姫とメイドと不死の王   作:すごろく

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ようこそ。

予告通り今回はログハウスを離れます。

でわ、ごゆっくり。


その4 王と配下と鬼教官

「オラっ!ソコっ!チンタラ走ってんじゃねーぞっ!」

「そんな踏み込みじゃ豆腐も切れんぞっ!ボンクラっ!」

 

「中々の気合じゃないか、アインザック君。」

「おお、これはパナソレイ市長。」

「しかし話を聞いた時は流石のワシも驚いたよ。なにせ、元王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ、その彼と五分の勝負をしたブレイン・アングラウス。2人揃って魔導国へ転職したって言うんだからな。」

「それは私も同じですよ。突然、魔導国の方から冒険者育成施設へ教官を派遣すると知らせがあって、どんな奴かと会ってみたらあの2人です。ギルド内も大騒ぎですよ。」

「今更、昇級を重ねてアダマンタイト級に成るのは時間の無駄だと言う話だったな。それはまぁその通りなんだが、よく他の冒険者が黙っているな。」

「無論、いくら名前があっても規則は規則ですからね、それを言わばゴリ押しで教官にしたのですから今回の魔導国建国からのモヤモヤとあって不満は爆発ですよ。」

「一悶着あったんだって?立場上、介入は避けたがね。」

「不満のある奴は前に出ろっ!ですよ。2人して片っ端から片付けてしまいました。」

「なるほど。彼ららしいって言えばらしいな。それで?その後は大人しくなったのかね?」

「元来が腕っぷしだけで生きている連中ですからね。力でねじ伏せられたらグウの音も出ません。」

「なら良いんだが。知っての通り、まだまだ魔導王に対しての不信感が拭えていない市民が居る。一応、モモン君が抑えていてはくれているが、彼とて万能では無い。地下へ潜られて反乱でも起こされたら、この街は文字通り死者の街になる。」

「はい。私もその事は心配しています。ギルドの連中にもそれとなく探りを入れて、芽が出る前に不満分子は取り除かねばと考えています。」

「頼むよ。我々はこの街の市民の安全を守らねばならんのだかね。」

「承知しました。お互い骨折りですな。そうだ、その魔導王から美味い酒を貰っているんですよ、どうです?」

「昼間からか?」

「たまには息抜きも必要ですよ。」

「それも、、、そうだな。ではご馳走になろう。」

 

「ヨーシっ!今日の訓練はここまでっ!全員汗を流してサッパリしてから、いつもの店へ集合だ!」

 

『教官殿!ゴチになりますっ!』

 

