Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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過去編その5


……自分で書いておいて何だが、過去編なげぇな。
でも、まだまだ続くよ!


112 Sisterhood Past:Horror movie and their endings

 昨日の食事の件、千束は地味にショックを覚えていた。

 

 千束がいくら言ってもノバラはちゃんとご飯を食べてくれないのに、フキが半ば無理やりではあるものの、ノバラにご飯を食べさせた。

 

 これが、朝の一回だけだったら、千束も悔しいながらも納得したのだが、夕飯に押し掛けたフキが再びノバラにご飯を食べさせた。

 

 ……今度は全部混ぜたりせずに、普通に。

 

 夕ご飯を持ってきて不敵に笑ったフキをノバラは微妙に嫌そうに(表情自体はほとんど変わっていないが)見つめるので、そのまま箸で取ったおかずをノバラに差し出したところ、眉を八の字にしながらも、食べたのだ。

 

 じゃあ、私も、と千束も差し出すが、こちらはプイっと顔を背けて食べようとしない。

 

 ……拒否られた千束はちょっと涙目になった。

 

 かと言って、ノバラが千束を嫌いになった、という訳ではなく、千束がノバラを抱っこすれば、全体重を千束に預けてリラックスしている様子で、最初の頃から比べれば、随分と千束に懐いたと言えよう。

 

 一方でフキが抱っこしようとすると、微妙に抵抗し、抱っこされている間も微妙に落ち着かない様子である。

 

(……何でだぁぁぁ!? 何で私のは食べてくれないんだぁぁぁ!?)

 

 そんな内心をこっそりとフキに吐露したところ、フキは呆れ顔でこう答えた。

 

『お前がノバラに甘いっていうのが、見切られているからだろ?』

 

(……甘い。……やっぱり甘いのかなぁ……)

 

 ソファの上に座った膝の上にノバラを乗せ、お腹の方に手を回してギュッと抱きしめている。ノバラは特に表情を変えなくても、この体勢になると、少しだけ千束に甘えるように体を預けてきたり、若干スリっ、と体を寄せてきたりする。

 

 そんな小動物めいた姿が可愛くて可愛くて……。

 

「ふふふ。ノバラは可愛いなぁ」

 

 そう言って柔らかいノバラの髪を千束を撫でるのだ。

 

 まぁ、これでも十分満足なのだが。

 

 姉としてフキに負けているような気がしないでもないので、それは挽回したい。

 

「……という訳で今日は映画を見よう!」

「よく借りられたな……」

「教官方にノバラの教育の一環だと言ったら快く貸してくれました」

「……そういう悪知恵は働くよな、お前」

 

 映画のDVDは娯楽の一環なので、ある程度制限されている。

 簡単に言うと、映画を見る暇があるなら、鍛錬をしろ、ということなのだろうが。

 かと言って、全く娯楽がなければ士気も下がるので、成績などで回数が付与されたりしている。

 

 千束の場合、時間を持て余しがちなので、制限目一杯まで使っているわけだが、別のお題目も掲げることでこの制限を回避した。

 

「でも、私の趣味で借りるとそれはそれで怒られそうなので、見たことないジャンルにしてみたよ!」

「……ホラーか。私はいいが……ノバラは……?」

「……?」

 

 フキはパッケージをノバラに見せてみるが、いつものとおり、興味なさ気で、何か用、とばかりにフキを見つめ返すだけである。

 

「ああ、うん……興味なさそうだな」

「見れば絶対面白いって! ね、ノバラ?」

 

(……お前が大丈夫じゃなさそうな気がするんだが……それはそれで面白そうだからいいか)

 

 フキは未来の千束の姿を想像して少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

 千束が選んだのは、見た者は一週間で死ぬという呪いのビデオテープにまつわるものだった。

 千束はソファの上に、ノバラを膝に抱いて座り、ノバラは千束に体を預けるようにしてくつろぐ。千束は千束で、ノバラの頭の上に顎を乗せながら、ノバラをギュッと抱きしめて幸せそうにしていた。少なくとも始まるまでは。

 フキはそんな二人を横目に、ソファにちょこんと座った状態で、再生ボタンを押した。

 

 初めは良かった。

 千束は少しだけ怖がりながらも、その怖がりを楽しむ余裕があった。

 しかし、終盤。

 畳をひっかくようにしながら、画面から這い出てきた少女を見たときには、顔が凍り付いて、かたかたと震えながら、ぎゅうっとノバラを抱きしめている。

 

 ……苦しいのか、ノバラはちょっと迷惑そうだった。

 

「……い、いやぁ、た、大したことなかった、なかったよね……?」

 

 ひくひくと引きつった笑顔をしている千束を見るに、ノバラの手前、明らかに強がっているのが分かる。

 

「……そうだな。一安心、というところから、波乱があるのは面白かったが」

 

 一方のフキは特に怖がった様子もなく、平然としていた。

 

「……お、面白い?」

 

 あれを面白いとか、マジかコイツ、という視線で千束がフキを見るが、フキ的には作り物だと分かっているので、特に怖くもない。

 千束の膝の上にいるノバラも、何を見せられたのかよく分からない、というはてな顔だった。まぁ、まだ内容を理解するには早すぎた、という面もあるが。

 

