Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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「ノバラちゃんは大変だねー!」

「ホントにな」

 

 すみれ、せり、すずなに囲まれて困り果てているノバラを見ながら、エリカはくすくす、と笑い、ヒバナは呆れ顔だった。

 

「……あれ、エリカ、ヒバナ?」

「おいっすー、ノバラちゃん!」

「よっ!」

 

 店にいるのが珍しい二人を見て、ノバラは不思議そうな顔をした。

 

 ……特にエリカが妙なテンションなのも気にかかる。

 

「……何か甘いもの食べてたら、こうなった……」

「……なるほど?」

 

 ヒバナの呆れたような声にノバラは納得がいったようなそうでもないような返事をした。

 

「ほら、寮ってあんまり甘いもの出ないけど、ここに来れば食べられるしぃ?」

「……太っても私は責任取らないからね、エリカ」

 

 えへ、と笑うエリカは、どうにも甘いものに飢えていたらしい。

 普段あまり口にしないのに、ここ最近は定期的に甘いものを摂取していたからかもしれない。

 

 意外かもしれないが、砂糖は依存性が高い。摂り過ぎ注意である。

 

 ……もっとも、エリカくらいの運動量であれば、太ることもないだろうが。

 

「ま、本来はせりとすずなのお迎えだけどな。私らもお前の顔を見たかったから、待ってたんだよ」

 

 ヒバナが立ち上がって、軽くノバラの頭をぽんぽんと撫でた後、せりとすずなの首根っこを掴んだ。

 

「ほーら、帰るぞ、お前ら……先生、ご馳走さまでした。ノバラもまたな!」

「あぁー……ノバラさーん……また今度ー」

「せんぱーい……またねー……」

 

 せりとすずなはさすがにヒバナに抵抗するのはマズいと思っているのか、ずりずりと引きずられながら、ノバラに手を振りつつ、フェードアウトした。

 

 ノバラはそんな二人に若干顔を引きつらせながらも、手を振り返した。

 

「さて、それでは、あたしらも行きましょうか、エリカ嬢?」

「あは。そうだねぇ! じゃあ、またね、ノバラちゃん!」

 

 すももがエリカの手を軽く引きつつ一礼し、エリカはそんな様子を可笑しそうにしながら、ノバラに微笑みを浮かべながら、店を後にした。

 

「……エリカがあんな風になるとは、スイーツ恐るべし……!」

 

 ノバラが秘かに慄いていると、その様子にたきなが苦笑する。

 

「ノバラちゃんスペシャル、錦木千束エレガントパフェ、ホットチョコパフェ。全部食べましたからね、エリカ……」

 

 喫茶リコリコの三大カロリー爆高メニューである。

 目算で、ノバラちゃんスペシャルと錦木千束エレガントパフェが約一六〇〇キロカロリー、ホットチョコパフェ約一三〇〇キロカロリー、計四五〇〇キロカロリー。一般女子高生であれば、約二日分の標準摂取カロリーに相当する。

 ……しかも、これはオヤツでしかない。

 

「うわぁ……ホントに太らないかな、エリカ」

「……大丈夫でしょう。後輩に負けていられないとばかりに練習量増やしているみたいですし?」

 

 ふふ、とたきなが微笑まし気に目元を緩める。

 

 延空木事件までは、たきなに対して、負い目があったせいか、エリカは何となく暗い雰囲気をしていたが、ここ最近は楽しそうにしている。

 元チームメイトが楽しそうにしている姿はたきなとしても嬉しい。

 

「しかし、アンタは随分遅かったね?」

「サクラたちと遊んであげたからねぇ……」

 

 千束の声にノバラは若干遠い目をした。

 自らの教え子たちが、自分の教えを忠実に守っているのは誇らしいが、まさしくゾンビのごとく、倒しても倒しても起き上がってくるのだから、相手をする方としては、若干面倒臭い。

 

「……それに……すんすん……アンタにしては珍しく汗臭い」

「あー……シャワー浴びずに来たからね」

 

 相手をしていたサクラたちは汗だくで埃まみれだったが、ノバラ本人は汗ばんだ程度である。

 だからと言って、全く汗をかいていない訳ではない。多少の汗臭さは仕方ないだろう。

 

「えへぇ……」

 

 だが、そんなちょっぴり汗臭いノバラに、すみれは喜色を浮かべて背後から抱き着く。

 

「ちょっと、すみれ?」

「すみれ、ノバラちゃんの匂い、すきー……」

「……汗臭いところをそんな風に言われても、全然嬉しくないんだけど……」

 

 ノバラはちょっと困惑顔ではあるが、それでもすみれの好きなようにさせている。

 

「……そう言えば、今日はゲームやってないのね?」

「エリカたちがいたから、気を遣われたのよ」

 

 ノバラの問いに千束がひらひらと手を振りながら答える。

 

 少なくとも見た目は学校の同級生か先輩、後輩であろうから、彼女たちと遊んでやって、ということだろう。

 

「それじゃあ、今日はもう上がり?」

「まぁ、そうなるわな」

「あ、それなら、千束……ちょっとお話があるんですが……」

 

 帰り支度を始めようとした千束をたきなが呼び止める。

 意味深なその言葉にノバラは面白そうな顔をして、すみれははわわと顔を赤くした。

 

「ほ!? あ、いや、うん……」

 

 千束自身も少し驚きながら、顔を赤くして頷いた。

 

 頭の中では色んな考えが巡っている。

 

 これからの二人のこととか、カミングアウトのタイミングとか……粘膜接触的なこととか。

 

「ほーん……? じゃあ、すみれは私とご飯食べようか。何がいい?」

「え、何でもいいの!? すみれ、ノバラちゃんのオムライス食べたい!!」

「はいはい」

 

 ぴょんこぴょんこと跳ねながらリクエストをするすみれに苦笑しながら、ノバラは残り物に何があったかを考える。

 

「「……オムライス!?」」

 

 一方で、千束とたきなはこれまで自身には振舞われていないそれを聞いて、ごくり、と唾を飲み込んだ。

 

(おぉ!? それ絶対美味しいヤツ!!)

(半熟? それとも昔風のやつでしょうか……ビーフシチューをかけるヤツかもしれませんね……?)

 

 千束がギラッとたきなに目配せをすると、たきなも大きく頷いた。

 

「ノバラ!」

「うん?」

「私たちも後から行くから! 私たちの分もちゃんと作ってね!!」

「へ……? いいけど……」 

 

 あまりの千束の剣幕にノバラは困惑顔である。

 そんなノバラにたきながぽんと肩に手を置いた。

 

「……絶対に、何があろうとも行きますから。だから、ちゃんと用意していてください」

 

 どこか決意を秘めたようなたきなの表情。

 

 

 

「……そんな深刻になるようなことかな……?」

 

 ……ノバラは首を傾げた。

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