Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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130 SUGOKUDEKAI

 最後にお風呂に入ったのはたきなとせりであった。

 

 たきなはせりとこれまで面識はなかったものの、せりの『良い人』オーラというか、ほにゃほにゃした雰囲気にすっかり和んでいた。

 

 そして、いざ、お風呂となって、せりが脱いだとき、たきなは思わず、ごくり、と唾を飲み込んだ。

 

 千束のおっぱいはぽよんぽよんで素晴らしく。

 すみれのおっぱいはばいんばいんで圧巻であったが。

 

 たゆんたゆんと揺れるせりのそれは異次元であった。

 

 ノバラと同じく低めの身長ながら、ノバラと比べるまでもなくSUGOKUDEKAI。

 

 すみれの場合、身長もあるせいか、バランスが整って見えるが、せりの場合はもう胸にしか目がいかないくらいのアンバランスさがある。

 

「……たきなさん? どうかしました?」

 

 たきなの方を振り向いたせりの胸がたゆんと揺れる。

 

「……重くないです、それ?」

 

 浴室の扉を開けながら、たきながそう質問するとせりは思わず苦笑する。

 

「あぁ……あはは~……すんごい重いです……動くと痛いし」

「……なるほど。大きいのも大変なんですね……。……もしや、千束も激しく動くと痛い?」

 

 たきなもそれなりにある方ではあるが、さすがにそこまで痛くなったことはない。

 千束はそうと見せたことはないが、動きがダイナミックなこともあり、実は痛いのだろうか、と想像してしまった。

 

「千束さんくらいだと痛くなりそうですねぇ……私は、たまに、たいちょーさんとかすずなが羨ましくなりますけど」

「……その二人なら、せりさんのことを血の涙を流して羨んでいるでしょう……直接言っちゃダメですよ?」

「すずなはまだしも、たいちょーさんには絶対言いませんよ……もの凄い目で見るんですから……」

 

 せりとすずなの関係であれば、直接言ったところで、本気で悔しがられつつ、胸を揉まれるくらいであろうが、ノバラは削いでくる可能性すらある。恐ろしすぎて言える訳がない。

 

「たきなさん、私、洗いたいです!」

 

 浴室入ったせりはテンション高く、手上げた。

 勢いであらぶるおっぱいを眺めながら、たきなはくすりと微笑む。

 

「ふふっ……では、お願いしましょうか?」

 

 椅子に座ったたきなには見えなかっただろうが、ガッツポーズをしていた。

 せりにしてみれば、自らが『たきな神』と崇める存在である。

 それを洗うことなんて、何と霊験あらたかなことだろう。ご利益もすごいに違いない。

 せりは心のどこかでそんなことを考えながら、たきなの髪を洗っていく。

 

「はぇ~……たきなさんの髪、すっごいきれぇ~……」

「そうですか? たしかに、ここ最近はノバラが持ってきた、シャンプーなどを使っているせいか、すごく調子はいいですけど……」

「たいちょーさんの髪も綺麗ですからねー……ホントに姉妹じゃないんですか?」

 

 話しながら、たきなの髪を終えたせりはたきなの髪をお湯で流していく。

 それらが、終わると今度はスポンジにボディソープをつけて、背中を洗っていく。なお、前はたきなが自分で洗っている。

 

「……どうなんでしょうね?」

「あ、そっか。リコリス同士じゃ調べられないんですね」

「まぁ、そういうことですね」

 

 たきなは体を流すと、今度はせりと交換する。

 

 髪を洗い始めると分かるのは、せりの髪の毛が細くてふわふわであるということだ。色素も若干薄く、クリーム色に近いその色は彼女自身の雰囲気には凄くマッチしている。

 

「……そう言えば、たきなさんはやっぱり千束さんと付き合ってるんですね」

 

 疑問符ではなく、断定口調で言われたことに、たきなはぎくり、と体を震わせる。

 

「……そんなことあるわけないじゃないですか」

 

 何らかの確信を持って言われているような口振りに、それでもたきなはなお誤魔化そうとそう答えた。

 だが、それに対して、せりはくすくすと笑みを浮かべる。

 

「え~、誤魔化さなくても……さっきだってキスしてたじゃないですか?」

「う!? 見ていたんですか!?」

 

 まさか、見られていないだろう、と思っていたのだが、答えは否であった。

 

(ノバラたちならまだしも……後輩たちに見られていたなんて!?)

