Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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ちょっとだけ続き書こうかなーという気になって、ちょこちょこ書き溜めので、久しぶりに投稿してみる。

東京入りの前の日のお話です。


第0章 Before
EX01 the previous day


 その日、ノバラは東京入りの準備をする日だった。

 

 当分、自分がDA仙台支部特殊作戦群を離れる、ということは、問題児だらけのエクストラメンバーが野放しになるという訳で。

 一応、筆頭、ということになっているノバラとしては、引継ぎをすることなど何もないが、いきなり不在にすれば暴走しかねないので、一言くらいは言い置く必要がある、と思い、主要メンバーに参集を呼び掛けていた。

 

 ……まぁ、素直に集まってくるメンツばかりであれば、誰も苦労しないのだが。

 

 ブリーフィングルームに入ると、すでに待っていたのは、ノッポで力持ちの『延沢うど』だ。身長が百八十センチメートルを超えている彼女は、その体格もあり、すみれと力比べができる稀有な人材である。

 

「……あら、うーちゃん、早いわね?」

んだって(だって)こごさ来る道よぐわがんねさけよ(ここに来る道ってよく分からないから)はやぐきたっけのだなは(早く来ちゃったのよ)

 

 ……少々、なまりがキツイのが難点だが。

 

「……ノバラ、すみれは、どさいんのや(どこにいるの)?」

「すみれは今日、検査よ……また明日にでも遊んであげて」

んだのがぁ(そうなんだ)んだら(なら)しゃあねえべな(仕方ないよね)。明日、おれんどこさきてけるようにゆっててけろ(私のところにくるように言っておいてね)

「はいはい」

 

 そんな風に、ノバラがうどと雑談をして時間を潰していると、顔の似通った三人組が姿を現した。

 

 伸ばしっぱなしの長い髪に、目のあたりには、何かを封印するかのように目がびっしりかかれた布を巻いている、『葛西あさがお』。

 長い髪を三つ編みで結って、前に垂らし、口には大きなバッテンが書かれたフィット性の高いマスクを着けた、『葛西ひるがお』。

 雑に短く切ったショートの髪に、耳には高級そうなヘッドホンを着けている、『葛西ゆうがお』。

 

 外見はアレだが、言うことを聞いて、ちゃんと招集に応じるだけまだマシな部類である。

 

「ちっ……ったく、リーダー面して勝手に呼びやがって、何のつもりだ、ノバラ! あぁ!?」

「何のつもりって、お仕事の話よ、ゆうがお。あれ、もしかして、そんなことも分からなかった?」

 

 ぷふぅ、とノバラが嘲笑すると、ゆうがおは、コメカミに青筋を浮かべる。

 

「わぁってるよ! 何で! お前が! 招集かけてんだ! って言ってんだよ!?」

 

 ノバラとゆうがおはあまり相性が良くない。

 直情的なゆうがおと腹黒なノバラ。

 スペック上の数値で言えば、ゆうがおがDA仙台支部のトップだが、実戦となればノバラの方が頭一つ分くらい実力が抜けている。

 故に、ゆうがおはノバラをライバル視しており、ノバラが理屈っぽく何かを言えば、感情論でゆうがおが反論する。

 互いに討論しても平行線になることが常だ。

 

 ……まぁ、ノバラとしては自分のことを嫌っている相手とは言え、ちゃんと話を聞いてくれる分、話を聞いてくれない面子よりは気にかけているのだが。

 

「あらー、ごめんねー、ノバラちゃん。この子、ノバラちゃんを勝手にライバル視しているからー」

「……(こくこく)」

 

 葛西三姉妹はリコリスでは珍しい三つ子。

 のんびり屋の長女、あさがおは、良くも悪くも姉妹以外に興味がない。ノバラとも実にフラットな付き合いである。

 一方の次女、ひるがおは、割とノバラにべったりな甘えたさんである。明らかな好意を向けてくるが、それが友人としてなのか、それ以上なのかが、ノバラにはよく分からない。だが、三姉妹に用事があるとき、彼女を通せば何とかなることも多く、すみれ以外のエクストラのメンバーの仲では、友人と言って差し支えのない関係ではある。

 

「あらそう? 目的を理解してくれているなら、早く座ってくれるゆうがお?」

 

 ノバラは特に気にした風もなく、ゆうがおに席に着くよう促す。

 

