夜明けの魔女   作:瑠璃。

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第二章「レイブンクロー編」
第九節「ゾグラフとポッター」


ハロウィンの10月が終わり、気が付けば12月だ。

寮同士が何処かピリピリしていた。理由は寮対抗のクィディッチ杯が行われる

からだ。その勝敗によってポイントが貰えるという。まぁ、だが、その前に

冬休みを挟むのだが…。

図書館の近くを通りかかった時だ。ベアトリスが司書のヴィクトール・ゾグラフと

会話しているのを見かけた。思わずサラは身を隠す。

 

「(何だか不穏な…)」

「あの二人は兄妹よ」

「わ―」

 

口を塞がれた。おっとりした女子生徒だ。ベアトリスと同じレイブンクローの生徒。

彼女はメイラ=フゥと言う名前でベアトリスの相部屋。ベアトリスも確か名字は

ゾグラフだった。どことなく似ているような気がする。

 

「兄妹なのに、仲が悪いのか…」

「兄妹だから仲良しなんて、ただの固定概念よ。仲が良いから意見がぶつかるときも

きっとあるわ。私には兄妹がいないから分からないけど」

「私も同じだよ。あ、いや、今は兄が二人もいるけど」

 

一人っ子だったが、今はアトスとアラミスという自慢の兄が二人もいる。サラの事は

多くの生徒が知っている。特にベアトリスと話す機会が多い彼女は知っている。

 

「そうだったわね。アトスさんとアラミスさんの義妹」

「二人は有名?」

「えぇ勿論。それにナイト家も有名よ。かつては大きな家だったけど、闇の

魔法使いとの戦いでかなり力が衰えてしまったらしいけれど」

 

そんな感じはしなかった。まぁ、それはあくまで来たばかりのサラの感覚だ。

メイラはサラよりもっと色々情報を持っている。信頼に値する。ふと耳に乾いた音が

聞こえた。

 

「止めないと―」

「待って」

 

ヴィクトールはベアトリスを叩いたのだ。良くない。兄妹は二人しかいないのに…。

だがそこに仲裁者が現れる。見たことが無い人だ。男性教師。

 

「ヴィック、もう止さないか」

「なッ!?グリシャさん…!」

 

暴力とは無縁な顔の若い男。彼は凄く有名だ。何せ彼はあのハリー・ポッターの

曾孫である。彼と同じ緑の瞳を持つ。だが彼は自分には曽祖父のような凄い

力は無いと告げていた。

 

「分かりましたよ…」

 

ヴィクトールが退いた。グリシャ・ポッター。新たに学校にやって来た闇の魔術に

対する防衛術という授業の担当教師だ。

 

「隠れてないで出ておいで。彼女の友人だろう?」

 

グリシャはメイラとサラが隠れていることを察していた。二人が姿を見せると

ベアトリスは苦笑した。

 

「もしかして見てたの?」

「ごめん。悪気があったわけじゃないんだけど…でも、気になっちゃって」

 

サラは目を泳がせてしまった。

 

「素直に言えば良いじゃない。心配してきたって」

「そうだったんだ。良いのよ、気にしないで」

「気にしないようにするけど…何時でも話して。辛い事とか、心のうちに留めるより

外に放出した方が楽になることもあるからさ」

 

サラもメイラも、これ以上深くは踏み込まない。これはヴィクトールとベアトリス、

ゾグラフ兄妹の問題だ。頼られれば助力は惜しまない。だがどうするべきか

決めるのはあくまで本人なのだから。その辺りは教師グリシャも弁えている。

 

「良かったね。頼れる友人がいることは凄い事だ。ベアトリス、彼はたった一人の

兄なんだ。自分の気持ちはハッキリと告げること」

「…はい、必ず」

 

グリシャの授業を受けることになるだろう。彼もまた、これから先の戦いで重要な

人物として関わって来る。そしてベアトリスとヴィクトールの溝もこれから

変化をするだろう。

この日は休み時間や昼食の時間はベアトリスとメイラと過ごしていた。

彼女は何処か浮いた存在だ。

 

「そう?私としてはサラ、貴方も不思議だと思うけど」

「そんな感じの事、よく言われるよ。そんなに変わってるかな?」

「別に良いじゃない。誰も彼も、みんな同じなんて勘弁だわ」

 

ベアトリスが言う。外は肌寒い。秋の涼しさよりも。もう秋では無く、冬に

なったという証拠だ。

 

「もうすぐ冬期休暇ね」

「そうだね~。それまでは学校も頑張らないと」

「と、ナイトが申しているわ」

「上手い事引っ掛けようとしない」

 

ベアトリスの言葉にサラは返した。確かに上手く掛かっているが、今なのか?

 

「ちょっと羨ましいよ、サラが」

「え?」

 

ベアトリスは何処か遠くを見るような目をしていた。彼女はぼそりと口にした。

 

「アトスさんもアラミスさんも、凄く良い人だから。私、二人みたいな闇祓いに

なるのが夢なのよ」

「そっか。ベティなら、なれるよ。凄く優しくて、勇敢だからさ」

「そう言ってくれて、嬉しい。でも、兄は凄く反対してて…」

 

それで喧嘩していたのか。でも、この原因は凄く解決するのが簡単なのでは?

だがこれは本人たちが気付かなければならない。そしてその話をして昼休憩が

終わった。次の授業は新任グリシャ・ポッターの授業だ。

 

「先生ー、そんな凄いのかよ?」

「ハリー・ポッターの血を引いてるなら、闇にだって勝てんだろ!」

 

そんな心無い言葉が飛び交ったが、グリシャは動じていなかった。

 

「そんな簡単な話ではないよ。どんな英雄も一人で全てを終わらせるわけではない。

一人の力には限界があるんだ。僕は曽祖父ほど凄いことは出来ないから」

 

何処までも清廉潔白な人だと思った。彼の授業は分かりやすい。新任にしては

まるでベテランのような教え方だ。

 

「ポッター先生、辛くないんですか?」

 

授業が終わってから、サラはグリシャ・ポッターに声を掛けた。多くの生徒が

友人たちと好き勝手していた。サラの質問にグリシャは答えた。

 

「辛くないよ」

 

 

 




兄妹喧嘩、したことある人は多いのでは?
物の取り合い、ほんの少しの差…原因は色々ですよね。
この兄妹がすれ違う原因は?
当人以外の物が関係しているとは思えません。
なら原因は何でしょう?
目には見えない、内に秘めた本心こそが喧嘩の原因では?
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