Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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132 Faith

 たきなの部屋に、千束、たきな、すみれ、ノバラの部屋にノバラ、せり、すずな。

 

 そう割り振ったのはノバラである。

 

 だが、すみれは当然のことながらごねた。

 

 てっきり自分がノバラと一緒に眠れるものだと思っていたから、それはもう盛大にごねた。

 

 だが、そもそも、ノバラが彼女たちを呼んだのは、直属の部下となって、それほど話していないから、親睦を深めるためでもある。

 

 食事もそうだが、お風呂、就寝もコミュニケーションの一環だった。

 

 そういった説明をするものの、精神年齢の幼いすみれにそれが通じる訳でもなく、最終的には涙目のすみれを千束が引っ張っていった。

 

 姉が後始末をしてくれたことに感謝をしながら、ノバラは後輩二人と自分の部屋で眠れるように準備を始めた。敷布団の枚数は二枚しかないが、くっ付ければ、三人全員で布団に入ることができる。

 

 三人が三人とも小柄であることが良い方向に傾いた。

 

「はい、じゃあ、眠りたい場所の希望がある人!」

 

 ノバラがそう聞くと、すずなは恥ずかし気に小さく手を上げ、反対にせりは元気よく手を上げた。

 

「……先輩の隣で」

「たいちょーさんの隣で!」

 

 反応は違うが、同じ希望の二人にノバラはにやにやと笑みを浮かべる。

 

「……おいおい、君ら私のこと好きすぎじゃないか?」

 

 ノバラとしては、半ば揶揄ったつもりであったのだが。

 

「え、いや!?」

 

 すずなは顔を真っ赤にして涙を目に浮かべるくらい恥ずかしそうにして。

 

「……え、そうですよ?」

 

 一方のせりは、顔をぽっと赤らめながら、潤んだ瞳でノバラを見た。

 

(……あれ? せりって、こんなにグイグイ来るタイプだっけ?)

 

 思っていたのと違う反応にノバラは思わずたじろいだ。

 

「ちょ! せ、せり!?」

 

 これにはすずなも驚いたようで、せりのパジャマの袖を軽く引いて、制止しようとするが、せりはむしろ、悪戯っぽくすずなに微笑んで見せた。

 

「……いいじゃない、すずな。たいちょーさん……ノバラさんには、バカ正直なくらいじゃなきゃ通じないんだから。……ね? だから、隣に寝てもいいですよね、ノバラさん♡」

 

 きゅっと、ノバラの腕にしがみ付き、その豊満な胸で、ノバラの腕を挟み込む。

 

 しかも、これまでの『たいちょーさん』から『ノバラさん』と呼び方も変えての猛アピールである。

 

「お、おう……急にどうしたの、せり?」

 

 ノバラのせりに対するイメージは、引っ込み思案だが、根性のある、優しすぎる子、というものであったため、その急激な心変わりを不思議に思う。

 

 そんなノバラの質問に、せりは、神妙な顔をして答える。

 

「……『お告げ』があったんです」

 

「「……『お告げ』?」」

 

 ノバラもすずなも目が点になった。

 リコリスはその育ちからか、イベントくらいは楽しむし、神社にお参りくらいはするが、基本的には無神論者が多い。

 そのため、このような新手の宗教みたいなことを言うのは珍しい。

 

「神は言いました。すずなと二人で遠慮なくノバラさんを困らせるように、と」

 

 …………

 

「……迷惑なんだけど!?」

 

 一拍遅れて思わずノバラが叫んだ。

 

(何て迷惑な神様なんだ!? 私は、生贄か!? ……というか、せりが宗教少女な訳がない。()()()()()()()()()()()()()。だとすると、この急な変化は……!?)

 

 そして、ノバラは、はたと思い当たる。

 

 ……いるではないか。

 

 ごく身近に『神』として崇め奉られている存在が!

 

 急激に信仰を集め始め、今やリコリスと訓練生の間に、数多の信者を集めている存在が!!

