Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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暫定すずなちゃんは、目次へアップ。


104 Fairy/AI

「……しかし、今から東京に向かう予定なのだが、すみれが来ないな」

 

 やるべきことは終わった、とばかりに楓はだらっと、だらしなくソファにもたれ掛かっている。

 

「ま、お疲れのようでしたからね」

「そうか。すもものところに泊まらせたと言っていたな……寝息、と言うか、いびきはうるさくなかったか?」

「なに。可愛らしいものでしたよ」

 

 深夜に差し掛かる頃に、すみれがすももの部屋にやってきたのだが、ベッドに入るとあっという間に眠りに落ちてしまった。

 

 くぴー、とか、くぴゅるる、とかどうやったらそんな音がするのかすももには謎だったが、模擬戦のときのすみれとは異なり、邪気のない寝顔は天使のようで、実に可愛らしいものだった。

 

 そのいびきは、女子としてはどうかと思うが、すもも自身は集団生活に慣れているため、特に気になることもなかった。

 

「……しかし、あの様子では、昼まで寝てるんじゃあ、ないですかねぇ?」

「そうか。それは困ったな……起こすのは可哀そうだし」

 

 腕を組んで悩ましそうにする楓に、せりは怪訝そうな表情をしながら、隣にいる

 

「……何かしれーさん。すみれさんに甘くない?」

「いや、すみれさん見てたら、甘やかしたくなるじゃない?」

「あー…それは分かる。わんこみたいで構って感すごいよね」

「こんなこと言ったら、失礼かもだけど……ちょっとバカっぽいところが特に」

 

 くすくす、とすずなが笑うので、せりもちょっとだけ噴き出した。

 

 ノバラとすみれが同い年ということで、せりも同い年な訳だが、一番体が大きく、容姿も大人っぽいすみれが、実は最も子どもっぽい性格で、一番体が小さく、幼顔なノバラが精神的に成熟している。

 せり自身は子どもというよりかは天然よりだが、ノバラに比べれば、精神的に幼いと言わざるを得ない。

 

 ……同い年組は身長が低く、幼児体系なほど大人という逆転現象が起きている。

 

「寝過ごしたぁぁぁ!!」

 

 自動で開いた扉から飛び込んできたのは、とりあえず、服を着て急いできました、と言わんばかりのすみれだった。

 

 髪はぼさぼさ、制服よれよれ、いつものポニーテールは、サイドポニーのように見えなくもないが、ちゃんと結わえていない感じがすごすぎる。

 

『だから早く起きろって言ったのに……』

「それなら、もっと早く起こしてよぉ!?」

『何度もアラーム鳴らしたわよ?』

「デイジーちゃんなら、もっと他に起こし方あるでしょ!?」

『なぁに? 高圧電流でも流して欲しかった? さすがの私でもスマホ越しではそんなことできないよ? スマホ爆発させていいなら、過電流流してバッテリー吹っ飛ばしてでも起こしてあげたけど?』

「スマホ壊したら、ノバラちゃんに怒られるじゃない!?」

『そ。だから、やらなかったのよ?』

 

 手慣れた様子で司令官室の鏡で髪を結わえ直しているすみれを見るに、ノバラがいなければ、普段からこの調子ということだろう。

 

「デイジー。せっかくだから、挨拶しろ。新しいお友達だぞ」

 

 楓がすみれの方に向かってそう言うと、デスク後ろの大きなモニターの電源が入る。

 

 画面上では、桜吹雪が舞い上がり、シルエットだけの少女がクルクルと回りながら、衣装を身に着けていく。さながら、魔法少女の変身シーンだ。

 

 きゅぴ~ん、という音とともに、金髪ツインテールの少女が右手で目の辺りで横ピースをしながら、ポーズを取った。

 

『やっほー! リコリスの皆! ラジアータ姉妹の末妹、すーぱーAIデイジーちゃんでーす! よっろしくねぇぇ!」

 

 テンションたっかいなぁ、とすずなは呆れ顔でその画面を見ていたが、見覚えのある姿に、ふと、思い至った。

 

「あ! 妖精さんじゃん! 久しぶりに見た!」

『お? おぉ!? そういう君は、すずなちゃんか~! ついにノバラに発見されちゃったのかな? 残念無念☆』

 

