Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
「……つまりは継戦能力。もっと言うならば、戦闘寿命の延長ってところかしら?」
南部の命題はそこにある。
彼の言う優秀な戦士とは、決して倒れず、倒れたとしても必ず起き上がる。
腕をもがれようが、脚を吹き飛ばされようが、頓着せずに歩き続ける。
腕の代わりを作り、別の脚を繋いで、ただただ、死なず、戦場に在り続ける。
彼が作りたいのは、そういう戦士だ。
「加えて言うなら、想像と創造の美とでも言うのかね? 欠けたものをどう補うか、壊れたものをどう繕うか……それを考え、試行し、実現する。私は……私の飢えはそうやって満たされている」
人で行うパッチワークあるいは金継ぎ。
それは事実、彼の半生の生業として行ってきたことではある。
自らが戦場に戻るための技術。より多く戦争をするための技術。
それが今や人を助ける技術の一部とはなっているが、それは彼個人の飢えを満たす一手段でしかないようであった。
……そして、このある種の彼の性癖を考えれば、彼がノバラたちのスポンサーになっている意図も見えてくる。
「……だから、私たちへ個人的な援助を?」
「
「……」
(……やっぱり食えないお爺ちゃんだこと)
すみれの体質はDA内では周知のことではあるが、普通に見れば、あれは身体的欠陥ではあるが才能とも言える。
……だと言うのに、南部は、すみれは凡人と断定する。
何故か。
当然、知っているからだろう。
すみれの体質は病気でも何でもない……実験と投薬の結果であると。
つまり、
それを知りながら、DA上層部は、すみれの担当医である川辺にも、保護者である楓にも、相棒であるノバラにもそれを隠していた。
ノバラがその事実に気づいたのは、喫茶リコリコ出向直前のことである。
おそらく、楓はもっと早い段階で気づいていたのだろうが、上層部への発覚を懸念したのか、ノバラに直接語ったことはない。
しかし、デイジーの想定が不自然過ぎ、かつ、ノバラたちに都合が良過ぎた。
……ノバラがそこから何等かの作意を読み取ると思っての楓の小細工であろう。
ノバラが気づいたらそれで良し、気づかなくても楓には特に影響はない。
楓の小細工に気づいたノバラは、それに気づいたことを示すために、川辺に囁いた。
すみれは本当に薬が効いているのか、様子を見ても良いのではないか、幸いにして、監視下からは外れるし、何よりあなたも辛いでしょう、と。
結果、川辺も思うところがあったのか、ノバラの案に乗った。
……そして、証明した。
現状、偽薬を処方されているすみれは、元の薬を一切飲んでいないため、異常に筋肉が発達しやすいという体質が改善傾向にあるのだ。
即ち、戦闘行動や突発的な事故以外でのすみれの損耗の可能性は限りなくゼロになった。
……結果、ノバラの当初の目的は達成されている。
川辺を通じたメッセージで楓は気づいているし、南部も明言こそしないが、これに気付いている。
ノバラに露見していないと思っているのはこの事実を故意にノバラたちに隠ぺいしていたDA上層部だけだろう。
(……私もすみれも、お偉いさんたちの権力争いと功を焦った
DA内部では権力争いがあり、更には色々な利権が絡んでいる。
特に
権力欲の亡者たちは、
加えて言えば、ノバラたちに行われていた研究は、功を焦った研究員が
当然、南部はそれらを把握していたハズだ。
……だが、放置していた。
彼に取ってみれば、DA上層部などどうでも良い存在であるし、多少おいたが過ぎる研究が行われていたところで構いやしない。
自分とは関係ない、と
互いに主義主張は異なるが、
南部の考えは
故にただでさえ後ろ暗い研究を行っている、
そのため、彼らはその研究に興味のある一部の研究者を煽り、暴走させ、
……おたくの研究は有用ですよ、ウチでやりませんか、と。
そして、ある程度研究が軌道に乗ったら、研究成果を吸い上げて、その研究者は切り捨てる。
日本国内ならば、こっそりDAにリークしてやればいい。そうすれば、勝手に処理され、スポンサー企業から裏切ろうとした研究者が勝手をしたと言えば、それ以上追求もされまい。
ノバラがやったように、DAが研究成果を接収したって構わない。DA内で研究が進んだ時に、スポンサーとして、開示を要求するだけだ。
……どう転ぼうが自分の得になるように場を支配する。
老練、老獪、老猾。
奸佞邪智、此処に極まり、といった風情である。
「……それでも分からないわね……どうして私なの? 私は心が壊れているだけのただの凡人。『
じとり、とノバラは南部をねめつける。
しかし、南部はその視線をからからとした笑みで受け止める。
「ははは。あまり難しく考えない方が良いぞ、最上ノバラ。君は少々考え過ぎだ……いや? 情動が薄いから考えざるを得ないのかね? 単純な話さ。私は君のファンなのだ」
「……ふ、ファン……?」
予想外の言葉に思わずノバラは気の抜けた表情をした。
てっきり、類似項が多いことに対する同情……いや、共感によるものか何かだと思っていたのだが、まさかのファンという回答である。
「残念なことに、君のDA内での映像すら極めて少ないのが難点だが、君が従事した作戦で見ることができるものは見ている。……可能ならばライブもね」
「……なるほど、だから、最近の行動中に監視されている感じがあったのか」
露骨に見られている感じがしたのは、東京に来る前に従事していた作戦のときであったが、やはりというべきか、外部ではなく内部からのものであった。
予想通りであったものの、覗き見られるというのは、あまり気分のいいものではなかった。
「……そこまで、私のファンだと言うなら、私がここに来た理由も分かるでしょう?」
ぷくっ、と頬を膨らませたノバラは、非難めいた視線で南部を睨んだ。