Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
千束とたきなが車から一人降りているノバラに向かっていく。
何事かスマホに向かって話しかけているようだが、さすがに聞き取れなかった。
車の方からはすみれが降りて、ノバラの方に向かってきている。
にこ、と笑っているノバラも相も変わらず、愛くるしいが、たきなは何とも嫌な気配を感じていた。
……だからこそ、千束とほぼ同時に反応することができた。
「……っ!?」
……パン、パン。
M1911の銃口が火を吹くと、千束もたきなも身を躱した。
「あはは。気付かれちった☆」
にぱ、とノバラは可愛らしく笑うが、銃を向けられた方は笑ってもいられない。
「……ノバラ……アンタ、何のつもり……?」
千束が、ぎろり、とノバラを睨むが、ノバラは気にした風もなく笑っている。
「……すみれ、司令は、何か言ってた?」
「予定どおり、直ぐにでも始めろ、だって!」
「……ふふ。だってさ、お姉ちゃんたち。リリベルを撃退した今、二人はもう用済みだって!」
きひ、と笑うノバラに、千束もたきなも違和感を覚えた。
(……本気じゃない?)
闘争心はあるだろう。
模擬戦のとき以上の圧力は感じる。
……だが、それ以上ではない。
禍々しく歪んだ微笑み。
必中の意志が込められた銃。
しかし、そこに殺気がない。
ちらり、とたきなが千束を伺えば、千束が、こく、と頷いた。
つまりは、たきなが鈍感な訳ではない。ノバラは本気だが、殺る気はないということだ。
(……意味のないことをやる子ではありませんし)
何を企んでいるかは分からないが、この茶番に乗るべき、とたきなの本能が囁く。
「……用済み、と言うことは、私たちを始末するつもりですか、ノバラ?」
「うん♡ いらなくなったら片付けないとね!」
えへ、と笑うその笑顔の裏の意図を探る。
(……いらない、と言うのは、私たち以外の誰か、と言うことでしょうか? ……だとすれば……DA上層部?)
楓やノバラの態度からすれば、彼らが該当するであろうことは想像できる。対象や規模まではまったく想像できないが。
「……ふーん。じゃあ、アンタ、私たちとやる気? 模擬戦で負けてるくせに」
「あはは。千束、本気で言ってる? ……あれで私が本気だとでも? それに、すみれだって全力じゃなかったしね。本気の私たちが、あの時と同じだと思っているなら…………」
……ホントに殺すよ、とノバラの唇が紡ぎ……。
……ざわ、と背筋に冷たいものか走った。
「……上等! 私が相手をしてやるよ、ノバラ!」
千束が一歩進んで笑みを浮かべる。
……本当は自分も積極的にやりたいとは思っていないだろうに、たきなとノバラの関係性を慮ってのことだろう。
(……千束♡)
ぽっ、とたきなは頬を染めて、きゅん、と胸をときめかせた。
戦闘を終えたばかりだからだろうか。
たきなはいつもより性欲が高まっているのを感じていた。
(……ああ……千束♡ 凛々しくて可愛いです♡ 今すぐにでも押し倒して、キスして、××したいです♡ 〇〇〇〇をペロペロして、ぐちょぐちょにして、私の△△△△を●●●●●して、一緒に▲▲たいです♡)
……そんな邪な気持ちを抱きつつも、それを表情に出さないようにぐっと堪える。
にや、とたきなを見るノバラに内心を見透かされているような気もするが。
「……んっ、んっ! それなら、私の相手はすみれですね。……すみれ、初めてでしょう? 優しくしてあげますよ?」
意図せず、少しだけ、たきなの邪な気持ちが言葉に乗る。
恋人の意味深な言葉に、千束は、ぷく、と頬を膨らませ、すみれは、大好きなノバラに似ているたきなの妖艶な言葉に頬を赤らめた。
「……ぁぅ…うぅ……たきなちゃんはノバラちゃんじゃないたきなちゃんはノバラちゃんじゃない!」
