Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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たきなちゃんとノバラちゃんの姉妹疑惑


42 Are you sisiters by any chance?

「「……そうですか?」」

 

 たきなとノバラは千束の『君ら似すぎじゃない?』という言葉に顔を見合わせるものの、お互いあまり似ているという感じはしなかった。

 

(……こんなに美人じゃないし)

 

 とノバラが思う一方、たきなは、

 

(……こんなに可愛らしくないし)

 

 と考えていた。

 

「千束は単純すぎだよ。共通点なんてちょっとつり目なところと黒髪なところくらいだよ? 私はたきなほど完全美少女じゃないし……」

 

 むすっとした顔のノバラは自嘲気味にそう述べる。なお、顔出しが未だ恥ずかしいのか、顔は若干まだ赤い。

 

「相変わらずお前は自己評価がひっくいな~。十分可愛い、可愛い!」

 

 うりうりと千束がノバラを撫でるが、ノバラは一層不機嫌にぷぅと頬を膨らませる。

 

「……千束がそういう風に軽く言うから、余計に自信が持てないんだよ……」

 

 千束のされるがままのノバラを見ながら、たきなはフキ達に向き直る。

 

「……言うほど似てますか?」

 

 自分の顔を指差しながら問いかけるたきなに、真っ先に反応したのはサクラだった。

 

「いやいや! 並んでみれば、滅茶似てるっスよ!?」

 

 最も付き合いの浅いサクラが一番先入観がなかったせいか、たきなとノバラが似ているという事実をスッと飲み込んだ。

 

 目鼻立ち以外に特に似ていると感じたのは二人の髪質だ。烏の濡れ羽色をした髪に天然ストレートのサラサラヘア。ふわりとなびくその細い髪は上等の絹をも思わせる。

 ノバラはセミロング程度の長さだが、伸ばせばたきなそっくりになるだろう。

 

「気づかなったのが不思議なくらいだ」

「はぇ~……言われてみれば、そっくり!」

 

 比較的ノバラと付き合いの長いフキとすみれの二人は、見比べてみて、確かにと頷いた。

 

「似てる……かな?まぁ……」

「どうだろ……?」

 

 二人との付き合いはそれなりという、ヒバナとエリカは半々と言った様子だった。

 

「違いが分からん!」

「日本人は見分けにくいからな」

 

 クルミとミカはそもそも似ているかどうかもよく分からなかった。

 例えるなら、犬種の違いは分かっても、顔の違いまではよく分からないといった様子である。

 

「……ん? 何だ? 今更するような話か?」

「そうよね?」

 

 『知ってた』と言わんばかりの楓とミズキ。

 この二人の場合は、その性質からよく観察をしているため、容姿だけではなく、案外性格も良く似ていると気づいていた。

 

「いや、でもここまで似ているとなると、ひょっとして、あんたら姉妹なんじゃないの?」

 

 千束は何となく皆が気になっているであろうことを躊躇なくぶち込んだ。

 

 基本的にリコリス同士が姉妹である可能性は、一部の例外を除けば無いに等しい。何故なら、リコリスは孤児がほとんどで、孤児になった理由は捨てられたか、親が事故死したとか、そういった理由がほとんどだ。一部の例外とは、双子が同時に捨てられたとか、幼い姉妹が親が事故死して露頭に迷ったとかそういう場合である。たきなは生粋のリコリスであるし、ノバラは曰くつきだ。そういう意味では、姉妹関係の可能性は低いと思われた。

 

(それでも姉妹だったら、運命的でめっちゃステキ!)

 

「「……はぁ?」」

 

 千束が勝手に盛り上がって目をキラキラさせると、たきなとノバラは何言ってんの、とあきれ顔だ。

 

「そんな偶然あるわけないじゃないですか」

「ないない!」

 

 だが、この点、この二人は極めてドライだった。

 可能性が低いと分かり切っているし、それで関係性が変わるともあまり思っていないからだ。

 

 更に言えば『だからなに?』と思っている節もあった。

 

 現状でも十分たきなにとっては可愛い妹分としての認識であるし、ノバラにしても、カッコカワイイお姉ちゃんという認識である。ちなみに、ノバラの中では、千束は優しくて甘やかしてくれる方のお姉ちゃん、フキは優しいけど怖い方のお姉ちゃんという位置付けである。

 仮にここに実際の血縁云々の話が出てきたとしてもこれらの評価が変わることはないだろう。

 

