぁ、本当に申し訳ない」

「良いですよ。相手の頭の方が一段上手だったってだけです」

 

箱を開いた。両手足を拘束され、さらに口も布で覆われていた。制服姿の女子生徒

ベアトリス・ゾグラフだ。彼女の違和感に気付いたのはアラミスだった。

アトスと彼は先にサラと共に行動するベアトリスに接触し、違和感を覚えた。

 

「上手い変装だけど、君たちの目を誤魔化す程では無かったってところかな?」

 

ニコラス・ヘイゼルはアラミスに目を向けた。

 

「まさか。たまたま犯人の演技が下手糞だっただけでしょう」

「サラは…」

 

自由になった彼女が真っ先に心配したのはサラの事だった。

 

「きっと大丈夫だ」

 

だが既にサラは犯人に連れ去られていた。その犯人はついにベアトリスの皮を

脱いで姿を見せた。

 

「私はね、探してたんだよ。教主が求める肉体を…君は背も瞳も全てが完璧だ」

 

フォルクス・リー。ホグワーツ教職員の一人にして、闇側のスパイ。

スパイにしては彼は役不足だったかもしれない。そんな彼も得意な事がある。

魔法動物の扱いだ。

 

「この子はバジリスクだ。絶滅したなどと言われているが、存在するのだよ」

「私がなんか特別みたいに言うけど、一体何処が…。もっと凄い子がいるのに」

「君しかいないのさ。こんなタイミングで、転入?不自然だ!」

 

それだけの理由で何かを確信したらしい。フォルクスの口から洩れたのは教主という

言葉。教主が何かしらの条件を持った肉体を探しているという事だ。

バジリスクが今か今かと目をギラつかせている。

 

 

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