Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
AIとか細かいこと知らんので雰囲気です。
「しかしDAもあの
クルミからすれば、ラジアータは既に陳腐化している。
改修はされているものの、自らがそしてロボ太がクラッキングして示したとおり、かつて程の鉄壁さはすでにない。
近年の技術革新は著しく、幾年か前のハードはスペック的に古すぎる、ということはよくあることだ。それはスーパーコンピューターでも同じこと。そして、ソフトウェアに関して言えば、より顕著であると言えよう。
着眼点と発想、そしてそれを実現するセンス次第で独自に最先端を走れる。クルミ自身のように。
「まぁ、普通のAIじゃ限界あるよね」
技術の進歩が著しいとは言え、AIは万能ではない。そして、汎用型にせよ特化型にせよ、データの蓄積と判断するための演算は不可欠である。よって、学習機能こそソフトウェアによるが、最終的にその能力のほとんどはハードに依存していることになる。そしてそれは、周囲のハードがより先鋭化されることによって、相対的にラジアータの能力は低下する、ということだ。
「ということは、『デイジー』とやらは、普通のAIじゃないということだな」
一方でデイジーはまさに自らが考える頭脳となる。
AIは学習し、類推することはできるが、学習したもの以外への発想転換は難しい。
この点、『デイジー』に採用されている機能は、通常のAIとは趣が異なる。学習機能はもとより、発想や情緒といったものを電子化し取り込むことで、極めて柔軟な思考ができるように設計されている。コペルニクス的発想を行うこともできてしまう。
完全に実用化に至ったのならば、人間一人一人が、全く違う価値観や着眼点を持つように、コンピューターが独自の価値観や着眼点を持って、完全に自立的に稼働することになるだろう。
「……人間的ではあるよ」
映画で良く見るAIの反乱、という危惧。クルミは当然にそれを思いつくし、ノバラにもクルミがそう思うことは予想されていた。
自らの腕の中で挑戦的な目を向けてくるクルミをノバラは更にきゅっと抱きしめた。
「ノバラちゃんは、前から中の人はどこにいるんだ、とか言ってるしねぇ」
すみれは羨ましそうにしながらそう答える。
そして、ためらいがちにふわふわなクルミの頭を撫でると、ほわぁと目を輝かせる。
どうやら、抱きしめられているクルミに嫉妬していた訳ではなく、可愛らしいクルミを抱きしめているノバラが羨ましかったようだ。自分も愛でたいらしい。
「ほう、それはまた……そんなものを実用化したのか」
なでりなでりとすみれに頭をなでられているのを、ちょっとだけ鬱陶しそうに、それでいてちょっと嬉しそうに甘んじて受けながら、クルミは考える。
……面白そうだな。
にぃとクルミの口の端が吊り上がる。
「さて……アレを実用化したと言っていいのかな?」
一方のノバラは懐疑的であった。
AIとは言え、ノバラにして見れば、『デイジー』は愛すべき身内ではある。しかし、それが、実用化できたものかと問われれば、疑問符が上がる。
確かに人間らしく見える。だが、それはイコールではない。
また、完成していない、とも言える。
良くも悪くも『デイジー』は試用期間であり、あらゆるものが学習途上である。感情『らしい』ものの発露という点では、設計を満たしているとも言えるが、あのポンコツ具合はいかがなものか。
また、現状、同じ物を二つとして作ることができない、というのは、製品として明らかな欠陥である。全く同じように作ったとしても、『絶対に』同一になることはないだろう。
これらを踏まえれば、実用化しているなどということはできないし、再現性が取れない時点で製品としてはあり得ない。中身を含めて問題だらけなのである。
「……まだまだ問題がありそうだな」
クルミとしても問題があるであろうことは予想の範疇内ではある。仮に完成しているのだとしたら、俄然、知りたくなるだろう。
……そうでなかったのは、幸福なことだ、お互いに。
「だからこその楓司令と私達、なんだと思うけど」
DA仙台支部特殊作戦群は次世代AIの策定する作戦を実行し、当該AIの有為性を検証する部隊でもある。
「ふ~ん。あの人はイケる口か?」
「電子戦は専門外、だそうですよ、ウォールナットさん」
「よく言う」
ウォールナットは死んだことになっている。
延空木でその力の一端を見せはしたが……どうだろうか。
現在、確実に存命を認識しているのは、喫茶リコリコの面々くらいのはずである。DAは死んでいないかもしれない、くらいの認識はあるだろうが、さて、これは半信半疑といったところであろうし、少なくとも誰がウォールナットかまでは分かるまい。にもかかわらず、ノバラはクルミの正体を言い当てた。
つまりは、何等かの方法で、クルミにも悟られずに、クルミの正体を突き止めていたということになる。そして、それができるとしたら……?
また、どうして一リコリスがそれを知り得るのか。
話しぶりからすれば、この少女はどうやらそのAIにアクセス権があることになる。
DAからすれば、最高機密レベルだろう。それにアクセスできるリコリス?
……この少女は一体何者だ?
「ノバラ、お前にも興味が出てきたぞ」
「私は最初からクルミに興味深々だよ。『いったいいくつ』なのかな?」
それは知っているぞ、という脅迫か、それともはったりか。
「……ふふふ」
「……うふふ」
クルミとノバラは互いに笑みを浮かべる。
「ぴぃ! 二人とも何か怖い!」
あまりの怖さにすみれが涙目になった。
「あの~~~~? 誰か、これ外してくれませんかね~~~!?」
……そして、千束は忘れ去られていた。
作者も(出すのを)すっかり忘れていた!