「おいおいガゼフ。大丈夫なのか?ここんとこ連日のドンチャン騒ぎじゃねーか。いくらイイ給料もらってるって言っても限度があるだろう。」

「なんだ?らしくない心配か?」

「だって、お前。毎夜毎夜30人近く連れての騒ぎだぜ?流石に払いの心配もするって。」

「心配するな。手は打ってある。」

「なんだそれ?どんな手を打ってるってんだよ。」

「ほれ、お前もあの地下墳墓で会ったろ?赤い服着たデミ、、、デミ、、、なんとかって奴。」

「デミウルゴス?」

「そーそー、そのゴス。そのゴスにな、要望書を渡したんだ。」

「要望書?一体なにを頼んだんだ?まさか就任したばっかで昇給願いはねーだろ、前借りか?」

「バカ!ちげーよ!必要経費を認めろって要望書だよ。」

「ひつようけいひ?」

「お前は勤めた事が無いからわからんだろうが、任務を達成する為に必要な金の事だ。」

「ちょっと待て。そーゆーのはポケットマネーから出るもんじゃねーのか?」

「ちょっとした額ならな。でもデカいのは無理だろ?そこで必要経費の出番なのさ。」

「通るのか?その要望書。俺たちナザリックじゃまだ新参だぜ?それに言いたかねーけど、あんまり歓迎されてねー気がすんだよな。」

「なんだぁ?お前、今日はやけに気弱じゃねーか。いつも強気なブレイン君は何処行った?」

「茶化すなよ。だってよぉ、2人してアインズさんとこへ挨拶行った時のこと覚えてっか?」

「おお、もちろん覚えてるよ。決死の覚悟だったからな。」

「お前がさぁ、王国も未来が無いんで世話になるって言ったじゃん?俺、チラッとアインズの顔見たんだよ。そしたらさぁ、ちょっとだけガッカリしてたんだよな。」

「お前、あの骸骨顔の表情分かるの?!」

「いや、ハッキリとはわかんねーよ?ただ、上手く言えねーけど、なんだ?こいつら、みたいな感じ。」

「ふ〜ん。いやな、俺も変な空気だなぁってのはあったんだよ。カッツェ平野で誘われた時の熱い想いっての?それがなーんか感じねーなーって。まぁあの時から時間経ってるし、ほら、戦場ハイってのもあるじゃん?やたら気持ちが昂ぶるってやつ、あれだったのかなぁなんてよ。」

「な?んで、極め付けは配置の話になった時だよな。俺たちはてっきり幹部候補生の内勤だと思ってたじゃん、それが「お前たちには若き冒険者の手本になってもらう」とかなんとか言ってさ。体よく追い出されたんだよな。」

「え?そーなの?俺はさあ、もう内勤とか嫌だったんだよね。また上司の顔色みたりさあ、ウンザリじゃん?だから今の職場は結構気に入ってるぞ。」

「いや、俺も今の状況が嫌とかじゃねーんだよ?昼は若いの相手に汗流してよ、夜はオメーと馬鹿言って酒喰らって大満足よ。」

「だったらイイじゃねーか!なんとかなるって!さぁ!俺たちも行こうぜ!」

「だな!ウダウダ言っても始まらねーや!」

 

 

「と言う訳で今回の帝国属国化はアインズ様のご尽力で何の問題も無く事が進みました。」

「私たち守護者も今一度気持ちを入れ直して行かないとね!」

「マッタクダ。イツマデタッテモ、アインズサマニ、オンブニダッコデハ、ナサケナイ。」

「それにしてもいつもながらの鮮やかな手法。恐れ入りんした。」

「や、やっぱりアインズ様は、その、凄い方です。」

「なに当たり前の事言ってんのマーレ。アインズ様は至高の41人のまとめ役だったんだからね!」

(偶然だから。偶然なんだからね?だからそんなに持ち上げないでくれ!頼むからさぁ!)

「ゴホン!皆のもの、よく聞け。今回の帝国からの申し出は恐らくは事前に協議されていたのだろう、そこへ偶々、そう偶々だ、私が行ったのでああ言う事になっただけの事だから決して私1人の力では無い事を忘れないで欲しい。(マジで!)」

「おお!おお!流石はアインズ様!我々の不甲斐なさを慮って!勿体なきお言葉、この不肖デミウルゴス、しかと肝に銘じました。」

(その、流石はアインズ様は止めろって!ドキッとするから。)

「では、やはりあのガゼフとやらの一件もアインズ様のご計画通りと言う事でありんすか?」

「その通りよ、シャルティア。全てはアインズ様の手の内、そうでございますよね?アインズ様。」

「え?お、おお。その通りだアルベド。よく分かったな。(って何回目よ?このパターン)」

「シャルティア、分からないかね?ガゼフは冒険者モモンの代わりになるのだよ。」

(なに言い出すの?モモンの代わり?)

「ああ、それでワザと冒険者育成施設の教官にしたのでありんすね。」

「そうだね。冒険者モモンも今は不満分子の抑え役になっているが、やはり素顔を晒せないと言うハンデは小さくはないのだよ。いずれ破綻が来る。それを見越してのガゼフなのだよ。」

「ああ!なるほどでありんす!ガゼフなら名前も知れているし平民出身と言う事もあってモモンより親しみやすい、って事でありんすね?」

「その通り。常に何手も先を見据えるアインズ様だからこそですね。」

「凄いや!じゃあ、あのカッツェ平野の時から既に仕込まれていたのですね!アインズ様!」

「ま、まーな。しかしアウラよ、その、そうだ!全てが予定通りに進むとは思わない事だ。決して油断してはいけないのだ。」

「ハイ!よっく、わかりましたっ!ね、マーレ!」

「は、ハイ!ぼ、ボクもしっかり覚えておきますね!」

「(アブネー)では、次の議題へ移ろうか?」

「そう、、、ですね。王国の仕上げについてはアルベドの方から後ほどご報告いたします。私からは聖王国攻略関係ですが、現在計画は問題無く進行中です。既に敵陣への工作員配置も完了しております。最終段階ではまたアインズ様のお手を煩わせる事になるのが心苦しいところでありますが。」