 

「……そうか、お前か!……『百合神』! 『鴛鴦』、『比翼』、『片翼』! 『射止めし者(Phyche)』、『英雄殺し(Heroine spoiler)』…………『たきな神』!!」

 

 ノバラは、せりと共に布団に寝ころびながら、慟哭のように、たきなの通り名を叫ぶ。

 そう言えば、せりはさっき、たきなと一緒にお風呂に入っていた。

 そこで、なにがしかのハッパをかけられたのだろう。

 

 若干、悪乗りをしているところもあるのだろうが、クスクスと笑って、せりは楽しそうにしている。

 

「ふふふ。幸いにして、私は直接託宣を受けることのできる巫女の一人。故にその言葉を実行するのです!」

 

 せりはそんなことを言いながら、ノバラの腕の枕にして、ベタベタとくっついた。

 

「んむむ……えぃ!」

 

 しばらく悩んだせりもノバラの横に寝そべって、その腕にしがみ付いたまま横になる。慎ましやかだが、確かにすずなの胸の感触を感じる。

 

「……ん、先輩って、いつも何か甘い匂いがしますよね?」

「うん♡ 私、この匂い好きですよ?」

 

 せりが首筋当たりに鼻を押し付けるようにしながあ、ノバラの匂いを嗅ぐ。

 

 ノバラは自分もよくやるので、それに対しては、特段気にはしないのだが、せりが密着する度にその大きな胸がぐにぐにとノバラの体に押し付けられるのが気になっていた。

 

 なるほど、巨乳は物理的威力はまるでないが、精神的にはクリティカル連発する最終兵器的な存在である。

 

 事実、ノバラのメンタルをゴリゴリ削りつつ、ちょっと興奮させるという状態異常まで付いている。

 

「もう……あんまり引っ付かれると、暑いのよ?」

 

 ノバラはそう文句を言うものの、せりもすずなもノバラの腕を離そうとしない。

 

「えへぇ……でも、離しません。私たちはこんなときくらいじゃないと、ノバラさんと一緒に寝る機会なんてほとんどないでしょう?」

「……まぁ、そうかも?」

「だから、一杯甘えさせてくださいね?」

 

 くすくすと笑うせりは、ゆっくりとノバラの頬に近づけて行く。

 

「ちょっと、せり!? ~~んん! 私も!」

 

 せりの様子を見かねたすずなが止めるのかと思ったがまさかの参加。

 

 左側にはすずなのちょっと勢いづいた唇がぶちゅっと。

 右側にやさしく口づけたせりの水音が、ちゅっと。

 

 ……響く。

 

 ノバラはさすがにそんなものには慣れっこではあるものの、微妙そうな顔をしていた。

 

「……まぁ、いいけどさ……? 私は、そういう趣味はないよ?」

 

 アプローチをしても靡くことはない、と宣言したつもりだが、せりは余裕の表情だった。

 

「……でもこのくらいなら、付き合ってくれるんでしょ? なら、どんどんやりますね。ノバラさんがちゃんと振り向いてくれるまで」

 

 せりは『たきな神』の助言を忠実に守る。

 ノバラはそんな様子に辟易としながら、せりの相棒であるすずなにちょっとだけ情けない視線を送った。

 

「……すずな~、せりってば、影響受け過ぎじゃない?」

 

 すずなも苦笑はしていたが、すずなの行動にはどうにも好意的な感じであった。

 

「あー……まあー、それでも可愛いので、まぁいいかなぁ、と?」

 

 そう答えながらも、すずなは自分のこともアピールするようにノバラの腕を抱きしめる。

 

 ……二人とも可愛い。

 

 それは認める。

 

 だが、そもそもノバラとしてはせりに可愛らしさは求めていない。そして、それはすずなも同様だ。

 

 彼女たちのそれぞれ個性ある強さを買っているのであって、彼女たちの可愛さが問題なのでない。

 

 ……しかし、まぁ。後輩がそれで気持ち良く仕事ができるというのであれば、それに付き合うことも悪くはない。

 

 「……まったく二人して、甘えん坊だなー」

 

 ノバラが少しくしゃくしゃになるように二人の頭を撫でてやると、二人は一層に楽し気に微笑みを浮かべて笑いあった。

 

 季節柄、そこまでくっついて寝るのは、汗ばんでしまうほど暑苦しいものであったが、せりとすずなの二人は幸せそうな顔をしながら、眠りにつく。

 

 ……もっとも、ノバラは暑すぎて眠るのに苦労したのだが。

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