「あ!? だから、どうしてあたいが……」

 

 ゆうがおがなおも言い募ろうと、ノバラに向かって踏み出そうとするが、あさがおとひるがおにその手を取られる。

 

「……ゆうちゃん……?」

「……! ……っ!」

 

 二人とも特に怒った様子ではなかったが、姉二人の恐ろしさを誰よりも良く知っているのはゆうがおだ。しゅん、とした状態で黙って席に着いた。

 

「……まぁ、毎度のこととは言え、全員来るわけないよね!」

 

 あっはっは、とノバラは乾いた笑みを浮かべた。

 

 ……実力には疑いがないが、協調性のない者が多いのである。

 

「来てない人は知らんけど、必要に応じて、状況の情報共有はよろしくね。ひるがお、いない人には今日の内容、メッセージで送ってあげてね」

「……♡」

 

 ひるがおが、目を細めて笑って、指で丸を作る。

 

「ありがと。……さて、今日来てもらったのは、私とすみれは東京に出向になるので、そのつもりでいてね、っていうことが一つ」

 

 ノバラは何のことなくサラッと喋ったが、割と一大事件である。

 

 それを理解してすぐさま反応したのはゆうがおだ。

 

「あぁ!? おめー、筆頭のくせに何言ってやがる!?」

 

 ゆうがおは一応ノバラに次ぐ、次席という扱いであり、ノバラが不在となれば、基本、彼女がまとめ役になることとなり、この中でも特に実害を被るのである。

 

「筆頭だからこその仕事なんですー。私はゆうがおと違って、遊んでいる暇はないの、分かる?」

 

 はんっ、とノバラがゆうがおを鼻で笑うような仕草をすると、ゆうがおは拳を握り締めて立ち上がった。

 

「……っんだと? あたいが遊んでると思ってんのかよ!?」

 

 うがぁ、とゆうがおは怒るものの、彼女の普段の生活をノバラは良く知っている。

 

「……遊んでないの、あさがお?」

「……んー? ゆうちゃんは昨日休みだったけど、一日中マンガ読んでたわね」

「……っ! ……っ!!」

「ほら、ひるちゃんも不満そうでしょう?」

 

 ふふ~、と笑いながらあっさり妹を売るあさがお。

 ノバラの言うことにケチつけんじゃねぇ、言われているとおりじゃねぇか、と憤慨気味のひるがお。

 

 うぐぐ、とゆうがおは悔しそうな顔をしながら、椅子に座り直す。

 

 姉妹間の力関係は、実力とは真逆にあさがおが一番上だ。

 

「ほら、暇じゃない。……あ、そうだ! 私が筆頭なの気に入らないんでしょう? 私がいない間に、あなたが筆頭になっちゃえばいいのよ。そうすれば、私も余計な仕事が無くなって助かるし」

 

 にぱ、とノバラが笑みを浮かべる。

 

「ひ、人に仕事を押し付けるんじゃねぇ!?」

 

 ノバラの笑顔とは反対に、ゆうがおは顔を青ざめさせながら、声を荒げた。

 

 ……どれだけ嫌なのか良く分かるだろう。

 

 何度も言うが、実力はあるが、頭がおかし……気違……、性格に難がある者が揃っているのである。

 ……ところで、他の支部がここまで酷いか、と言われるとそうでもない。変わり者が多いのは確かだが、ここまで協調性がない者が集められているのは仙台支部だけだろう。

 

 ……楓が集めた、とも言うが。

 

「えー……? じゃあ、いちいち突っかからないでよ。まぁ、ゆうがおは、まだ言えば聞いてくれるだけマシだけど」

「あらあらー……ノバラちゃんの言うことも聞いてくれないんじゃあ、私たちの言うことなんて余計に聞いてくれないわねぇ?」

んだな(そうね)んだがら(だから)ノバラがいねぇど困るっだなぁ(ノバラがいないと困るんだけど)……なじょしたらいいんだべが(どうしたらいいかしら)? おれだではなんもでぎねぇべ(私たちでは何もできないわよ)?」

「……っ! ……っ!!」

 

