Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
楠木の司令官室には、現在のDA本部の主戦力が集まっていた。
『
『
『
リコリスとしてもファーストとしても経歴の長いこの三名に加えて、新たにファーストとなった者も加わる。
仮称、『
急遽の抜擢、そして、『性根更生会ノバラ組』こと、DA本部付臨時訓練隊を丸ごと引き継ぎ、見事な指揮をして見せたことから、彼女の通称は今のところ、その名が最も優勢である。
更には、『
部隊指揮経験が無いために、セカンドに甘んじているものの、彼女の実力は現状、ファースト相当とされている。
そして、『
単純な力のみならば、現リコリスでは彼女がトップに君臨するであろう。
(……普通なら過剰戦力なのだがな)
楠木はちらりと隣にいる楓を見て、渋い顔をした。
この六名に加えて、現場では、『
(……何事も無ければ良いが)
楠木の希望とは裏腹に、胸騒ぎがしている。
しかし、楠木はそれを表面に表すことはない。
「……作戦について説明する。作戦名は『
その微妙な取り扱いに、千束は妙なものを聞いた、という顔をしながら、隣に立っているノバラをジロリと睨んだ。
(やっぱり厄介事か!! しかも、特甲機密ぅ~……? こりゃあれだ……古文書でも引っ張り出してきたな、さては)
千束は適当で大雑把なところもあるが、それでもファーストである。
リコリスに適用される規則や情報の取り扱いなどについても当然把握している。
そして、自分自身が、過去、ヤバイ案件にも関わってきているし、生涯口外禁止となっている案件もある。
……しかし、そんな千束であっても、特甲機密などという規定はこれまで聞いたことがない。
……しかも『扱い』だ。『特甲機密』、それ自体ではない、ということ。
だが、楠木がそう宣言したということは、この『特甲機密』なる規定は未だ死んでいない、ということでもある。
おそらくは、八咫烏時代の規定を引用しているものと推測された。
「第一作戦目標は、都内拘置支所収容中の死刑確定者、御形ハジメを仙台へ移送する。これの護衛と身柄を奪取しに来るであろうテロリストの排除、そして、リリベルの制圧だ」
(……はぁ!?)
思わず、声に出しそうなところを、千束は何とか飲み込んだ。
(死刑確定者の移送、これは、まぁいい。管轄外だろうけど、お偉方の方で何かしらあるんだろうから。でも、この身柄の奪取にテロリスト!? ま、まぁ、これもまだ理解の範疇内だけど……何でリリベルが出てくるの!?)
千束が目をぐるぐるさせながらそんなことを考えていると、千束の方を見ながら、楠木が、ふ、と笑みを浮かべた。
「……なお、御形ハジメは、元リリベルで、テロリストだ。彼は過去にリリベルを多数離反させた経緯があり、リリベルにとっては最大の汚点でもある」
楠木の補足を聞いて、千束は頭が痛くなった。
(……それでリリベルが出てくるのか。よく生きてたな、この人……いや、
(……三つ巴で、収まるか、これ?)
リリベルが彼の身柄を奪いに来る。
……なるほど、確かに、何某かの情報を聞きたいなら、生かしたまま、奪う必要がある。
だが、このレベルであれば、もっと穏当に身柄を引き受ける方法がないではない。
その方法を取らないのは、何故か。
……
派閥争いなのか、何らかの利害関係があるのかは定かではないが、リリベル上層部、あるいは内部でそれなりの発言力を持っている者が、その対応を是としていないという証左であろう。
楠木も言っていたとおり、彼はリリベル最大の汚点だ。
つまりは、一秒でも早く彼を抹殺したい、と考えている者がいるハズだ。
(……リリベル側で
(……テロリスト側も、一勢力とは限らない。リリベルがこれだけ血眼なのは知られているだろうから、古い情報とは言え、何かヤバイ秘密を知っていると考えて、暴こうとしたり、確保したりしようとしても不思議ではない)
畏まった場であるからこそ、ため息をつかなかった千束ではあるが、内心では、どれだけため息をつき、引きの強すぎる自分の妹を呪ったことか。
(……いや、もう、本当に……我が妹ながら、何なの、この引きの強さ……)
さすがは、リコリス史上、最も不幸と呼ばれるだけはある。
……もっとも、ノバラからすれば、お互い様でしょ、と言った感じであるが。
「第二作戦目標だが、この動きに合わせて蠢動するであろう、テログループ拠点の殲滅だ。現在のDA本部で動員可能な人員で、東京近郊の主要拠点を強襲する。我々が把握していた十三か所中、既に殲滅済みの六か所を抜き、残り七か所。秋葉原、葛西、横浜、横須賀、さいたま、千葉、相模原、この七か所にある拠点を同時襲撃する」
(……もはや何も言うまい……)
殲滅済みの六か所が誰の手によるものかを悟った千束は遠い目をした。
……隠密強襲はノバラの最も得意とするところ。
結果的に、止めを刺したのが、朝までの連続模擬戦ではあるが、体力バカなノバラがへろへろになっていたことも踏まえれば、さもありなん、といった感じである。
(……警戒されない状態で拠点を潰しつつ、巣を突いて追い出すのに最適だったのが、六か所っていうだけで、時間かければ、ノバラなら一人でもやれるだろうな。効率悪そうだけど)
「……作戦概要は以上だ。本作戦の全体指揮官は最上ノバラ」
「はい」
(まぁ、それが妥当か)
この場で最も上席なのは、経験年数上、千束ではあるが、この作戦を熟知しているのはノバラ以外にあり得ない。
「加えて第一作戦目標、現場指揮官として、テロリストの排除について、伊達すみれと任に当たるように」
「はい」
「はぁい」
(……これも当然、っと。なら、私とたきなは……)
「第一作戦目標、移送対象者の護衛については、錦木千束」
「……はい」
そうなるよな、と思いながら、千束は返事をする。
「護衛の指揮を執り、井ノ上たきなと任に当たるように」
「……はぁい」
「はいっ!」
どうにも気乗りのしない千束は気の抜けた返事をしたが、たきなは気合が入っているようである。
「第二作戦目標、現場指揮官として、乙女サクラ」
「はいっ!!」
(……フキじゃなくて、サクラぁ~? 大丈夫かね?)
千束は怪訝そうな顔をして、フキの方に視線を向けるが、当のフキは涼しい顔をしている。
(根回し済みってことかな?)
「……その補助に春川フキ」
「はい」
(……いや、私もフキも引退してもおかしくない。だとするなら、これは引継か……フキがサクラを買っているのは分かるし、ノバラも気に入っているみたいだしな。当日は見れないけれど、お手並み拝見、ってところかな)
「……以上六名をもって、本作戦各目標の指揮官及び次席指揮官とする。作戦参加人員については追って伝達する。なお、移送途上の身柄に関する一切の判断は、本作戦の発案者であるDA仙台支部特殊作戦群司令官楓が行う」