Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
「……出していいよ、ももちゃん」
「……へい」
門が開き坂を上がるようにしながらノバラたちの車は拘置所内の構内を走り、正門を出ると信号を右折する。
同時に出たもう一台の囮の車は途中でUターンしながら、常磐道方面へ。ノバラたちはこのまま千住新橋から首都高速に上がって、東北道へ。
……千束たちはまだ現地にも着いていないだろうが、彼女たちは、立川から圏央道を通って東北道へ合流する手はずである。
(……千束たちともう一度顔を合わせるのは、一時間半から二時間後か)
ふふ、とノバラは笑みを浮かべる。
ここまでは彼女の……
(……千束は……たきなは、どうするかな?)
主役には違いないこの二人が、どう出るか。
シナリオ通りに演じる役者で終わるのか。
それとも台本をぶち破いて、即興劇を演じるのか。
……ノバラは楽しみにしている。その結末を。
◇◆◇
『
画面では、楠木が軽く一礼した。
『この
にや、と笑みを浮かべる楠木は、普段の冷徹な仮面を捨て、頼もしく育った我が子を見るような瞳であった。
『『
画面が切り替わり、不敵な笑みを浮かべているサクラが映し出される。
『……現在、第一目標が移動を開始、間もなく接敵する。ここに十分、敵が引き付けられているのを確認して、あたしたちは突入だ。ちょっと、遅刻したヤツはいたけど……今更、ビビってるヤツはいねーよなぁ!? いたら隣のヤツがちょっと頬を引っ叩いてやってくれ! 良い音がしたら開戦の合図に丁度良いから、ライブで全員に流せよな!』
サクラは軽口を言って、いつもの仕事と何ら変わらないものとアピールする。
『……突入後は殲滅だ。テロリストの拠点内に生きた者を残すな! 巣を完全に潰して、ヤツらをこの国から叩き出す! あたしたちを相手にすることがどれだけ危険かをヤツらの血で以て分からせる! ……潰し終わったら、お行儀良く撤収する。返り血でベタベタになってくるじゃないぞ? あたしらお嬢様なんだから血化粧は似合わないしな? 楚々として大和撫子らしく振舞ってちゃんと帰ってくるように。あたしからは以上!』
◇◆◇
(まぁ、及第点でしょ……サクラにしては上出来)
ぴりっ、とする感じではないが、戦友たちに、やってやろうぜ、という気持ちが伝わる言葉ではある。
サクラが真にファーストとしての実力を試されるのはここからだ。
自身も作戦に参加しながら、複数戦闘状況を把握。
予定外のことがあれば、対応、支援などを同時並行で熟さなければならない。
ファーストになって初めての戦闘行動でこの内容は難易度は高いが、楠木もフキもサクラならできると信じてやらせている。
(フキが補助に入っているなら、万が一はないだろうけど。おんぶに抱っこになってしまわないようにしないとね?)
だが、そうならないように、戦力はそれなり以上に揃えてある。
電波塔事件に投入されていた実戦経験豊富なセカンドに、その練度から一目置かれるようになった『性根更生会ノバラ組』構成員。
……この程度の作戦で狼狽えるようなことがあっては困る。
「……姐さん、間もなく川口料金所です」
すももの言葉に、ノバラの目が火が灯った。
「……総員警戒。銃撃、迫撃に備えるように。接敵後は予定通りに……すみれ、行けるわね?」
「いつでも!」
「ももちゃん、せり。遊撃任せた。適度に揺さぶって?」
「……承知」
「はぁい!」
「すずなは狙撃して、遊撃を支援」
「了解です!」
それぞれの言葉を聞いて、ノバラは右拳を、左の掌に打ち付ける。
「……
◇◆◇
「目標、来ました!」
「……やれ」
元リリベルの男がそう命じると、川口料金所を通過した車両の前にRPGが射出される。
どぉん、と爆炎が立ち上り、車両はその動きを止めた。
「ご苦労、犬ども! 先に喰うのは俺たちだっ!」
大崎旗下の傭兵たちが先を争うように車両に向かう。
その多くは、自らの体を機械化したところで何の痛痒もない、頭のおかしい血に飢えた連中だ。
「副長! 我々も!」
「……放っておけ。隊長もアイツらも、あれ程度にやられるほど柔じゃない」
「しかし、機械化兵は強いですよ?」
「そうかもな……だが、それだけだ」
単純な戦闘能力は確かに強力ではある。戦場にあっては、厄介な相手である。
しかし、彼ら程度ではただの兵器でしかない。
正しく運用できるほどの頭がある訳でなく、ただただ、力を振り回しているだけに過ぎない。
訓練すらされていない雑兵相手になら、それでも十分だが。
「……相手はリコリス。そこらの雑兵と同じではない。綿々とこの国に巣食う邪鬼を葬り続けてきた暗殺と闘争のプロフェッショナルだ。アイツらがそんなに甘い相手かよ……まぁ、多少は消耗してもらわないと、あれを嗾けた意味もないしな」
「……副長、もしかして?」
「ああ。大崎が俺たちを使い潰そうとしていたようだからな?
大崎旗下の傭兵が先行して突入したのは、大崎の指示によるものではなく、独断専行だ。
……副長と呼ばれる男がそう仕向けた。
彼らの目的は御形ハジメの奪還であり、戦うことではない。無駄な消耗を避けるのは当然だし、何より、彼らは目的のために大崎に使われてこそいたが、彼の部下ではないのだ。
「……犬畜生と呼ばれようが、我々は耐えてきた! この日のために、だ!」
ギリ、と歯ぎしりの音がする。
これまでの怒りを今ここで表すかのように、副長の顔には憤怒が浮かび上がっている。
「隊長を奪還すれば、アイツらに用などない! この場で全員、撃ち殺してくれるわ!」
副長がAK-47を掲げると、彼らの部下も一斉に同じ銃を静かに掲げる。
ぎらぎらとした飢えた狼のような視線。だが、彼らはそれを律する理性がある。
極めて高い士気と練度。
それを維持しつつ、『