Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
推敲中のものを保存したと思いきや投下。
そのため、後でちょっと内容変えるかも?
研修は実技もあるが、専ら座学が主となっている。座学は復習の意味もあるのか、爆発物に関するもののほか、救急救命・応急手当であった。実技は、爆発物処理と模擬戦が一回あるのだという。
この模擬戦は件のノバラとすみれが仮想敵となるもののことだろう。
怖いもの見たさ、というのもあるだろうが、千束に伍するとも言えるノバラの対戦にたきなは心躍るものがあった。
自らの相棒である千束と射撃訓練をすることはあっても互いに対戦相手として訓練することはなかったので、『仮想千束』として見るならば、ノバラは絶好の相手である。
我ながら血の気が多い、と思うものの、この好奇心に似た競争心を抑えることは難しいそうだ。
たきなと千束が真正面からやり合えば、十中八九、いやそれ以上の確率でたきなが負ける公算が高い。それをどう覆すのかを考えるのは実に楽しかった。そして、それを仮想とは言え、試すことができるというのは、たきなを上機嫌にするに余りある程である。
そんなことを考えていたせいで、たきなは座学を聞いていても上の空だった。
一方の千束は、意外と言うべきか、真面目に座学を受講していた。
いや、彼女の信条からすれば、救急救命、応急手当といったものは、命に直結するが故に、真剣に取り組んでいるのであろう。
戦場において、応急手当というものは重要だ。
近時では、延空木事件で乙女サクラが重傷を負ったこともある。サクラ本人が割りと頑丈だったという側面もあるが、何より蛇ノ目エリカが積極的に適切な処置をしていた。これがおざなりであれば、サクラは命を落とす結果となっていただろう。
特に作戦行動中のリコリスにあっては、負傷した味方を置き去りにすることも、自らが負傷して居残ることも想定しなければならない。自ら応急手当ができれば、生存率も上がるし、場合によっては、貴重な時間稼ぎができるかもしれない。
そう考えれば、多くのリコリスが真剣に座学を受けるのも頷けるものがあるだろう。
「…………では、座学は以上です」
ミーティングルームの壇上で、DAの医官が座学をそう締めくくった。
「たは~……やっと、終わったぁ!」
千束が両手を上げて大きく伸びをする。
前に張り出された胸がぶるんと震える。
これだけ大きなものを持っていれば、座学もさぞかし窮屈だろうな、とたきなは考えた。
「そんなこと言う割には、随分熱心に聞いていたじゃないですか?」
「たきな、手当は大事だよ? 『命大事に』、だからね?」
初めての作戦行動のときを強調するかのような千束の言葉に、たきなは分かってますとばかりに笑みを浮かべる。
「『敵も味方も』、ですよね?」
我が意を得たり、と千束は笑みを返してくる。
「分かってんじゃん!……その割に、たきなは上の空だったけど?」
見られてたんだ、とたきなは少し頬を赤く染める。
「……どうしても、その、楽しみになってしまって……」
言っていて、自分がまるで戦闘狂みたいだな、とたきなは若干恥ずかしくなり、言葉が尻すぼみになる。そんな様子を見ると、千束は意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「ノバラとヤるのが?」
「……今、何か発音違いませんでした?」
「何のことやら?」
「まぁ、いいです。でも、模擬戦をヤりたいという意味ではそのとおりです」
ふんす、と気合を入れるたきなと打って変わり、千束は「?」と首を傾げた。
「そういや、私たちもヤるの?」
「え……ヤらないんですか?」
「いや、本部の人がヤるんじゃないの?」
「ですが、私は京都からですので。ヤる方じゃないですか?」
「……たきな、そんなにヤりたいの?」
「はい! すごくヤりたいです!」
どうやら、互いに認識がずれていたらしい。
たきなは自らが京都からの転属組であることから、鼻っ柱を折りに来るんだろうなと思っていたのに対し、千束は今、支部だし、折られる鼻もないし、今更じゃん?という意識だった。
「
「そうじゃねぇよ!/そうじゃありません!」
ひょこっと顔を出したノバラがいきなり爆弾を投下する。
「いやぁ、二人してF*ck、F*ckって言っているから……」
ノバラの直截な言葉に千束とたきなは顔を真っ赤にする。
「言ってねーし! 日本語でそんなにF*ck、F*ck連呼するわけないだるぉ?!」
ノバラはこくこくと頷くと、
「いやぁ、二人してヤるヤるって言っているから……」
と言い直した。言い直したけど、あんまり変わってない!
そして、自らの言葉をたきなは反芻して思った。
千束に向かって思いっきり『はい!すごくヤりたいです!』と言っている自分。横で聞いてたら、『そう』しか聞こえない。
「……改めて言われると卑猥ですね」
「『犯る』なのか、『殺る』なのか、難しいね……」
訳知り顔に頷くノバラに千束が懐疑の視線を向ける。
「……って言うか、ノバラ、あんた、最初から聞いてたでしょ……?」
千束に両手を肩に置かれ、真正面から迫力のある笑顔を向けられたノバラは千束から視線を逸らして、
「てへ?」
と笑みを浮かべる。
ぴき、と音がするような青筋を浮かべた千束はノバラに手加減なしのチョークスリーパーをかける。
「あんたって子はぁぁぁ! 笑って誤魔化すなぁぁぁ! 見ろよ! あいつら、うわぁとか言いながら、めっちゃ顔を赤くして明らかに誤解されるだろうが!」
たきなが辺りを見回すと、サードのリコリスが顔を赤らめて「やだぁ、百合?」「今日するみたい」などの声が聞こえてきた。これは完全に誤解されている状態であり。何か言い訳を考えなければならない。
……と考えていたところ、ノバラは顔を青くしたまま、タップをしているが、千束は怒りなのか羞恥なのか分からないが混乱した様子のためノバラの様子に気づかない。
「……あの、千束……ノバラさんが……」
たきなが声をかけた頃には、ノバラは完全に落ちていた。