「ま、まぁ、でも、次はアクションかな。ちょっとは反応あったし?」

 

 映画より千束に対して反応があったのだが、女主人公が手首を握られる瞬間に合わせて、ノバラが千束の手首を掴んで驚かせていただけだ。

 

 声こそ上げなかったが、全身を震わせながら、ちょっと涙目になった千束が、画面を見ているノバラを恨めし気に見ていた様子は、横で見ていたフキだけの秘密である。

 

「……まぁ、私も暇だったら付き合ってやるよ」

 

◇◆◇

 

(……おしっこ行きたい)

 

 映画を見終わった後、再び三人で夕食を済ませ、大浴場で入浴を終えた後、千束はノバラに簡単な算数と読み書きを教え、ぼちぼち遅くなったところで、パジャマに二人で着替え、布団に入って、ノバラを抱きしめつつ、ウトウトしていたのだが。

 

 時間は深夜と言うほどではない。

 千束がウトウトしているだけで眠れなかなったのは、昼の映像が頭から離れないからだ。

 テレビからナニカ出てきそうで、そこから、目を逸らしながら、ノバラを抱きしめることで精神の安定を図っていた。

 

 ……のだが。

 

 生理現象がふつふつと湧いてきて、それを自覚すると、行きたくて仕方がなくなるが、今、テレビの前を横切ったりしたくなかった。

 

 ぶっちゃけて言えば、怖くて一人で行けそうもなかった。

 

 布団の中にいるノバラを見てみると、こちらも別に熟睡していたわけではないようで、千束が軽く体を動かすと、パチリと目を開ける。

 

(……うぅ……あ、姉の尊厳がぁ……)

 

 姉の尊厳が失われる前に人としての尊厳が失われそうなので、千束は恥ずかしさを我慢しつつ、ノバラをお花摘みに誘うことにする。

 

「……ノバラも、まだ寝てなかったんだね~? そうだ! ちゃんと寝る前におしっこに行こうか? お姉ちゃんも行くから」

 

 千束がそう声をかけると、ノバラはむくりと起き上がり、ベッドが一人で下りようとするので、千束は慌てて追いかけて、ノバラの手を握った。

 

「い、一緒に行こうね~……」

 

 不思議そうにしながらもこくりと頷いたノバラにホッとしながら、千束はノバラを連れて、廊下に出る。

 

 消灯時間を過ぎているため、廊下は暗く、人気を感じない。

 

 千束は、それに若干の恐怖を覚えて、ごくりと唾を飲み込んだ。

 握ったノバラの手の温もりだけが唯一の安心材料である。

 

 それほど遠くないお手洗いに着くと、千束の膀胱は限界寸前だった。

 

 常であれば、ノバラにさせてから、ノバラを外で待たせて自分がするのだが、そんな余裕がなかった。

 

 千束はノバラの手を引いたまま、個室に入ると、速やかに自らの下着を脱いで、便座に座った。

 

 ちょろ、という音がして、ふーっと息をついてから、千束はノバラにガン見されていることに気づいて顔を赤くする。

 

「……ぁ? ……ゃっ!? ノバラ、見ないで……」

 

 そうは言うものの、千束のおしっこは止まらない。水音が二人きりのトイレの個室に響く。

 やがて、水音が途切れると、千束は恥ずかしさを紛らわすように、手早くトイレットペーパーで拭いて後始末をすると、水を流した。

 

「……次は、ノバラの番だよ?」

 

 ノバラは一応、自分でお手洗いに行ける。

 子ども用のお手洗いなので、若干高さが低いこともあるが、飛び乗ろうと思えば、飛び乗って、自分で用を足せる。

 普段の千束であれば、危なくないように、抱きかかえて、ノバラを便座に座らせる程度しかしないのだが。

 

 若干テンパっている千束は、ノバラの下着を脱がせるところから開始した。

 

 するっとパンツを脱がせると、ノバラのすじが目に入って、ちょっとだけドキドキした。

 

 ……そして、今の自分の姿を思い浮かべて初めて気が付く。

 

(あれ!? 私、変質者みたいなんじゃあ……!?)

 

 幼女をトイレに連れ込んで、下着を脱がせて、顔を赤くして、ドキドキしている姿は確かに変態のそれだった。

 

 だが、ノバラは、そんなことは特に気にした様子もせず、下半身を晒したまま、不思議そうにしている。

 

(な、何か罪悪感が……)

 

 疚しいことをしている訳でもないのに、罪悪感を覚えながら、千束はノバラを抱きかかえて、便座に座らせる。

 

「……っ!」

 

 ちろちろっ、という小さな水音。

 

 それを眺める千束をノバラはじぃっと見てくるが、そこには羞恥も何もない。強いて言えば、千束がどんな反応をするのか観察しているといった様子である。

 

(うーむ……私は、過去無かったくらい恥ずかしかったというのに、ノバラときたら)

 

 この羞恥心のなさも問題かもしれないなぁ、とちょっとだけ千束は頭を悩ませた。

 

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