Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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14 buddy or ……

「ノバラちゃん、だから、早いって!」

「邪魔をする」

 

 遅れてやってきたのは、長身ポニーテールのすみれともう一人。

 白衣姿の小柄な女性。気怠そうな表情が、何とも妖艶に見える。

 

「すみれさん、おはようございます。……そちらは?」

 

 楠木にも通じる独特な雰囲気があるから、DA関係者でそれなりのポジションであろうことは、たきなもすぐに察した。

 

「ウチの司令官の楓さん」

 

 人見知りなのか、あぅあぅと困った様子のすみれを見て、すかさずノバラが答える。ノバラが答えると、すみれはほぅっと安心したようにノバラにくっついている。

 グレートピレニーズがミニチュアダックスフンドの陰に隠れて甘えているようなミスマッチ感が何とも微笑ましい。

 

 司令官にしては、若すぎるのではないかと思ったが、楓が手を差し出したので、たきなは反射的に握手を返す。

 自分よりも背が小さく、差し出された手は見た目通りに小さいものであったが、握ったその手にたきなは少しの違和感を覚える。

 

(……? ……何でしょう? 変わったところはないのですが……)

 

 しかし、その違和感の正体には気づくことはできなかった。

 

「楓だ、よろしくな、たきな。……千束は、ふむ? 久しぶりだな……そういう趣味だったか……二人の教育によろしくないな……今からでも出先を変えるか?いや、しかし、それでは、本末転倒だしな……かと言って、ウチの子がそっちに走っても困る……どうしたものか……」

 

 楓は千束と面識があるようだが、後手に手錠をされている千束を見ると『マジ引くわー』みたいな顔をして、ぶつぶつと独り言を言っている。

 

 千束はその独り言の内容に顔を赤くして叫ぶ。

 

「これはアンタんところの子のせいなんだけど!?」

 

 むきーっと叫んでいる千束には楓は悪戯っぽい笑みを浮かべて、けらけらと笑う。

 

「冗談だ。ミカさんかミズキはいるか?」

 

「ん~? 楓じゃない!久 しぶり~」

 

 コップの中身を煽るとミズキは奥のカウンターから楓にひらひらと手を振った。

 既に赤ら顔のミズキに楓はやれやれと額に手をやっている。

 

「また、お前は昼間から酒を……」

「飲まなきゃやってらんないつーの! ……ちっ、昨日のヤローどもはすぐにバッくれやがるし」

「ふむ? 合コンか? ……久しぶりに混ざるのも悪くないが」

 

 楓はミズキの隣に座るとごくごく自然にコップと一升瓶を取り上げる。ミズキはそれをつまらなさそうに見ているが、取り返そうとはしていない。返してくれないと分かっているからか、それとも久しぶりの楓との邂逅を喜んでいるからか。

 

「あんたは絶対連れて行かねー」

「酷いな。同期じゃないか。たまには一緒に遊んでくれよ」

「前に一緒に合コンに行ったとき、男が軒並みあんたに夢中になって場が白けたでしょうが! ……このロリ巨乳め!男なんて皆ロリコンだっ! あいつらには大人の女性の魅力が分からないのよっ!」

 

 拳を握りしめて力説するミズキに楓は優しい笑顔を向けて、

 

「ふむ……私はミズキにも魅力的に見えているのかな? 嬉しいよ」

 

 ミズキの耳元でそう囁きながら、ふぅっと息を吹きかける。

 ミズキは顔を赤らめるが、それは明らかに酒気のそれとは異なっていた。

 羞恥、いや照れだろうか。

 

「ちがっ!?」

「私はミズキと二人きりでも構わないよ? 無論、朝まで」

 

 楓に両手を握りしめられたミズキは一層顔を赤くする。

 

「やめてやめてやめて! あんたのそういう節操のないところがイヤなのよ!」

 

 楓はそう言うミズキに畳みかけるように「ミズキの愛らしさは私にはよく分かっているよ」だとか、「照れているミズキも可愛いよ」だとか、ごくごく自然に甘い言葉を囁いている。

 

 何と言うか、ノバラの司令官と言われてものすごく納得する光景だった。

 

 千束と楓の悪い影響を確実に受け継いでいる。

 

 カウンターできゃいきゃいとはしゃいでいる(イチャイチャしている?)ミズキと楓の様子に、たきなは意外そうな顔をしていた。

 

「……仲いいですね、あの二人」

 

 ミズキは(酒さえ飲まなければ)美人で、コミュニケーション能力も高い大人の女性である。しかしながら、リコリコにいる限りでは、ミズキが親しくしている友人というものを見たことがなく、たきなはそんなミズキがはしゃいでいる様子が意外だったのだ。

 

「DAの配属同期らしいです。司令は元々技術開発部で情報部とも絡みがありましたし」

 

 DAの技術開発部は、リコリスから見れば、裏方のように見えるが、その実は最先端科学の研究所でもある。

 世に出ている技術の何十年先の技術か。確かに目立ちはしないが、研究者からして見れば、垂涎と言ってもいいだろう。

 

「……技術開発からリコリスの司令官に?」

 

 楓は研究者として恵まれたポストにいたこととなる。その地位を捨てるほど、リコリスの司令官に魅力はあるだろうか。

 

「あはは、珍しいでしょ?本人が割とマルチに何でもやる人ではあるんだけど、新型AIとその作戦立案を運用するための配置なんです」

「しれぇは元々『デイジー』の『かいはつしゅにん』なんだよ」

 

 えへんと誇らしそうに胸を張るすみれの様子にたきなは柔らかく笑みを浮かべる。

 どうやら、ノバラが近くにいれば、話してくれるらしい。

 

「『デイジー』?」

「本部で言うところのラジアータです。対話型インターフェースを組み込んだ次世代AIですね。試作ですけど」

「ほう。興味深いな」

 

 コンピューターの話題になったからか、ひょっこりと現れるクルミ。

 

「あ、クルミ!」

 

 そして、一瞬でノバラに捕獲された。ぬいぐるみでも抱きしめるようにノバラはクルミをギュッと抱きしめている。二人ともロリロリして見た目は大変可愛らしい。

 

「……大丈夫ですか、クルミ?」

 

 ……しかし、実態は半ばセクハラのそれであり、すぅ~~~っとクルミのうなじ辺りに顔を埋めて、クルミ吸いをしているノバラは正直ちょっと気持ち悪い。

 

「うん。諦めた」

 

 身体能力的に敵わないからか、今後同僚として過ごすことになるからか、さして実害はないと思っているからか。

 

 クルミは漢らしく言い切った。

 

「クルミあったかい。お風呂上り? ん~……すんすん、は~、いい匂い。ミルキーな感じだね。かぁいい。お肌、ぷにぷに、やわっこくて、さいこ~」

 

 だが、すりすりはすはすと接してくるノバラに若干心が折れかける。

 

「……諦めた!」

 

 クルミは決意も含めてもう一度そう言った。

 

「……そうですね」

 

 強く生きてください、とたきなは激励した(諦めた)

 

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