Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
HMDを装着したクルミはノバラの言葉通りに彼女のパーソナルデータを覗いてみる。
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名前:最上 ノバラ
誕生日:10月31日
血液型:AB型
現階級:1st(Extra)
適正:A
評価:総合B 身体能力C 射撃D 体術S
総評:現1stの中では最も身体能力に劣るが、評価外項目である、体力、隠密能力に秀でているほか、電子戦、情報戦に対応可能である。難易度A以上作戦従事回数は、現1stの中でも群を抜いており、その戦闘能力と生存能力は極めて高い。
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この辺りはまだ、セキュリティが弱く、クルミにとっても既知の情報である。
キーを叩いて、より深度の高い情報へのアクセスを試みる。
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出生地:不明
備考:国内の
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(これも知ってはいたが、相変わらず胸糞の悪い話だな……)
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生育歴及び活動歴概況:錦木千束に預けれられ、同人と春川フキを姉(母親)代わりとして育てられる。両名が正式にリコリスとなった後は、※※(姓抹消)カエデに師事を受ける。同人の異動に併せて、DA札幌支部へ転属、六歳で3rdリコリスを拝命。八歳で2nd、九歳後半で1stと比較的早い昇格をしている。以降、DA札幌支部研究開発部付特殊作戦群に所属。秘匿A~Sの任務に専属的に従事していた。現在は、DA仙台支部特殊作戦群に所属、本部付臨時指揮官、訓練隊長を兼任している。
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(千束よりは遅いのだろうが、それでも異例の早さなんだろうな……余程危ない仕事をさせられていたと見る)
カタカタとキーを進めて、秘匿A~Sなる任務の詳細を見ようとするが、こちらはセキュリティが堅そうだ。今、調べていることから考えれば、優先度は低いと考え、クルミは先の情報を確認していく。
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備考:『
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(……怖っ!? え、アイツ、そんなこともしてるのか!?)
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『二代目
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(……三代目はおそらく、デイジーだろう。初代とも異なり、電子戦に特化し過ぎているし、前二代に比べると、悪戯具合は酷いが、遊び心が少ない。それに、電子データのない情報に対しては弱すぎる……)
アナログだが、手書きには手書きの良さがある。スタンドアロン環境で測定した結果をデータではなく、紙で送付させ、偽物のデータをメールで送信させれば、それだけで欺瞞情報が彼女に蓄積されていく。
自分もそれは同じだが、手足があるなら話は別だ。
にやり、とクルミは笑みを浮かべる。
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錦木千束に使用されている機械式無拍動心臓と別タイプの物について、本人鹵獲の※※※※から、研究開発部へ提出され、こちらについての研究は未だ実施されている。同様に※※※※※技術について情報提供がなされており、詳細な提案書、計画書等が提出されている。出所は不明であるが、
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(
自分の感情を壊した組織と繋がりがあろうとも、実利とは切り離して考えているのだろう。
いくら感情が薄いとは言え、その割り切りは空恐ろしいと思えた。
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錦木千束関連において、彼女のドナーとして本人が適合していることが確認されている。移植の検討にも上がっていたが、両者の有用性を比較衡量した結果、現時点においては、移植不相当と判断されている。ただし、引続き、不慮の事故における本人死亡の際には、錦木千束への移植が再検討される。
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(……これかっ!! 自分が死ぬ可能性を考慮しているなら、確かに『念のため』だろうが……どうにも気持ち悪いな……)
クルミの知るノバラは確かに、色々と策謀を巡らせるタイプではあるが、そう易々と死ぬタイプでもない。
……所謂、クセ者、食わせ者、というヤツだ。
(……今回の作戦、それぞれがそれぞれの思惑で動いているから状況が読み辛い……ノバラたちはこれを読み切れるのか? 盤面を操っているのは確かにアイツらだろうが……)
意図的にテログループにも情報をリークし、その情報も操作されている。
相手側もある程度、そういったものを織り込んではいるだろうが、有利に盤面を進めているのはノバラたちのハズだ。
(……待てよ? なら、何故ノバラはボクに依頼した? アイツにはデイジーがいる……伝手、という意味では確かに、アレよりはボクに依頼する意味は分からないでもないが……別の意味がある?)
単なる電子戦という意味であれば、クルミに頼む必要はない。ノバラ本人がやらないにしても、デイジーという札もある。
だが、ノバラはその札を切らなかった……あるいは使えなかったとも取れるが。
(……………………まさか、アイツ、どんな状況になろうと、盤面を引っくり返せるとでも言うのか? いや、どの選択肢を選んでも、アイツが掲げる目標に到達するとでも?)
ノバラが何を考えているのか、クルミには分からないが、彼女の言う『念のため』は、保険というよりは到達点の一つではないか、と疑った。
だとすれば、クルミを使った理由も見えてくる。
……デイジーや他のメンツにその試みを悟らせないためだ。
(……つまり、どう転ぼうが、アイツの手の内、と。まったく、どこまで何を考えているんだか……まぁ、いい。ボクにできることはさほどないしな。ドンパチは専門外だ。なら、ソッチは専門家に任せよう)
「……頼んだぞ、たきな。お前の妹はお前が手綱を握れ」