 あさがおは間延びした声で本当に困っているのか疑いたくなるような口調ではあるが、笑顔が引きつっている辺り、本当に困るらしい。

 うどは腕を組んで悩まし気な彼女ではあるが、彼女はたぶん何も考えていない。パワーもすみれとどっこいどっこいなら、頭の方もすみれとどっこいどっこいな幼児脳なのである。

 

 ……一番真剣なのは、ひるがおだろう。

 

 戦闘能力では妹のゆうがおに、索敵能力では姉のあさがおに劣るが、ひるがおは情報収集能力においては、仙台支部で随一。電子戦、情報戦でのパートナーとも言えるノバラがいなくなるのは大変困る。

 あと、個人的事情として、ノバラの顔が見れないのは、すごく悲しいのである。

 

「……しっかし、東京? おめー、また、何かやらかしたのか?」

「失礼ね。私はやらかしたことなんてないわよ?」

「は? いやいや、何言ってんの、お前? この間も気仙沼に割とお偉いさんを沈めてただろ?」

 

 ……DA仙台支部内では、割と頻繁に行方不明事件が起きる。

 専ら、本部や他の支部から異動させられたお偉いさんが、である。

 

「えー……知らなぁい♡」

 

 いひひ、とノバラが悪戯っぽく笑う。

 

「……? ……っ、……っ!」

 

 首を捻ったひるがおは、何かに気づくと、大きく目を見開き、それから、ぶんぶんと首を振った。

 

「そうだよねぇ? ひるがおも知らないよねぇ?」

 

 念を押すようにノバラがひるがおを見ると、少しだけ頬を染めながら、ひるがおが大きく、こくこく、と頷く。

 

「……ひるねぇも絡んでんのかよ……」

 

 あちゃあ、とゆうがおが額に手をやった。

 

 頭良い組のこの二人が組んで何かをやった、となると、秘匿性も高いことが予想が付くが、それでより、酷いことになったんだろうな、とも思う。

 

「あー……例のクズ野郎ねぇ。ノータッチの原則知らないとか、死ぬしかないから、どれだけ偉かろうが仕方ないわねぇ……」

 

 誰のことか気づいたらしいあさがおが、うんうん、と頷く。

 

「あぁん? ……あ!? あの訓練生に!」

 

 ピンと来ないゆうがおだったが、あさがおの言葉に思い出したことがあった。

 

 近時、別の支部から異動となった教官。本人もまぁまぁ偉いが、どこぞのお偉いさんの息子らしく、通常の処分が難しかったため、やらかした事案に比して、栄転という形で仙台支部に飛ばされてきたのだ。

 

 ……そして、早速やらかした。

 

 年端もいかないとは言え、ノバラの薫陶を受けている訓練生相手に。

 少しだけ、ガードを緩めたフリをしたら、ホイホイと。

 ……体力差で最終的に何とかなるのと思ったのだろうか。

 ノバラの生徒の能力はへっぽこ教官などより遥かに上である。

 実戦経験があるならまだしも、単なるコネでは……どうなるかはお察しである。

 

 ……そして、そんなことをすれば、お偉いさんだろうが関係ねぇ、と大義名分を振りかざし、そうするだけの証拠を固め、捏造し、盛って、誰が何と言おうが、サメのエサ以外ありえないという、理由を用意して、ものすごくいい笑顔をして何かしでかす()()()()のいいカモである。

 

「はーい、ゆうがお、ストップ。その話は、()()()()()()ことよ。おーけー?」

「わぁったわぁった。あたいが無神経だったよ……」

 

 ウチの方には実害はなかったのだろうが、異動前には実害があっただろう。それを考えれば、ゆうがおの言葉は確かに無神経と言える。

 

「……ノバラが東京さ、がぁ(に、かぁ)……準備もさんなねのんねんだが(準備もしなきゃいけないんじゃない)? いづまでもこだなこどしてでいいのがい(いつまでもこんなことしてていいの)? オレも何かさんなねがな(私も何かしなくちゃいけない)?」

「うーん……ま、うーちゃんはいつもどおりで大丈夫よ。良ければ、すみれの荷造りでも手伝って上げて」

 

 ……ノバラとしても、うどはすみれと波長も合うので、一緒に何かさせてもそれほど心配はない。

 

あー、わがった(ええ、わかったわ)んだら(それなら)すみれの検査おわってでければ(すみれの検査が終わっているようだったら)一緒にやってくっだなは(やってきちゃいます)

 