「デミウルゴスよ。お前の配慮は嬉しいが、部下にばかり働かせて寝ている様な支配者に私は成りたくはないのだ。分かるな?」

「ハッ!お言葉、しかと肝に銘じます。それではと言う訳ではございませんが、要望書が1通上がって来ております。」

「要望書?誰からかな?」

「ガゼフ・ストロノーフでございます。」

「新参のしかも下等生物如きがアインズ様へ直接に頼み事など!不敬にも程があるわっ!デミウルゴス!そんな物は捨てておしまいなさいっ!」

「全くでありんす。今回ばかりはアルベドに同意するでありんす。」

「イチド、レイギトイウモノヲ、タタキコマネバナランヨウダナ。」

「いっそ、殺っちゃおうか?」

「ぼ、ボクもお姉ちゃんの言う通りだと思います。」

 

「騒々しい!静かにせんかっ!」

 

『申し訳ございません!』

 

「先程も言った様に、小さな綻びから大事が破綻してしまう事もあるのだ。ガゼフがニンゲンだから新参だからと、その意見を捨て置くのなら最初から迎え入れなければ良かった事になる、違うか?デミウルゴスよ、その要望書にはなんと書いてあったのだ。」

「要約しますと、魔導王陛下の名声を上げるために必要な経費を認めて欲しい、と言う旨でございます。」

「ほう、、、私の名声か。少し興味があるな。具体的な事は書いてあるのか?」

「はい。と申しますか、認めて貰いたい経費はただ一点です。」

「一点?」

「訓練後の飲食費用とあります。」

「ん?確か訓練施設では格安で食事を提供していると聞いているが?量が足らないのか?」

「ではなくですね、、、その、、、酒代です。」

「どうも要領を得んな。良い、デミウルゴス。包み隠さず申してみよ。」

「どうも、訓練を終えてからほぼ毎夜のごとく連れ立って酒場へ繰り出しているようです。そこで魔導国の素晴らしさ、魔導王の偉大さを説いている、と書いております。それと、ここは強調してありますが連帯感を高める為、らしいです。」

(あ〜なるほどね。仕事帰りの居酒屋代を認めてくれって話か。)

「あり得んせんっ!どうしてニンゲンの馬鹿騒ぎ代をナザリックの貴重な財源から捻出するでありんす?どうせ、一緒に来たあの男の入れ知恵に違いないでありんす!」

「シャルティア。アンタさぁ、なんでそんなにブレインの事を嫌うのさ。なんかあったの?」

「あの男はいきなり爪を切らせろと言って来たでありんすよ?あり得んせんっ!」

「別にイイじゃん。爪ぐらい。」

「アウラ!ヌシは初対面の男にいきなり爪を切らせるでありんすか?」

「え!?初対面で?」

「そうでありんす。出会う度に同じ事を言ってきて、挙句は土下座までして頼むんでありんす。あ〜!今思い出しても鳥肌が立つほどキモいでありんすっ!」

「それは、、、ちょっと、アタシも退くかな?」

(ブレインって妙な性癖でもあるのか?人は見かけによらないってマジだな。)

「そこでアインズ様、少し検証してみようと思うのですが?」

「シャドウデーモンでも使うのか?」

「実は事後報告になるのですが、パンドラズ・アクターと共同で研究しておる物がございます。」

「(パンドラズ・アクターだって?)ほう、続けろ。」

「ハッ!カルネ村の新ポーション、牧場でのスクロール素材の開発と並行してマジックアイテムの改良に取り組んでいたのです。マジックアイテムの改良と言う事でパンドラズ・アクターの熱意も並々ならぬものがございまして、この度ようやくカタチになりました。それを使ってみようと。」

