Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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活動報告にも書いたけど、進行おっそい!
千束ちゃんとたきなちゃんがらぶらぶになってから三日くらいしかたってない件


145 We want to be spoiled each other

 

 洗い物を終えたノバラはた二人分のホットミルクをマグカップを手に持って、ソファでぴったりとくっつくように腰かけた。

 

「はい、たきなの分」

「ありがとうございます」

 

 手渡されたそれをたきなは一口分だけ口に含んだ。

 

 ほんのりとした甘さに、普通の牛乳では味わえない濃厚なコク。

 その味の濃さにびっくりして、たきなは目を瞬かせた。

 

「……普通のホットミルクではないですよね? 味の濃さが全然違います。……何でしょう?」

「……ふふふ、ゴールデンでプレミアムな牛乳なんだよ! 温めるのすらもったいないくらいだけど、寝る前だし、ホットミルクがいいかなって。……あ、明日の朝は、冷たいのを飲もうね?」

 

 驚いた様子のたきなの顔を悪戯が成功したように、どや顔でノバラが笑みを浮かべている。

 

 その様子を見ながら、たきなは空いた手でノバラの頭を優しく撫でる。

 

 ノバラは少しだけ照れ臭そうに撫でられつつ、もっと撫でろ、と言わんばかりに、手に軽く頭を押し付けるようにしておねだりしてくる。

 しかし、当の本人は、こくこくと牛乳を飲んでいるのだから、半ば無意識なのだろう。

 

(……口で言わずに、催促してくるのが、また何とも……!)

 

 この様子こそが、千束の言う『無意識に甘えてきたときの破壊力がヤバい』というヤツであろう。

 

 秘かに萌えていると、力加減を誤って、くしゃり、とノバラの髪を乱すような撫で方になってしまう。

 

「……んぅ……♡」

 

 しかし、それはそれで心地よいのか、ノバラからは甘ったるい声がする。

 

「……どうしたの……たきな……?」

 

 とろん、とした顔のノバラは、目を潤ませ、頬を上気させている。ピンク色の唇がやけに目を引いた。

 

 ……ノバラの容姿は幼いが不思議と色気を感じるとても危ういものだった。

 

(……ふっ。千束が恋人でなければ危なかった)

 

 たきなは余裕の笑みを浮かべるが、内心はドキドキしていたし、何なら、ふらふらとその唇に触れたくなっていたが、鋼の意志で留まった。

 

「いえ……何でもありませんよ? ……そろそろお風呂にしようかと」

「……あ、じゃあ、一緒に入ろ?」

 

 ノバラがたきなの腕にきゅっと抱き着く。

 

 共同生活を始めてから、ノバラと一緒に入ることはよくあったが、千束と恋人になってからは初めてのお誘いであった。

 

(う、うーん……まぁ、大丈夫でしょうけど……しかし、今日はいつも以上に引っ付き虫のような?)

 

 日中には、そんな感じがしなかったので、何でだろう、と考えてみるが、相手はノバラだ。考えてもよく分からない。一番ありそうなのが、たきなに夕食を外で食べさせてしまったことに罪悪感を感じたから、サービスサービスぅ、とばかりにベタベタしてきている可能性があるくらいか。

 

 仕方ない、とばかりにたきなは苦笑を浮かべる。

 

「じゃあ、入りましょうか、ノバラ?」

「うん! ふふ……やったぁ」

 

 楽しそうなノバラの様子を見ながら、たきなも嬉しそうにしながら、準備にとりかかった。

 

◇◆◇

 

 裸になったノバラは相変わらず羞恥心がないのか(それともお風呂に入るんだから当たり前と思っているだけなのか)、その裸体を全く隠そうともしない。

 

「……ノバラ、少しくらい隠した方がいいんじゃないですか?」

「へ? 女性同士だし、別にいいでしょ?」

「同性同士でも見るのも恥ずかしい人もいるでしょう? すみれは、今まさにそんなお年頃でしょう?」

「あー……んー……? ……そう、かも?」

 

 これは、よく分かっていないな、とたきな苦笑いを浮かべる。

 

「そうなんです。だから、タオルなどで、最低限隠すように!」

「はーい」

 

 素直に返事をしたノバラは、フェイスタオルだけ、腰に巻いた。

 

(……すみれは、これでも足りないでしょうね……ま、まぁ、一歩前進ということで)

 