 ……ただ、すみれはうどの訛りの半分も理解していないので、コミュニケーションが成り立っているのかはちょっと謎だが。

 

「……助かるわ、うーちゃん、よろしくね」

「んー」

 

 ぽやん、と笑みを浮かべるうどを見ながら、ノバラは苦笑する。

 

(……いい子なんだけどなぁ……)

 

 如何せん訛りがキツイ。だが、まだ何を言っているか分かる分、マシだろう。ノバラは一応各地方の方言のヒアリングはできるが、それでも聞き取れない話し方をされれば、理解できない。

 ……まぁ、方言は日本語なので、ニッチな国の言語を覚えるよりは遥かにマシだが。

 

(……どこぞの少数民族の言語なんて使う日が来るのだろうか……)

 

 これはノバラに語学を教えた教官の半ば趣味だろう。

 

 自身がどこの国に行ってもコミュニケーションには困らないという変人だった。

 

 ()の影響で洋画を見まくっていたノバラは、メジャーな言語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語……これらの日常会話を苦にしていないが、加えて通常学ぶことのない少数民族の言語まで覚えさせられたのは、十中八九、その教官が面白がって何でもかんでもノバラに教えた()()だ。

 

(……うーん……あの人、今、何処にいるのかなぁ……?)

 

 適材適所、というべきか。

 その頭のおかしい言語学者のフリをしたイカレポンチは、世界中どこでもコミュニケーションが取れるという、その特殊能力を活かして、世界各地を回って、新しいリコリス候補生を()()()に行っている。

 

 違法な売春宿に沈められるか、臓器売買に使われるか。

 ……それとも、人殺しの技術を学んで人殺しになるか。

 

 ノバラからすれば正直どれも大差がないが、人間扱いされるだけ、リコリスになる方が無難だろう、と考える。それが本人にとって幸せかどうかは分からないが。

 

 昨今のこの国の情勢からすれば、リコリス候補となる者など限られているし、誰しもがリコリスになれるわけではない。これらの状況に鑑みれば、候補となる人員は基本的に足りていない。結果として、彼の教官のように、()()()をする必要がある、というわけだ。

 

 絹のように透き通る金髪を思い浮かべる。

 おそらくは、彼女……ノバラの姉たる錦木千束もその類であろう。

 

 ……最上ノバラは過去、自己に行われた実験のせいで、およそ感情というものが欠落している。

 

 だが、しかし。

 

 それは、感情を理解できない、ということを意味しない。

 

 ……また。

 

 欠落と亡失は同一ではない。

 

 ……零れ落ちたのなら、拾い直せば済む話。

 

 ……そして。

 

 今、彼女の中には、家族に向ける愛情は残っている。

 

 執着、とも呼べるその感情の矛先が向けられる相手は決められている。

 

 現状、彼女の心にあるのは……。

 

 愛すべき相棒、伊達すみれ。

 愛してやまない姉、錦木千束。

 尊敬する姉、春川フキ。

 敬愛すべき師、御形楓。

 

 加えて、クセがあって扱い難い面々が多いが、それでも自分と肩を並べるDA仙台支部特殊作戦群の面々。可愛い自分の教え子たち。

 

(……皆みんながハッピーエンドになるわけじゃない。あちらを立てれば、こちらが立たず、ってね。でも、それなら……周りなんて知ったことじゃない。私は私の……私たちの利益()()得られればいい。それ以外は全て、押し付けてやる! ……まぁ、それでも、八方丸く、とはいかないだろうけど)

 

 ……ぎゅ、と拳を握る。

 

(……さぁ、引っくり返すよ、盤面を。私の都合のいいように!)

 

 にや、と不敵な笑みを浮かべる。

 

 ノバラの笑みを見たゆうがおは顔を引きつらせた。

 

 経験上、ノバラがこういう顔をしているときは、碌なことがないことを知っているからである。

 

「……あと、ゆうがお? どちらにせよ、私が不在の間は次席であるあなたが、私の代理よ。……そういうことなんで、色々諦めてね☆ あ、筆頭になりたくなったら、いつでも譲るからね♡」

「……って、やっぱそうなんのかよっ!? 姉貴たちやうーちゃんはいいんだけどさ……」

 

 主に集まっていないメンバーのことを考えるだけで、ゆうがおは胃が痛くなる。

 

