Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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前話でお話したとおり、今週はマジ無理! と思いつつも一応頑張っている。

突然、更新しなくなっても、リアルがただただ忙しいだけです。

エタりません!


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(……すみれが普通に構えた?)

 

 常であれば、体当たりを前提とし、頭のガードだけを行って深く腰を落とすことはあれど、まともにすみれが構えることは稀だ。

 

 適当に腕を振り回せば、それだけで相手には脅威なのである。

 

 だからこそ、すみれがあえて構えて見せた理由が分からず、千束は困惑する。

 

(……いや……これは、私に密着されることを嫌ったのか?)

 

 模擬戦の際には、すみれにぴったりとくっつき、すみれの攻撃を封じた。

 

 確かに、すみれと戦うに当たって、千束が想定に入れていた戦い方の一つではある。

 

 だが、初見であればまだしも、一度やったことが二度通じる保証はないし、なんなら、罠が仕掛けられていてもおかしくない。

 

 だからこそ、千束もその方法を取るべきか否かは、躊躇していたところであった。

 

 しかし、構えられてしまうと、間合いの内には入り辛い。すみれは技術こそ拙いが、それでもその動きは体術に最適化されたノバラの模倣だ。

 十分に備えられたのならば、千束がその攻撃を掻い潜って近づくのは難しい。

 

「……何だぁ、すみれ? ノバラの真似事か?」

 

 にや、と笑って千束がそうカマを掛けてみると、すみれは落ち着いた様子で、くすり、と微笑む。

 

「……真似事かどうか、千束ちゃん自身の体で確かめてよ」

 

 その余裕は、付け焼き刃ではないことを伺わせた。

 

(……誘われてんなぁ……体術勝負。まともにやれば、私の方が分が悪い。こっちは一撃でも食らえば御陀仏。すみれは……まぁ、タフだろうから、密着して、頭に銃弾叩き込む以外で死にはしない……やらんけど。精々で、顎なり、コメカミなりをぶっ叩いて、意識を飛ばせれば御の字か……いずれ、近接戦をするとしても、()じゃあない。悪いが、すみれ……それには付き合ってやんないよ)

 

 現状、取るべき手段は、あくまで距離を取って戦うこと。

 

 ……よって、千束はM1911を構えた。

 

◇◆◇

 

(……良かったぁ。千束ちゃんが乗ってこなくて)

 

 すみれとしては、千束が適度に距離を取ってくれていた方が、結果として戦い易い。

 

 模擬戦のときのように密着されれば、何もできずに終わるか、もしくは、バラバラに引き裂いてしまう。

 

 体術勝負になれば、すみれは確かに単純な威力だけを見れば有利ではある。

 

 だが、歴戦の経験、死闘の経験。これを乗り越えている千束の戦闘の引き出しは、すみれにとって大きい脅威であった。

 

 事前に対策が取れるならまだしも、すみれには、初めての攻撃、戦闘方法を上手に捌くほどの応用力はない。

 

 だから、すみれの勝負は、どれだけ事前の想定通りに戦えるかが、勝負の分かれ目であった。

 

 すみれの訓練のほとんどは、いわゆる見取り稽古である。

 

 ノバラの動く姿をそれこそ穴が空くほどに見続けてきた。

 ……まぁ、その視線に、若干やましい感情が乗っていたのは、ご愛敬だが。

 

 完全、とはいかないものの、ある程度をそれだけで再現できるというのは、ある意味、すみれの執念の結実と言ってもいいだろう。

 

 ああいう風になりたい。あんな風に動きたい。

 

 あれほど美しく動けたなら、どれだけ気持ちがいいのだろう。

 

 すみれの記憶は、ノバラに憧れ、そして、追い続けてたことに終始する。

 

 母として、姉として、師として……一人の女性として。

 

 愛するが故に、その全てを知りたい。知り尽くしたい。

 その一挙手一投足の意味を。微笑みの裏側、思考の奥深くまで。

 