 浴室の中に入った二人はいつものように互いの体と頭を洗う。

 

 たきながノバラの髪を洗っているとき、ふと話した。

 

「……そう言えば、ノバラ。髪を伸ばしたりしないんですか? せっかく綺麗な髪がもったいないですよ?」

「あはは。千束もたまに伸ばしてー、って言ってくるけど。伸ばすと邪魔なんだよねー。今が最大の妥協点」

 

 ノバラの髪は肩から胸辺りに掛かるくらいのセミロングである。

 その時点で、美しい髪だと分かるのだ。

 できれば、伸ばして、ちゃんと手入れをしてくれた方が可愛いと思うのだが。

 ……無論、今でも、十分可愛いものではあるが。

 

「それは残念です。……でも、一度は見てみたいですね?」

「気が向いたらね」

 

 髪と体を洗い終えた二人は浴槽に浸かる。

 

 ……がいつもと違うところがあった。

 

 普段なら対面に入るところ、ノバラはたきなの上に座るようにして、えへ、と笑った。

 

「ん、もう。今日は随分甘えたさんですね?」

「んー……何かねー……たきな成分がたりないのかも?」

 

 ノバラの頭がたきなの肩の辺りに乗る。

 

「こんな感じでさぁ……いつまでも、ゆっくりできたらいいのに……」

「……もしかして、ノバラ、出向がそろそろ終わりそうなんですか?」

「あー……んー……まだ内緒」

 

 ノバラはそう答えるが、たきなはクルミに答えを軽く聞いている。

 準備が整えば、ノバラの本命だった作戦が始まるだろう。

 

 確かに、だとすれば、ノバラとたきなが一緒にいられる時間はあまりないということになる。

 

 自然、たきなはノバラの体を抱きしめる。

 

「……ん……♡ ……たきな……?」

「ノバラは千束にとっても、私にとっても妹です。もし、帰る日が決まってしまったとしても、いつでも、遊びにきていいんですからね」

「うん、ありがと」

 

◇◆◇

 

 お風呂から上がると、たきなはノバラの髪をブラッシングしながら乾かしていた。

 

「んー! 人にやってもらうのって、気持ちいいよねー!」

「もう。ノバラも私の分、ちゃんとやってくださいね」

「お任せあれー」

 

 たきなとノバラが交代するが、ノバラはやはり慣れた手つきである。

 

「あぁ……ノバラが気持ちいい、っていうのが分りますね」

「でしょでしょ?」

 

 ノバラはたきなの後ろから抱き着いて、顔をくっ付けるようにして笑顔を見せた。

 

◇◆◇

 

 お風呂から上がった二人は、それぞれの部屋に帰ったのだが、たきながいざ寝ようと、いつとき、とんとんとん、と控えめなノックとともに、ノバラがひょっこり顔を出した。

 

「えへへ。たきな、一緒に寝ていい……?」

 

 これもいつものことと言えば、いつのものことである。たきなは、布団をめくって、ノバラが入る位置を作って、ぽんぽんとその位置を叩くと、ノバラは満面の笑顔を浮かべながら、ベッドにダイブした。

 

「お、たきなの体温を感じる!」

「それはそうでしょう……さっきまで、私が横になってたんですし」

「人の体温のあるお布団って、何か気持ちよくない?」

「そうかもしれませんね……ノバラ、はしゃいでないで、ちゃんと眠りなさい」

「はぁい。でも、眠くなるまでは、少しお話しようね?」

 

 そして、二人で横になりながら、話している内にノバラが眠りについた。

 

◇◆◇

 

 今日の寝る前のノバラはこんな感じだったのだ。

 

 いつも通りと言えば、いつも通りなのだが……。

 

 たきながクルミの話を聞いてナーバス気味になっていたのを感じ取っていたようでもある。

 だからこそ、たきなもノバラがベタベタしてくるのを拒めなかったし、そうしてくれて嬉しかったのだ。

 

(……演技かもしれない……でもそうしているのはノバラの心でしょう?)

 

 やはり、たきなには、クルミが語ったほど真剣に捉えられない部分がある。

 何ならノバラ自身が演技だと言ったところで変わらないだろう。

 たきなはノバラのことを信じることにしたのだ。

 

(……まぁ、でも、今日、切り出せなかったのは我ながら情けないとは思いますが)

 

 そんなことを考えて、苦笑を浮かべながら、たきなもゆっくりと目を閉じた。

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