Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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引き続き微エロ注意

若干シリアスというか言い訳があります。


10 Switch and Propensity

(あ、これヤバイわ)

 

 胸を揉んだだけだというのに、はぁはぁと荒い息をしているすみれを見て、ノバラは思った。顔は完全に情欲にまみれたソレである。やべぇ。

 

 完全にスイッチを入れてしまった。

 

 これまでも(すみれ以外で)何度かあった。

 

 ノバラにとって胸を揉むとか挨拶みたいなものなので、羨ましいなと思うことはあっても性的な欲求なものは少ししかない。逆に言えば、少しはあるのでそれを勘違いされてしまう。

 つまりは、『そういうこと』を求められていると勘違いさせてしまうことがままあるのである。

 リコリスに娯楽的なものは少ない。一般的な恋愛をする機会もほぼない。そして、環境は少女だらけ。そのため、一定数そっち方面で息抜きする者がいない訳ではない。それは元々の性的嗜好なのか、環境が作る一時的なものかは、分からないし、ノバラ自身は(自分を対象としなければ)、特に偏見もない。

 

 だが、待って欲しい。

 

 ノバラ自身の性自認は至ってノーマルなのである。

 スキンシップが激しい?認めよう。だが、それは決して疚しい気持ちが先にあるのではなく、『自分がここにいる』と認めて欲しいからである。

 DAという薄暗い籠の中で、誰とも知られることなく、ノバラという個はただの歯車の一つでしかない。そして、代わりはたくさん『ある』。それを悲しいと思う訳ではない。本来ならば、もっと前に朽ち果てたはずの命である。親に対する情はなくとも義理はある。先輩、後輩、同僚に対しても、それなりの仲間意識はある。

 

 認めて欲しい。

 触れて欲しい。

 撫でて欲しい。

 ……抱きしめて、ぬくもりを感じさせて欲しい。

 ……ここにいるということを教えて欲しい。

 

 そんな欲求がノバラの過剰なまでのスキンシップの根幹にある。

 

 だから、そんな風に思われてしまうのは、ノバラの本意ではないのだが、そう思わせてしまったのは自分である。

 

 ……何とか互いに清いままで場を収めなければならない。

 

「……すみれ、両手をあげて、後ろを向いて」

 

 ノバラは背伸びをしてすがるようにして、すみれの耳元で囁いた。

 すみれは湯気が出るほどに顔を真っ赤にして、あわあわとノバラの言葉に従う。

 

(はぅ! はぅ! はぅあ~~!! しれぇ、やっぱりすみれはここで今日大人になっちゃうみたいです!)

 

 すみれは自身の親代わりのような楓司令を思い浮かべ、申し訳ない気持ちになる。

 DAに拾われて以来、何くれと世話を焼いてくれたのは、ノバラ以外では現DA仙台支部特殊作戦群司令官の楓である。

 楓は自身の異動に合わせてノバラを仙台支部に引き抜いた張本人であり、すみれにノバラを引き合わせた人物だ。すみれはリコリスとしては欠陥品とも言うべき存在で、『燃費』の悪さ、そして、個としての戦力の大きさ故に、作戦投入が極めて難しかった。

 だが、ノバラと組み合わせることでそれは一定以上に改善された。

 すみれの運用は単体で多数を相手に正面から当てることが基本戦術であり、戦闘状態に入ってから終了まで決して止まることがない。まさに暴走機関車なのである。

 一方でノバラは射撃センスこそアレなものの、基本的にはどんな作戦に入れてもそつがない。大規模作戦においても負傷率が極めて低く、ナイフや体術を用いた戦闘が基本であるため圧倒的にコストパフォーマンスが良い。

 この二人を組み合わせることで、正面ですみれが大規模に騒動を起こし、その隙にノバラが首領を狩るという戦術と、ノバラが首領を狩った後に、逃げ出した残党をすみれが殲滅するという戦術が使えるようになった。

 リコリスの人員はそれなりに多いが、有限であり、大規模な作戦での損害はバカにならない。そんな中で中隊や大隊規模での作戦をたった二人でこなすことができる。これはすみれの『燃費』の悪さを考慮してなお効率的であり、単体であれば、圧倒的に強力なすみれをある意味囮にすることで、ノバラ自体の生存率を底上げすることができるという構図が成り立っている。

 楓のおかげで、すみれはDAの中で生きることを許され、ノバラは自身の生き残る確率が上がる、WIN―WINの関係が作られたのである。

 