 

 たきなはまだお風呂にも使っていないのに、頭から湯気が立ち上っているような気さえした。

 

「私だってリコリスの端くれです。部屋の中くらいでしたら、誰が何をやっているかくらい分かりますよ……すずなだって気づいてますよ?」

 

 恥ずかしさのあまりたきなは顔を両手で覆った。

 

 千束からしてきたこととは言え、あの場での行動は確かに迂闊だった。

 

 ……未熟と言えど、彼女たちはれっきとしたサードリコリス。対象に気づかせずに観察する能力は、当然ながら、最低限できて然るべきものだ。

 

「そんなに恥ずかしがることないんじゃあ……?」

 

 顔を真っ赤にしているたきなにせりは首を傾げる。

 

「……いえ、でも……女性同士ですよ?」

 

 言いながら、たきなはせりの髪を洗い流していく。

 せりの短めの髪からぽたぽたと雫が落ちて、その大きい胸を伝う。

 

 たきなはせりの顔色を伺うようにしながら、そう質問するも、せりの表情はきょとんとしたものであった。

 

「はい、そうですね?」

 

 あまりにもあっさりした答えにむしろたきなが肩透かしを食らう。

 

「え……そ、それだけですか!?」

 

 たきなはぐっとせりに顔を近づけてそう言うものの、せりは特に慌てた様子もなく、ちょっとだけ考える仕草をして答える。

 

「……リコリスでは別に珍しくもないのではないかと……?」

 

 せりの答えはまるで、それが普通であるかのようである。

 

 しかし、少なくとも、フキに代表されるように、リコリスでも異性相手が一般的のはずである。

 たきなは少しだけスポンジに力を加えながら、せりの背中を洗っていく。

 

「いや……いやいやいや! そんなことないでしょう!?」

 

 たきなはぶんぶんと首を振るが、せりには、イマイチ、ピンとこない様子である。

 

「でも、私たち、男性との出会いなんてないじゃないですか。だから相手が女性になるのは、むしろ自然かなぁ、と?」

 

 何ら悪びれのないせりの言葉を聞いていると、むしろ、女性を好きになることの方が普通であると思っているようだ。

 

「…………あぁ、なるほど。せりさんには違和感がないんですね?」

 

 つまり、これはせりの体感的に、そちらの方が自然に同意できるということである。

 洗い終えた背中にシャワーをかけて、泡を洗い落としていくと同時、せりはこくりと頷いた。

 

「……? はい」

 

 せりの迷いのない答えにたきなは確信する。

 本来であれば忌避感があってもおかしくない同性愛を自然として受け入れているのは、今、せり自身が同性に恋に似た感情を持っているからであろうことが推測された。

 体を洗い終えた二人は一緒に浴槽に身を沈めながら、たきなは正面に座ったせりに向かって微笑みを向けた。

 

「ふふっ……じゃあ、その相手はノバラですか? ……それともすずなさん?」

 

 その言葉を聞いて顔を赤くするのはせりの番であった。

 

「へ!? や!? あの!?」

 

 わたわたと慌てるせりを見れば図星だろうということが分かる。

 問題はどっちにも反応した、というところか。

 

「ふむ……どちらも? ……中々欲張りですね?」

 

 たきなとしては、女性が恋愛対象なのではなく、千束が恋愛対象なのであるから、せりの迷い、というのが理解しきれず、両方に気があると認識してしまう。

 