「……それとも、千束は私がたきなの妹だったら、姉妹の縁を切るとでも!? そ、そんな……あの日、大事な妹って言って、私を優しく抱きしめて一緒に寝てくれたのはウソだったの……!?」

 

 両手を前に組んでうるうると目を潤ませるノバラの様子が何とも嘘っぽい。そして、千束にとっては、ノバラの言は今更すぎて、悲劇ぶって語られても、特に感じ入ることはないし、もはや、自分の妹という認識は崩れることも崩すこともない。

 

「はいはい。思わせ振りに言うの止めなー。アンタを抱きしめて寝てるのなんていつものことでしょうが」

 

 まったく、かまってちゃんだなー、と千束は苦笑しながらノバラを後ろから抱きしめる。

 表面からは全く見えないが、おそらく不安に思っている部分があるだろうと思ってのことだ。

 ノバラは抱き着いてきた千束を軽く見やって、えへへと笑みを浮かべている。

 

「抱きしめて!? 寝る!?」

 

 一方のたきなはショックを受けたような表情をしている。

 

「たきなはたきなで過剰反応するの止めてー」

 

 嫉妬かなー、妹に変なことなんてしないよー、と思いながら、千束はたきなを見る。

 

「千束! ズルいです! 私もノバラを抱きしめながら寝たいです!」

 

 そっちかよ、と千束は肩透かし気味にガクッと気が抜ける。

 そう言えば、たきなはノバラに骨抜きにされて、だだ甘お姉ちゃん状態になっているのであった。それを思い出し、千束は何とも疲れた様子になった。

 

「あー……うん……なんか、もう姉妹がどうとかどうでも良くなってきたな~」

 

 たきなの様子を見るに、すでにノバラに対して甘々で、今更肉親どうのこうのは関係なさそうな風情である。気の回し過ぎかだったかと千束は、たはは、と苦笑した。

 

「そ~そ~。大体、そんな薄っぺらい関係じゃないと思ってるもの」

 

 きゅっと千束の手を握ったノバラの言葉と裏腹の不安そうな感じが何ともいじらしい。千束が改めて、ノバラを抱きしめると、ノバラはきゃーっと嬉しそうにしている。

 

「そっかぁ~……ノバラちゃんが大きくなったら、こんな感じになるんだ~……そっかぁ~……えへへ」

 

 すみれはたきなを見てキラキラと目を輝かせていた。

 

 すみれにとって、ノバラは可愛いの権化であり、自分の姉であると同時に憧れの人である。

 こんな風になるのかも、と思い自分が横に並んだ姿を思い描くも、どちらにしても自分の方がデカいということにショックを受けつつ、美しく成長したノバラと腕を組んで歩く姿を夢想して、だらしない笑みを浮かべる。

 

「たきなちゃん、たきなちゃん! 私のことすみれって呼んでみて!?」

 

 わくわくした様子のすみれにたきなは怪訝そうな顔をする。

 

「何ですか、すみれさん? 呼び捨てで呼べばいいんですか……? えっと……すみれ?」

 

 これに何の意味があるんだろうと思いつつも、言われた通りにするたきな。たきなの口から自身の名前が紡がれると、すみれはボッと顔を赤くした。

 

「ひゃい! あ~……なんか新感覚~……」

 

 思いのほかドキドキして、胸がキュッとなる感じにすみれはくねくねしていた。

 

「えぇ……?」

 

 そんなすみれの様子にたきなは引き気味になった。どう妄想すれば、そこまでなるのか不思議だった。ノバラへの依存度が高すぎじゃないだろうか。

 さはさりながら、一応すみれは頭部に弾丸を受けて気絶していた身でもあるので、たきなはちょっと心配になった。脳が。

 

「大丈夫ですか……すみれ?」

 

「はぅん! らいりょうぶれす」

 

 たきなちゃん、それひきょーだよぉ、と思いながらも、半ば条件反射的に答える。

 すみれの脳内ではたきな=大人になったノバラと誤認しているので、心配そうに声をかけてくるたきなが何ともカッコ良く見えてしまい、すみれはドキドキしすぎていた。

 

 そんな様子のすみれにたきなは真剣に心配になった。脳が。

 

(……もしかしたら、何らかの障害が脳に!? 救急車を……!)

 

 思わずスマホを取り出したたきなの袖を、達観した様子のノバラがくいくいっと引っ張って、目が合うと首を振った。

 

(ああ……もうダメなんですね……ノバラ、手遅れだったんですね……!? 色んな意味で……!)

 

 そして、二人でトリップしている様子のすみれを見て、頷き合い、悟ったような笑みを浮かべた。

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