自分に言い聞かせるようにすみれは、呟いて、自分の頬を、ぴしゃり、と叩いた。
なお、そんな様子に、千束とノバラは呆れ顔である。
「す、すみれは負けないもん!!」
語彙力の少ないすみれの精一杯の強がりが可愛らしく、たきなが思わず、くすり、と笑うと、すみれが更に顔を赤くする。
「の、ノバラちゃぁぁぁん!? すみれ、たきなちゃんとちゃんとやれる気しないんだけどぉ!?」
ぴゃあ、とすみれがノバラに泣きつくが、ノバラは、すみれの様子を見て笑うだけである。
「……優しくしてもらったらいいじゃない? 壊しちゃダメだよ、たきなお姉ちゃん♡」
「ノバラの大事なすみれですからね。大切にお預かりしますよ」
ふふ、とたきなとノバラが笑い合う。
何やら通じ合っている様子の二人にすみれは複雑そうな顔をする。
「……むぅ……ノバラちゃん!」
「はいはい、妬かない妬かない。……本気でいいわよ、できるでしょ?」
「でもでも、千束ちゃんの想定しかしてなかったよ?」
「
納得がいったような誤魔化されたような顔で、すみれは首を捻るが、とりあえずは、たきなと向き合った。
「じゃあ、やりましょう。千束、たきな。楽しい楽しい殺し合いを!」
ちらり、と視線を上げたノバラを見て、たきなも頭上を確認する。
クルミのものの他にもう一機。頭上にドローンを確認した。
◇◆◇
楓は車の中で持ち込んだパソコンを立ち上げると、ビデオ会議を起動させる。
(やれやれ……とりあえずは、オーダーどおりに持ち込めたか。多少強引ではあったが、奴らには関係あるまい。指示通りに動いてくれているなら些細なことは気にしないだろうしな。……問題は)
ビデオ会議には、楓のほか、二人の男性が参加している。
「……さて、こちらは、やることやって、お膳立てもしましたよ。お約束通り、ご協力頂ける、ということでいいんでしょうねぇ?」
『……ああ、仕事振りは満足している。約束は達成されたのだ、我々は支援を続けるよ? 錦木千束に殺しができるようになればなお良いが』
『ふふふ。まぁ、私も最上ノバラの本気を見れる貴重な機会だ。当然、支援は続けさせてもらおう。……結果がどうなろうとも、ね』
「それはどうも。アラン機関もCBも景気が良くて結構なことで」
声色にこそ表さないが、元々DAのスポンサーであるアラン機関とCBが相手、というのは楓がどうにも気持ちが悪いところでもあるが、一番の大口がそこであり、元々、協力的であるから、そうならずを得なかったという部分もある。
まぁ、味方が上層部にいるだけマシなのではあるが。
『ふむ? しかし、彼女たちに私たちの代理戦争をさせているようになってしまったのは、どうにも気を咎めてしまうね』
『代理戦争? そう思うのは勝手だが、我々にはそんなつもりはない。どうせ勝つのは我々だ』
『おやおや……まぁ、それはいいとしても、我々も他の上層部を笑えないのかもしれないねぇ。『
『見るのは義務であろう。低俗な連中が娯楽にしているのが問題なのだ』
『私と意見が一致したようでなりよりだ。……そういうことだ、楓君。DA常任理事である私たちは君の作戦決行を支持する』
「では、常任理事二名の支持を受け、問題の理事については、欠格事由を認め、背任者としての処理を開始します……」
『まぁ、待ちたまえよ。決着を見せてからでも遅くはあるまい。彼らにとっても最後の楽しい遊びの時間だ。それくらいの猶予をあげてやりたまえよ。動かぬ証拠にもなるだろうしね』
「は。……デイジー、そちらはどうだ」
『おーるおーけーですよ、楓。ばっちり撮れてます』
「ウチの連中の投入準備は?」
『無論、いつでも行けます』
「なら、あとはこちらの戦闘状況とタイミングか」
ふむ、と頷き、四人の戦闘を開始する直前の様子を楓は眺める。
……故に、デイジーが悪戯が成功したような笑みを浮かべているのには、気が付かなかった。