夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第七節「ハロウィン終結」

ハリー・ポッターもかつてホグワーツに在学していた頃にバジリスクと

戦うことになった。彼を取り巻くヴォルデモートとの因果がそうさせたのかも

しれない。秘密の部屋と呼ばれる場所にいたバジリスク。それを倒したのは

彼が抜くことが出来たグリフィンドールの剣。だが今、グリフィンドールの剣の

行方が分からないのだ。組み分け帽子の中に残っているかもしれないが誰も

抜いたことが無い。

 

「でも、やるしかないでしょ」

 

僅かな確立にサラは賭ける。ならば探そう。まずは組み分け帽子だ。隠れていた柱が

バジリスクの尾によって破壊された。頭上を通り過ぎた太い尾。徐々にサラは

追い込まれている。敵は何もバジリスクだけではないことも忘れてはいけない。

身を屈めながら逃げ回るサラ。彼女の様子を見て、フォルクス・リーは造作も無いと

嘲笑していた。

走り回る花嫁を見捨てるほど神は冷徹では無いようだ。

 

「―ネビュラス(霧よ)」

 

低くも、しかしながら透き通る声が薄暗い空間に反響した。その呪文によって

室内が濃い霧に覆われた。視界を奪って何をするつもりだ。決まっている。

足音が微かに聞こえるのだ。

 

「場所は分かってる。倒すのは楽勝さ」

 

霧の中に白銀の刃が見えた。何だ?何処から抜いた?フォルクスにはまだ

見えていないようだ。それでも、この断末魔を聞けば分かるだろう。

 

「お、オイ!バジリスクよ、さっさと敵を蹴散らせ!!クソッ…

―フィニート(終われ)」

 

霧が晴れて、ようやく把握できる。その男をサラはつい先ほど見かけたばかりだ。

彼が持っていたのは組み分け帽子とバジリスクの血を吸ったグリフィンドールの剣。

それを抜くことが出来るのは真のグリフィンドール寮の生徒だけとされている。

 

「久しぶりです、リー先生。覚えていますか」

 

男がここでようやく仮面を脱いだ。アメジストのような瞳には敵意も見える。

しかしサラに向けるときには安堵が見えた。

 

「アトス・ナイト…!」

「えぇ。三年ぶりですね。敵として相対することになるとは思いもしませんでした」

 

フォルクスは彼の教師だ。アトスも彼からの授業を受けたことがある。本当なら

再会を喜ぶべきなのかもしれないが、今回だけは喜べない。アトスは闇祓いとして

生徒を守るために来た。フォルクスは闇側の人間として自身が仕える者のために

ここに立つ。

 

「退きなさい」

「無理です」

「何故だ」

 

フォルクスは目をカッと見開く。

 

「お前を推してやったのは私だ!師の命令に背くのか!?」

「そんなの、可笑しい!」

 

サラが口を開いた。

 

「たかが教師。推してやった?まるで教師だけの力みたいに言ってるけど、

それは違うんじゃない?」

「サラ…」

 

アトスは眉尻を下げた。随分と気の強いことを言うな…。

 

「今、もう一つの立場が出来た。闇祓いとして守るべき存在であり、俺にとっては

家族としても守るべき存在です。先生、自首してください」

 

アトスは武力行使を最後の手段にするつもりだ。自主さえしてくれれば、彼は

教師を傷付ける必要も無い。戦う必要も無い。だが相手の返答は「否」問答無用で

杖を振るった。だからアトスも振り返すしかない。

 

「サラ、下がって。流れ弾に当たるかも」

「う、うん」

 

どちらも互角だった。フォルクスの実力が単純に低いのか、それともアトスの実力が

純粋に彼を上回っているのか、サラには判断できない。だが、これはフォルクスが

アトスを過小評価しているからなのでは無いかと思った。フォルクスは何処か生徒を

下に見がちだった。他の生徒がどう思っているか分からないが…。

 

「―エクスペリアームス(武器よ去れ)!」

 

一瞬だった。魔法の掛け合いの勝負はアトスに軍配が上がった。しかしフォルクスは

まだもう一本の杖を隠し持っていた。

 

「クッソォォォ!!!―」

「…―ステューピファイ(麻痺せよ)」

 

相手を麻痺させた。意識を手放す直前にフォルクスはそっと微笑を浮かべていた気が

する。彼の不祥事に関しては公に、個人的な用事での辞職と説明された。事実を

知っているのは一部教師とサラ、アトス、アラミス、そして被害者のベアトリス。

そしてハロウィンのお菓子争奪戦は会場の灯りを見れば分かる通り。

 

「あーあ、残念。ハッフルパフの勝ちか~…」

 

エマが分かりやすく肩を落としていた。

 

「まぁまぁいいじゃん。結果なんてオマケみたいなものだよ」

「ホント、大人なんだからー!」

「楽しければ良いじゃん。そりゃ勝てたら嬉しいけどね」

 

賑わうパーティー会場の隅で校長エリザベスと闇祓いとなったアラミスとアトスが

いた。

 

「立派になりましたね、アトス、アラミス」

「お陰様で。リー先生の事は」

「流石に正直に伝える事は出来ません。学校のみならず生徒も教職員も、全ての

人間の顔に泥を塗ってしまいます。この罪は私も背負いましょう」

 

密かに罪を共に背負うと決めたエリザベスに対してアトスたちは何も言わない。

 

「サラ・ナイトは、闇に狙われているようですね。理由は何であれ、教師としても

私たちがしっかり守ります」

「そのセリフは俺たちのセリフです。妹を守るのは兄の務めですから」

 

アトスの返答を聞き、エリザベスは満面の笑顔を見せた。

 

「あらあら…。サラはとても幸せ者ですね」

 

今宵の月は満月。雲一つない空で星々と共に光り輝いていた。

 

 




かつての生徒に敗れる…。
下に見ていた者に追い越される。
悔しいけど、何故だか嬉しい。誰かが成長した姿を見ると、自分も
生まれ変わらないと、頑張らないと、と思いませんか?
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