「いや、ちがっ!? ……うぅ、違くなはいかもしれないんですけど……何て言ったら良いんでしょう? ……たいちょーさんのことは大好きです。それは人としても、女性としても。恋とは違うかもしれないんですが、憧れていることは間違いないんです……」

 

 うる、と瞳を潤ませ、頬を紅潮させながら語るせりは、たきなの目から見てもノバラに恋をしているように見える。

 

「でも……私、すずなのことも大事なんです。正直、たいちょーさんと比べたら、たぶんドキドキはしないです。でも、隣にいてくれなければ不安ですし、すずなに真っ先に迷惑をかけるのは私じゃなきゃダメだし、すずなに真っ先に迷惑をかけて欲しいのは私じゃなきゃイヤなんです……」

 

 だが、すずなに対しての言葉を聞くと愛のようにも思える。

 

「……書物でしか知りませんが、憧れの先輩と長年連れ添った幼馴染のような感じでしょうか?」

「ああ、確かにそんな感じかもしれませんね……」

「なるほど……」

 

 たきな自身、恋愛感情に疎く、激情と呼べる程のものがあったのは千束だけだ。経験値が少なすぎる。

 しかし、それでも見えるものはある。

 

「……それ、すずなさんもそんな感じでしょう?」

「う~ん……たぶん?」

 

 そのような話をしていたので、そうだろうとは思うが、如何せんせりはすずなではないので、推測にしかならない。

 

「まぁ、すずなさんがノバラに向ける目がすみれに似てるので、そうだろうな、とは思いましたが……それに比べれば、せりさんとすずなさんの間は非常に落ち着いているように思えますね」

「一種の同志みたいなところもあるのでー」

「なるほど、良い関係ですね……もしかして、ノバラのこともお互いのことも既に話しているのでは?」

「う……鋭いですね。確かに、そのようなことは話しました……」

 

 つまり恋敵でもありながら、互いが相想うという珍しい状況だ。

 だが、たきなにして見れば、このケースに限って言えば、結論は簡単だ。

 

「……ふふふ、なら遠慮せず、二人でノバラを困らせてあげればいいです」

 

 極論だが、最も煮え切らないノバラに決定権があるのだから、精々アピールしてノバラを諦めさせるか、自分たちが靡かないノバラに諦めるかのどちらかをすればいいだけのこと。

 

「え、えぇー!? たいちょーさんをですか!?」

「ノバラは表面を取り繕いすぎますからね。ちょっとは焦らせてみないと無難な答えしかしませんよ? すみれにしたって……気づいていない振りをしているだけとも思えますしね? すみれもすみれで腰が引けているところがありますし……いずれにせよ、ノバラはあなたたち二人を気に入っているんでしょうし、多少やらかしたところで、嫌いになったりしませんから」

 

 ノバラは一度身内に認定したものには相当情が深い。最低でも、良いお友達でいようね、くらいには落ち着く。それは、現状とさほど変わりないものだ。

 

 そして、せりは、決意を新たにする。

 

「『たきな神』様がそう言うなら! ……ようし!!」

 

 ざばっ、と浴槽から上がったせりはばるるんばるるんと胸を震わせながら、握り拳を作った。

 

「…………今、何か『たきな神』とか言いませんでした!?」

 

 しかし、たきなはそんなせりよりも聞き捨てならない言葉の方にこそ気を取られた。

 

 そして、内心、あ、これ本人に言っちゃダメなやつだった、ということを思い出しつつ、誤魔化すように決意新たに、せりは拳を突き上げた。

 

「頑張るぞー!」

 

 えへへ、と照れ笑いをしながら、せりは逃げるように浴室から脱衣場に出て行った。

 

 

「せりさん!? 聞いてます!?」

 

 ぽつんと、浴室に残されたたきなは慌てたようにせりを追いかけながら、そう問うも、せりは聞こえない振りをして、『たきな神』については黙して語らなかったという。

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