「(ああ、マジックアイテム絡みなら分かるわ。アイツ、アレらに目が無いからな。)ふむ。実験を兼ねてと言う訳だな。面白い。やってみよう。」

「ありがたきお言葉。丁度、時刻も良い頃ですので早速始めさせていただきます。」

「リモートビューイングか?」

「左様です。今までは音声が無かったのですが改良して音声も出るようになりました。」

「それは凄い発明じゃないか!素晴らしい!(奴は天才か?)」

「さてと、この辺りの酒場の筈、、、ありました!ココですね。それで、、、こう画面を見ながらセットして横のツマミでボリュームを調節して、、、。」

 

「おい!ジョッキは行き渡ったか?」

「ウエーイッ!」

「ヨーシ!じゃあ乾杯だっ!」

「ウエーイッ!」

「今日も皆、よく頑張った!ガッツリ食って呑んで、明日もやってやろーぜっ!お疲れっ!乾杯っ!」

「乾杯っ!」

「プハーっ!生き返るっ!おーい!おかわりだっ!」

「流石、教官だっ!呑みっぷりが違う!」

「アタボーよ!駆けつけ3杯ってなっ!行くぞっ!」

「アッ!ソレ!今日もお酒が美味いのは!

アインズ様のお陰ですっ!ヨイショ!一気!一気!一気!」

「魔導国バンザーイ!アインズ様に栄光あれ!」

「ヨシ!もう一丁!一気!一気!一気!」

「ウエーイッ!」

「ウエーイッ!」

 

『・・・・・。』

 

(コレって完全にアレだよな。体育会系のノリ。)

「なるほど。書いてある事に嘘はない様だな。」

「それにしても魔導国の冒険者にしては少し下品ではないかしら。」

「アルベドよ、それは違うぞ。あの者たちは寄せ集め集団だ。ついこの前までは敵味方の関係だった。そんな者たちが、杓子定規なやり方で一つになれるか?多少は荒っぽいやり方でも要は同じ目標を持てば良いのだ。」

「はぁー、アインズ様がそう仰るのなら。」

「ぼ、ボクは少し分かる気がします。」

「ほう、マーレには分かるか。」

「は、ハイ。魔導王が建国した時に皆んなでパーティーしましたよね?あの時は凄く楽しくて嬉しくて絶対忘れない思い出になりました。多分、それと同じだと思います。」

「そうだ。その通りだ、マーレ。よく理解したな、偉いぞ。」

「えへ、えへへ。」

「いいか、よく聞いて欲しい。恐怖による統治は長続きせん。無論、現在進行中の飴と鞭作戦の鞭は恐怖なのだが過程に使っているだけなのだ。それを支配後も使ってはならん。」

「では、この要望書は許可と言う事で?」

「たっぷり食わせて呑ませて、広めさせるのだ。魔導国の素晴らしさをな!」

「ハッ!仰せのままに!」

「それとパンドラズ・アクターに後で部屋に来る様に伝えてくれ、直接に褒めてやりたいからな。では、本日の守護者会議は散会っ!」

 

(あ〜疲れた。ホント、この会議って神経すり減らすよな〜。俺も呑めるものなら呑んで寝ちまいたいよ。それにしても、ガゼフだよな。アッサリと王国に見切り付けましたって来た時には正直ガックリだったけど、自分で言った手前帰れとも言えなかったんだよな。だってもっと熱い男の印象だったもんな。この命は王に捧げたものだ!なんて言ってさ、あの場で果てるんじゃないかと思ってた。それが、少し考えさせて欲しいって言い出したんで逆にこっちが慌ててしまってさ。あいつの条件聞いて、折角呼んだ仔山羊たちも消してしまったんだよな。ひょっとしてガゼフって策士なの?脳も筋肉で出来てんじゃなかったの?でもまぁ案外、魔導国の役に立ってるみたいだし俺のメンツもたって良かったよ。あこでクーデターの相談でも始められたら、守護者たちに総スカンだもんな。それだけはゼッタイに避けないと。さてと、また長い夜が始まるなぁ。久しぶりにパンドラズ・アクターの顔でも見に行ってやるか?一応は親子関係だし?はぁ〜、支配者も大変だよなぁ〜。ピンで来た方がラクだったかな。)

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

アインズ様が出て来ると
独り言が多くなります。

次回は再びログハウスへと舞台は戻ります。

じゃあ、またお会いしましょう。

ありがとうございました。
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