「大崎とか、安東とか、戸沢とか、蘆名とか、岩城とか、あと、大崎とか!! ……どうすんだよ!?」

 

(……大崎って、二回言った……よっぽど嫌いなんだなぁ)

 

「……あなたたちと相性が悪いだけで、頭はまともよ、あの子()

「あぁ!? おめーが知らねぇだけだよ、あのクソチビのイカレ具合を!」

 

 うがぁ、とゆうがおが吼えるが、ノバラからすれば、大差ないくらいにはイカレている。ゆうがおたちは、話を聞いてくれるだけマシ、というだけで、いざ実戦となれば、まぁ……酷いものである。

 ひるがおは別としても、よくもまぁ、こんなバトルジャンキーどもを集めに集めたものだ、と呆れる。

 

(……戦力って意味ならねぇ……確かに、本部含めてもウチが一番なんだろうけど)

 

 特殊作戦群は、その任務の特殊性から、何らかの技能に特化している者が従事していることが多い。この中では、ひるがおがその最たるものであるが。

 しかし、仙台支部は何を思ってか、すみれを筆頭として、戦闘能力に極振りしている者が多すぎる。

 

(うーちゃんのパワーはすみれに伍するし、ゆうがおの対人戦闘技能は、正面からに限るなら私より上。あさがおとひるがおも通常の戦闘技能()()見てもファースト級だし)

 

 ……もっとも、彼女たちは対人コミュニケーションに大きな問題を抱えているので、順当に出世したとしても、本来はセカンド止まりなのだが。

 部隊行動を前提とできない彼女たちは、謂わば、本部からは弾かれた存在である。

 特に、隠れて、静かに、連携をとって、という大都市圏で前提とされる動きは彼女たちに荷が重い。

 その代わりと言っては何だが、大雑把に、派手に、独りで、というのを得意としている。

 

(……ま、ゆうがおは口は悪いけど、慣れれば前線指揮官には向いている。自分と同じレベルを他者に求めすぎるきらいがあるけど、そこは経験の問題でしょう。どうせ、司令のことだから、私がいない間にイロイロ彼女に無茶ぶりするのだろうし? あさがおは前に出たがらないだけで、その気ならファーストとしてもやっていけるけど……彼女の場合は、姉妹以外信用も信頼もできないのが問題ね。私やうーちゃんにはちょっとは頼ってくれるようになったから……あとはどれだけ周りに気を許せるか、というところかな? 訓練生の教育もさせているし、あの子たちが育てば、もう少し彼女も成長するでしょ。逆に二人と違ってひるがおは、一度信頼した人への依存度が高過ぎる……あらゆるスキルが高レベルにまとまっていて、合理的かつ冷静。話せない、という彼女の欠点は後方での指揮に徹するなら、それほど問題はないんだけど……如何せん、彼女とまともにコミュニケーションとれるのが、姉妹と私、あと、ギリで楓司令というのが、地味にキツい。あの子の周りが自分の言葉読み取ってくれるのがふつーと思っている辺りは改善させないとね。うーちゃんは……いい子なんだよねぇ。リコリスとしてはいい子過ぎるくらい。訛りがキツいのは仕方ないとしても、彼女の中の生死感……と言うか、敵と味方の分け方かな? それを理解できないと盛大な爆弾になっちゃうところが問題か。すみれも似たようなものだけど、あの子は、私と楓司令で手綱を握れるから良いとしても、うーちゃんにはそんな相手いないしね……あさがお辺りがその辺やってくれればいいんだけど)

 

 ……ノバラがいない間のDA仙台支部特殊作戦群には課題が山積みだろう。

 

 しかし、長期間にわたって、ノバラが抜けるというのは、彼女たちの成長のチャンスでもある。

 おそらく、楓はその辺りも考えているだろうし、ノバラも理解している。

 

「……ま、うまくやりなよ、ゆうがお? 個性的な子たちは多いけど、事、強さ、という点では、DAの中でもウチが……」

 

 ……今回の件、様々なことが大きく動くだろう。

 

 舞台が東京とは言え、何かを企んでいる()()()楓とやらかすつもりのノバラがそこに行くのだ。

 絶対に彼女たちの出番がある!

 

「……最強なんだからね♡」

 

 にやぁ、とノバラは笑みを浮かべた。

 

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