 けらけらと画面の少女はすずなを指さしながら笑っている。

 

「えっとぉ……?」

 

 せりはあまりの展開についていけず、首を傾げていたが、楓が苦笑しながら補足する。

 

「DA仙台支部の誇るAIのデイジーだ。試作だが、ラジアータの妹、後継機に当たる」

「は……はぁ……?」

 

 せりはイマイチピンと来ないが、本部のラジアータが凶悪犯罪未然防止のために各種情報収集等を行い、犯罪が起こる前に、もしくは被害が大きくなる前にリコリスを投入していることくらいはさすがに知っている。

 

 だが、AIとは、こんなによく喋るものだっただろうか、と一層首を傾げざるを得なかった。

 

「すずな、妖精さんって何?」

「あぁ……札幌支部の方の七不思議の一つだったんだよね。夜にスマホを見ていると妖精さんが通過するって言うの。夜中に隠れてスマホでゲームしてたりすると、妖精さんが来て、『良い子は早く寝なさい』って言って、強制的に電源落としていくんだよ。それ以外にも気に入った子にはしばらく、アイコンみたくなって、フォローしてくれるって」

『すずなのところでは、一か月くらい遊んでたかな?』

 

 その頃のデイジーとは言えば、ある程度自我が芽生え始めていたところで、色んなものに好奇心が出ていた。ノバラを見ているだけでは足りなくて、訓練生のスマホに自分の一部を飛ばして、色々悪戯していた。

 

 ちなみに、この噂。

 

 電子戦を得意とする者がほとんどおらず、札幌支部では唯一そっち方面の技術を持っていたノバラが、『悪戯妖精』の正体ではないかと噂されていたとか、いないとか。

 

「あ、すずなが気いられていたんだ?」

 

 せりにそう言われて、改めて、当時のことを少し思い出す。

 突如としてやってきた妖精は、すずなの訓練量から、必要なたんぱく質の摂取できるよう食事の献立や不足している筋肉とその鍛え方などをアドバイスして、すずなの訓練のサポートを行っていたりした。

 気まぐれな妖精のサポートは、効率的なものであったし、短い間だったとは言え、すずなの訓練に大いに参考となった。

 

「そうみたいだね。改めてよろしくデイジー」

『よろしく、すずな。そちらは、ノバラちゃん一推しのタフガール、せりちゃんだね?」

「は、はい。よろしくお願いします! あ、あのー、デイジーさんはAIということは人間ではないんですよ?」

『そうだよ?』

「はぇぇ、今のAIって、こんな風にお喋りもできるんですね?」

『まぁ、対話ができるように、というコンセプトもあるからね』

 

 機械らしい不自然さもなく、すらすらと出てくる単語なども、ネイティブとしか思えない。

 

 そんな風に自己紹介をしている方を横目に、すみれは何とかポニーテールに結おうとしては失敗していた。

 

「うぅ……」

「仕方ないな、すみれ。こちらに来い。私がつけてやる」

「えへへぇ。やったぁ!」

 

 ちょこんと腰かけたすみれの髪を楓はゆっくりとブラシで梳いていく。

 すみれは顔を少し上げるようにしながら、目を細めて、気持ち良さそうにしている。

 

((……わんこ))

 

 奇しくも考えが同じだったのか、その様子を見ていたせりとすずなは互いに目を合わせてクスリと笑った。

 

 すれれがブラッシングされて、上機嫌な様子はやはり大型犬を彷彿とさせる。

 

(う~ん……それにしてもいくらしれーさんが気安い人とは言え、距離が近すぎるような? 怒られたりしないのかな?)

 

 せりとしては、楓がいくら可愛がっている部下であろうと、距離が近すぎるのではと心配するが、すみれからの抗議もなく、楓がすみれの髪を結い終える。

 

「よし。美人さんになったなぁ」

 

 せっかく結った髪を崩さないように、楓はすみれの頭を軽く撫でた。

 

「デイジー、留守は任せるが()()()はするなよ?」

『かりこまりー』

 

「では、皆も帰り支度を済ませたら、エントランスに集合だ」

 

 

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