 知りたいとそう願い、見続け、今、ここに、その動きを再現する。

 

 自らの体にノバラが乗り移ったと錯覚するほどの同一感。

 

 ぞく、とした快感は、すみれの下腹部を熱くする。

 

「……んふふっ。……じゃあ、行くよ、千束ちゃん!」

 

 右足を引き、緩く握った右拳は顔の前。左肘を軽く曲げて前に突き出す。

 いわゆるオーソドックススタイルから、すみれは右足で体全体を押し出すようにしながら、左拳を突き出す。

 

 普通であれば、何のことはない、ただの直突きだ。

 

 蹴りだした右足の地面が撓み、地を踏みしめた左足の地面が陥没するほどに踏みしめていなければ。

 

 ごぅ!

 

 極太の丸太が超高速で打ち出されているようにすら見えたことだろう。

 

 千束はすみれが踏み出す少し先に、軽く一歩後ろに下がることで、すみれの突きから逃れる。

 

(……もういっちょ!!)

 

 伸びきった左腕を引きつつ、次は右の突きで追いかける。

 

 この場合、受ける側が避けようとするなら、外側に回り込む、すみれから見れば、右側、背中側に避けるのが普通だ。

 

 何故なら、次の攻撃の手段が少ないから。

 

 千束もその例に漏れず、そちらに躱そうと……いや躱している。

 

 右腕が半ばまで伸びる時点で、すみれは腰を切って、左のバックハンドブローを放つ。

 

「ちょーっ!?」

 

 まるで自分がそこに避けることを見透かしたようなすみれの攻撃に千束は声を上げながら、頭を引っ込める。

 

 ……しかし。すみれは止まらない。

 

 回転力を利用したまま、右の回し蹴りが更に千束を追撃する。

 

 千束はその足の下、ギリギリを躱しながら、前方に飛び込むように前転しながら転がり、左片手で体を起こしながら、もう一方の右手では引金を引いた。

 

「……ぅんっ! ぇいっ!」

 

 すみれの脇腹に一発当たるも次弾以降は、鬱陶しそうに振るったすみれの腕で弾かれる。

 

 立ち上がった千束と、くる、と腕を回したすみれが再び睨み合う。

 

「……ははっ、相手がノバラだったらやられてたよ」

「……すみれも。相手がノバラちゃんだったら殺されてたよ?」

 

 千束からすれば、相手がノバラであれば、その技の鋭さからいいのを一発貰っていただろうと考え……。

 

 ……すみれからすれば、相手がノバラなら、容赦なく頭を打ち抜かれていたと考えていた。

 

「さっきのはノバラのコンビネーションでしょ? あの子の劣化コピーが私に通じるとでも?」

「……通じるよ? すみれが下手くそなだけ。でも、初めて使ったにしては上手だったでしょ? 感覚はもう覚えたし……次はもっと上手くやる」

「……ふーん。すみれ、アンタにできんの?」

「やる……そうしなきゃ勝てないもの……勝てなきゃ、もう、ノバラちゃんと一緒にいられなくなる。……そんなのは嫌だ。……嫌だよぅ……」

 

 ぐすっ、とすみれは鼻を啜りながらも、再び構えを取る。

 

◇◆◇

 

(……どういうこと? 『勝てなきゃ、ノバラと一緒にいられなくなる』? 最悪は殺す覚悟はしてきたつもりではあるけど、今、私は……私たちはすみれたちを殺すつもりはない。それだと言うのに、その言葉は……すみれが死ぬつもりということ? ……いや、これは、まさか……)

 

 千束の頭に不安が過ぎる。

 本来なら、今すぐにでも、たきなとノバラの方に向かいたい。

 

 だが、それを許してくれるほど、すみれの相手に余裕がある訳ではない。

 

 すみれの言葉に若干の焦燥が滲んでいるように、千束も、胸をざわつかせるような焦燥を感じていた。

 

 決着は早く決めなければならない。

 

 ……千束もすみれも。

 

 その不吉な予感を回避するためには……。

 

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