 特殊作戦群の司令官である楓は、冷静かつ非情でなければならない。

 自らが訓練指揮を執り、手塩にかけて育てた『娘たち』に、ある時は「死ね」と言わねばならない。すみれはそんな楓の重圧を承知して、それでもなお、『親』として甘えた。すみれ自身の精神が年齢以上に幼いためでもあるが、『そうしなければならない』とも感じていた。

 それは楓の為人が、そもそもDAという血生臭い組織に向いていないことにある。何故楓がDAに所属しているかは知らないが、少なくとも平々凡々とは程遠いことが分かる。元々、技術開発部所属でありながら、現在の所属が特殊作戦群ということからもその経歴の異様さは分かるだろう。

 情報技術分野、特にAI関連技術については、一線級の研究者でありながら、人体工学、戦術・戦略論にも精通している。本部勤めの際には、リコリスに対する訓練でも一定以上の成果を上げているらしく、『デイジー』の保守管理とそれを運用した作戦実施のために、仙台支部特殊作戦群司令官という席が用意された。

 優秀さには疑いがない。だが、それが司令官に向いているとは限らない。

 

 楓は優しすぎる。もっと言ってしまえば、情が深すぎる。

 

 自身の部下を『娘』と呼んで憚らないし、大きな作戦の前には決起会、終わった後には慰労会を開くことも多い。少なくともDAでリコリスとそういった交流をしている人物は稀である。

 とりわけすみれに対しては、過干渉と言うべき程であろう。

 

『ちゃんと大人になってくれ』

 

 いつのことだったか。まだ幼いすみれに楓はそう言っていた。

 

 生きていて欲しい。

 大人になって欲しい。

 真っ当に育って欲しい。

 ……そして、幸せになって欲しい。

 

 そんな風に思っていてくれるのだろうと思っていた。

 

 だからこそ、すみれは楓に申し訳なく思うのだ。

 

 まさか、自分の『初恋』が女の子だなんて!?

 どうしよう?しれぇに孫を抱かせられない!?

 っていうか、ばれたら、見捨てられる!?

 どうしたらいいの!? どうしたらいいの!?

 ノバラちゃん! ノバラちゃん!! って、そのノバラちゃんが相手なんだよ!? どうすんの、すみれ!?

 

「……両手を壁につけて……お尻をこっちに向けて」

 

 混乱しているすみれの耳元で、またノバラが囁く。まるで脳に溶け込んでくるようであった。

 もはや、すみれには抗うこともできず、恥ずかしそうにしながら、言葉に従うことしかできなかった。

 

(あ~~~、もう全部見られてるよぉ♡お嫁にいけない~……あ、ノバラちゃんに貰ってもらえばいいのかな……)

 

「……いい子ね、すみれ」

 

 甘い言葉とともに、ふとももからお尻の辺りをやんわりと撫でられる。

 すみれは無意識の内にふりふりとお尻を振っていた。

 

「……ノバラちゃん……ノバラちゃん……」

 

 熱にうなされた頭で、すみれはうわ言のようにノバラの名前を呟いていた。

 もう、頭の中はノバラのことしか考えられていなかった。

 だから、どうされてもいいとも思っていた。

 

 しかし。

 

 ぱちーーーん!

 

 と思いっ切りお尻を叩かれた。

 

「ひゃうん!?!?」

 

 もっと気持ちの良いアレやコレが来ると期待していたすみれは再び混乱に陥る。

 

「ケガはないみたいね」

 

 先ほどまでの甘い言葉が嘘のような、ノバラの至って冷静な声が、すみれの混乱に拍車をかける。

 

「えっ、えっ!?」

 

 すみれが混乱している間に、ノバラはするりとシャワー室の出口付近まで移動していた。

 

「ちゃんと血、落としておきなさいね。あ、あと、川辺先生のところに必ず行くこと」

 

 そう言い残すとノバラは足早に去っていった。

 

「え…え……え~~~~……そんなぁ~~~……」

 

 背中ですみれの情けない声を聞き、ノバラは小さくガッツポーズをした。

 

『互いに清いままで場を収める』

 

 最上ノバラ、ミッションコンプリート!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ、でも、これ焦らしプレイってやつかな! お尻たたかれたのも今思えば、ちょっと気持ちよかったかも!?)

 

 ただし、少女には盛大な勘違いと性癖に爪痕を残した。

 

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